転移する
『あれ、夢?』
それが、俺が異世界に飛ばされて最初の感想だった。
ひんやりとした白い石の床。滑らかな表面には幾何学的な模様が描かれている。気が付くと俺はそこに座り込んでいた。なんとなく上を見上げると、屋根があるように見えたので、「大広間」かな、と思った。
ぼんやりしていたのは数秒間だったろうか。
薄暗さに目が慣れてくると、自分の周りには数名、白いローブを着ている人間がいた。
「@$”U*&^#(Lー!」
「&’¥A=;<%;@!」
意味は全くわからないが、興奮気味に何かを言い合っているように感じた。英語・・・?のようには聞こえない。この辺まで、俺は夢を見ているのだと思っていた。
夢ではないのかも、と思ったのは、そこからだ。
全く何を言っているかわからない、と思った人達の言っている意味が少しずつ分かるようになったのだ。
「ようやく、ようやくだ!これで救われる!」
「まずは休ませる準備を!」
「至急王宮に連絡を!」
「分かるようになった」のであって、断じて「聞き取れるようになった」わけではない。
勝手に頭の中に翻訳機能がセットされたかのようだった。
『え・・・何で?』
俺は、それを認識したところで限界を超えたらしく、そのまま意識を手放した。