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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
終章 Beacon To The Bright Street

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光の示す道の先―⑤―

 バンクーバーを巡る事件で、TPTP参入を目指さんとする、韓国の財閥、政界、官僚の醜聞も明らかとなった。


 それぞれを代表する御曹司だけでなく、()()()()()までもが()()()()の青いSUVに()()()()()()()()()()()()()()()()()市街のど真ん中で、今朝発見されたと掲載されていたのは情報誌の第二面。


 市場に出回っていない青いSUVが見舞われた惨憺(さんたん)たる経緯に関して、ロックの預かり知ることでは無かった。


 だが、ドラ息子と父親達の顛末(てんまつ)は、()()()()()()()()()()の方が()()()()()()()語れることだろう。


 特に、()()()()()に彼らの父親――韓国の経済官僚、政治家、車会社社長――を()()()()()()()()()()()張本人がブルースだからだ。


()()()()()()()()()()()()、父親たちは打撲に裂傷で済んでいます。息子さんたちには()()()()()()()()()の他に、()()()()()()も加わっていましたが()()()()()()()()()()


 レイナーズ署長が、公式発表で簡潔に伝えた。


不良息子たちの性暴行の訴訟、兵役逃れの海外滞在――しかも、良心的兵役拒否でなく、()()()()()()()()()()()――は、韓国の徴兵制に疑問を持つ多くの知識人たちの反感も買った。


親子ともども、カナダと韓国の双方から追われることになるだろうと二面は締める。


無論、電脳世界にもこの動きは波及。


父親たちの韓国での悪事もとどめとなり、彼らの安息の地は()()()()()()()()()と言っても()()()()()()()()も付け加えて。


 同誌は、(イースト)ヘイスティング通り(ストリート)と南市街の周辺の土地の価格評価に大学も関わっていたことから、知識層の既得権益(きとくけんえき)を狙った構図という批判の矢面に立たされていた。


 "ウィッカー・マン"来襲後の市民生活に関わってきた"ベターデイズ"も既得権益(きとくけんえき)層と見なされ、その在り方についてまでもが槍玉に挙げられた。


 "ベターデイズ"は"ウィッカー・マン"被災者の救済の他に、配偶者間暴力の避難場所や性的多様性を尊重する活動等も行っていたため、その方面への影響も懸念されている。


 さらに言うと、"バンクーバー・コネクション"の呼んだ関心は、"UNTOLD(アントールド)"と接点のあったカラスマの活動だけでなく、彼女の()()()にもその矛先が向けられようとしていた。


 "ブライトン・ロック社"と"ワールド・シェパード社"はそれを防ぐ為、彼女の子供は施設に送られることになった。


 エリザベスの肝いりの場所らしいので、情報漏洩の心配も無いだろう。


 また、"フラッシュ・オブ・ナノ"誌は、ロック達と"リリス"の戦った場所から、()()()()()()()()()()()()伝えた。


 路上に敷き詰められた()()()()()()から発見された人々は――警察の身元調査によると――"()()()()()()()()"()()()の行方不明者本人であることが明らかとなった。


 健康診断と共に今後の生活を含めた支援が、市と"ワールド・シェパード社"の主導で進められる予定である。


 だが、彼らの政治的権利に付け込んだ政治闘争の動きを警戒して、記事は終わった。


 "()()()()()()()()()()()()()()()"である"サロメ"の拠点を捜査したが、もぬけの殻だったとロックは報告を受けた。


 "鬼火"ケネスの襲来によって、消えたキャニスの遺体と彼女の"命導巧(ウェイル・ベオ)"の行方も知られていない。


 何より、"サロメ"の安否と、"リリス"の逃げ場所が現時点でも未解明である。


 "救世の剣"に入り込んだ"リリス"にロックが攻撃を加えた後、"サロメ"が体を差し出した所に放たれたサミュエルの一撃を、彼は確かに見届けた。


 だが、誰も彼女たちの()()を見ていない。


 "救世の剣"の残骸(ざんがい)すらも発見されていない。


 "サロメ"に協力していた者達に、彼女との関係に加え、消息も含めた尋問が現在も行われている。


 カナダと合衆国に加え、大西洋を横断する形で行われているが、有力な証言を得ることは叶わないだろう。


 "フラッシュ・オブ・ナノ"誌を閉じようとしたロックの両手が、止まる。


 彼の眼を引いたのは"紅き外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイド"についての記事だ。


 欧州に"救世の剣"が到来した"ワイルド・ハント事件"以前より、彼の存在が確認されていることが書かれていた。


 行政機関や経済団体に加え、"市民たち"は彼に正当な評価を下すことを求めた――つまり、()()()()()()()()と。


 現に、電脳空間内でも、その名を知る動きが後を絶たない。


 その正体については、徹底して秘匿されている。


 仮に、ロックの顔を撮影し、画像検索に掛けても、画像検索用に用意された疑似人物(ダミープロファイル)が現れる様に"ブライトン・ロック社"が電子空間内で隠蔽工作を行っていた。


