回復する
どのくらい意識を失っていたのかはわからないが、一瞬のように感じたのちに、俺は意識を回復した。
回復した、というにはかなりもうろうとした状態で、『あ、熱がある』と感じた。
風邪をひいて熱を出すことは昔からたまにあったが、長いとも短いともつかない独特の時間の流れ方を感じるものである。
よくわからないが、どうやら俺は寝台に横にされて、毛布を掛けられているようだった。
頭が少しひんやりしていて、濡らした布を乗せられているようだった。
ぼんやりと回りが見え、そこにあるものは全て日本のでも現代のでもないなぁ、と感じながら、俺はまた意識を手放した。
それから俺は何度か意識を取り戻しては、浅く眠ることを繰り返していた。
食事を摂っていたのか、トイレには行ったのかなど、細かいことは全く覚えていない。
そしてどのくらいの時が経ったのか、俺はかなりはっきりと覚醒した。
こざっぱりとして、家具の少ない部屋に俺は寝かされていた。床も壁も石造りで、床の真ん中には丸いじゅうたんが置かれている。昔ネットで見た「ヨーロッパの城」のようだ、と思った。見回せば四角くて小さい部屋に、3つの木の扉があった。寝台の近くの壁にはガラスのはまった窓が開いていた。外から光が入り、空の色は変わらないなぁ、と感じた。寝台からは空しか見えなかった。
ゆっくりと体を起こし、なんとなく伸びをする。風邪の治りかけのようなだるさはあるが、それ以外に自分の体が変化したようには感じられない。
来ている服はつるっとして光沢のある生地で作られたもので、もともと着ていたものではない。
ぼんやりとしていると、きしむ音とともに左側に見えるドアが開いた。ゲームでよく見る修道僧のような洋服を着た女性が入ってきて、俺と正面から向かい合った。お互いに驚いた顔で少し見合った後、笑顔になった女性が俺に声をかけた。
「お加減はいかがですか?」
言葉自体は全く聞き覚えがないのに、無意識に向こうが何を言っているのかが分かった。一体どうなっているのかわからないまま、俺は答えた。
「大丈夫です。」
言ったとたんに自分の口からは聞いたことのない音が飛び出すのが分かった。どうやら自分が話す言葉はこの世界の言葉に翻訳されるらしい。声だけを誰かに乗っ取られたようで気持ち悪い。
女性は笑顔のまま俺に言った。
「回復してよかったです。今何か食べるものを持ってきますね。お待ちください。」
「あ、ありがとうございます。」
彼女は部屋を出ていった。
トイレの場所を聞けばよかったかな、とぼんやりと思った。