回想する
寝台に寝転がって、俺はそれまでの自分を振り返っていた。
転生とかって、交通事故とか、不慮の事故とかが定番だと思うんだけど・・・
大学4年生になったばかりの俺は、サークルの新歓コンパからアパートに戻った所で記憶が途切れている。
俺は大学進学で東京に出るまでは、静岡で育った。父は俺が小学生の時に病気で亡くなったが、高校で数学の教員をしていた。それからは母と、母方の祖父、祖母に育ててもらった。母も俺を生むまでは高校の教員だった。
小さいころから数学や理科はあまり勉強しなくてもできたので、テスト前にはよく友達に教えていた。逆に国語や社会、丸ごと記憶しなくてはならないような教科はたいしてできなかった。
『理系』『文系』という分け方で言うと『理系』だ、というのを高校生になってから知った。俺の高校では『理系』は1割くらいしかいなかったため、授業以外にも先生方が講習をしてくれた。
俺は理工学部に進学し、専攻は迷わず数学を選んだ。英語や社会学などの一般教養はけっこう苦労しながらも何とか単位を取った。大学の数学は、高校の数学とは全く違い、ずっと証明をつなげていくようなもので、最初はよくわからなくてこれまた苦労しながら単位を取っていった。3年生になって、統計学を専門とする先生のゼミを希望した。人気があったのでくじ引きだったのを覚えている。俺が高校生の時、『統計学が最強の学問である』という書物がベストセラーになった記憶があり、何となくあこがれがあったし、なにより面白そうだったからだ。
ゼミはすごく楽しかった。最強かどうかはともかく、ともかく面白かった。もちろん本格的な統計学を研究した、というところまでは行ってないが、ゼミも先生もすごく相性が良いので、卒業後はそのまま院生として同じ研究室で研究を続けようかと思っていた。
寝転がってこれまでを思い返し、自分が何故呼ばれたのか考えてみる。
自分には数学しかない、ということは、やっぱり「数学」なのだろうか。
自分が一番取り組んでいたのは統計だ。現代日本では様々な統計が取られ、そのデータを元にして未来が決められていく。その知識が活かせるとしたら、確かに国の滅亡を救うことは可能かも知れない。でもそれならもっとすごい研究者を呼んだほうがいいじゃないか?あ、年齢が高いと危険なんだっけ・・・
でも異世界の能力や知識を借りるために召喚するのに、年齢が高いと危険とかおかしくないか?
いつの間にかうたたねしていたらしい。扉をノックして、ネリーが食事を運んできてくれて目が覚めた。