込める/籠める/篭める(こめる)
さて「こめる」の漢字表記についてである。
まず「込める」であるが、これは特に問題ないと考える。
「弾丸を込める」も、「力を込める」も、「真心を込める」のいずれも問題ないだろう。
いっぽう「籠める」だが、こちらはなかなかにややこしい。なにせ「籠」という字は2010年に常用漢字として追加されたばかりである。
また「こもる」ならば「籠もる」と表記すれば良いと判断できるのだが、「こめる」になると話が違ってくる。
実は常用漢字にある「籠」の読みは「ロウ、かご、こ-もる」であり「こ-める」はない。「こ-める」は「込める」となっている。
じゃあ「込める」だけが正しいのかというとこれがまた難しい。
なにせ世に出ている多くの辞書には「籠める」という字が表記されているのだ。
私が使っているパソコンの変換でも「籠める」の字が出てくる(もちろん「込める」もある)。
こうなると「込める」でも「籠める」でもどちらでもいいのではないかという気になってしまう。
ただ個人的見解として、「込める」を使用する方が誤解は少なく、また理由の説明もし易いと考える。なにせ内閣公示されている常用漢字では「込める」であり「籠める」はない。
辞書に「籠める」とあろうが常用漢字として「込める」が示されている以上、こちらを使う方が無難であろう。
ちなみに「篭める」であるが、「篭」の字は常用漢字にない。
もともと「篭」は「籠」の略字であり、公文書ではほぼ「籠」の字が使われているようだ。
また「こもる」であるが、各新聞やニュース記事などでは平仮名表記を標準としているようだ。「たてこもり」は「立てこもり」と表記されている。
「立て籠もり」と表記されているのはほぼ個人の文書であろう。
「とうろう」や「ろうじょう」はそれぞれ「灯籠」、「籠城」と漢字表記。「かご」も「籠」と漢字で表記されているようだ。
いずれにせよ特別な思いや略字でないと文字がつぶれてしまうといった背景、歴史文書からの引用などでない限り「篭」の字は使わないのが無難そうである。