 名前に至っても同じであり、"ワールド・シェパード社"の情報分析部門の"ハティ"にも、ロックに関する情報を削除するよう"ブライトン・ロック社"が働きかけた。


 正体(ロック=ハイロウズ)を見つけ出すことは、一般人は愚か、当事者でも困難となっていた。


 "フラッシュ・オブ・ナノ"誌は、


『"紅き外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイド"と言う名がある限り、その名を背負う者が、()()()を名乗る日は来ないだろう。"UNTOLD(語られざる力)"と向き合うことは、自らも"UNTOLD(語られざる者)"とならざるを得ない。しかし、"紅き外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイド"が"UNTOLD(語られなくなる)"日々が訪れる時、一人の市民として、あなたの隣に現れるだろう……朝の珈琲(コーヒー)を片手に』


 記事の最後が、"ジェニー=オースティン"の名前と顔写真で締められていた。


――珈琲(コーヒー)好き……()()()()()()()()、十分か?


 苦笑いしたロックは、雲一つない空から照らされた日光に目を奪われる。


 二つ折りにした"フラッシュ・オブ・ナノ"誌を日傘代わりにした。


 バンクーバーに降る雨が止んで以来、フラッシュバックにロックが悩まされることは無くなった。


 サキの二つの"命熱波(アナーシュト・ベハ)"も会話をしなくなったらしい。


 だが、シャロンから、



『ロックの"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は相変わらず、半々。サキの体にも"命熱波(アナーシュト・ベハ)"が二つある。その事実は変わらないよ』



 "ウィッカー・マン"の動力炉が見える体質は変わらない様である。


 シャロンが"ウィッカー・マン"から得た()()()()()"()()()"()()()()()を、"ヴァージニア"のフォトニック結晶の粒子で投影したサキは、電子励起(れいき)銃を放った後、眩暈と共に倒れた。


シャロンによる"命熱波(アナーシュト・ベハ)"への補助を通しても、サキの守護者たちの制御が、ままならない。


その事実にエリザベスとナオトは、サキ専用の"命導巧(ウェイル・ベオ)"の製作を急がせた。


 "ブライトン・ロック社"と"ワールド・シェパード社"の二社による初めての""命導巧(ウェイル・ベオ)""製作計画――計画(プロジェクト)名は"信念(フェイス)"と付けられた。


 計画の被験者として、サキを契約社員として採用することをミカエラが決定。


 学業との両立もあるので、その補填(ほてん)がどうなるかは、近い内に彼女へ伝えられるだろう。


――()()()()()()()、か?


 ロック達の戦いで、バンクーバー市は()()()()()()とは言えなくなるだろう。


 (イースト)ヘイスティング、南市街に加え、今回の"ウィッカー・マン"との戦いの爪痕を刻まれた場所は、まだ多く残っている。


 そんな中、命を落としたキャニスへの弔いも、ロック達は満足に出来ないでいた。


"ワールド・シェパード社"――特にミカエラ=クライヴ――は、()()()()()()()()()()()()()()"ブライトン・ロック社"と協調路線を取った。


ロック達を含めた"UNTOLD(アントールド)"に向ける彼女の敵意は変わらない。


 "リリス"と"サロメ"の影も消えた訳ではなく、"ホステル"も組織として健在。


 その中の構成員が、ロックとサキへ干渉する為に、虎視眈々と手薬煉(てぐすね)引いているのも事実だった。


 先行きに立ちはだかる不確定要素群を考えていると、陽光がきつくなり、思わずロックはサキに目を向ける。


 自分よりも(イースト)ヘイスティング通り(ストリート)を進んでいると思っていたら、彼女は立ち止まって左右に首を振っていた。


「……どうした?」


 ロックの呆れた声に、


「……分からないのです、ロックの家」


 サキが声を小さくして、項垂れる。


 彼女の肩穴カットアウェイ・ショルダーから伸びる翼の様な両袖も、彼女の頭にならった。


 TPTP加盟国ばかりでなく、世界中から寄付の受付と開発の会議が重なり、"ワールド・シェパード社"のナオト寄りの社員と"ブライトン・ロック社"が贔屓にしている建築会社が"ウィッカー・マン"占拠で放置された市街の整備に駆り出されていた。


"()()()()()"にあったロックの家も、"ウィッカー・マン"襲来時から放置されている。


 そう考えるロックを他所に、


「ロックの家、見てみたいかな……」


 サキが、突然言い出したのだ。


「家に帰れるなら、()()()()()()()()()()()……」


 本土でも、帰る家を失うことになったサキの言葉は、ロックに反論の余地を与えなかった。


 ナオトとエリザベスが、サミュエルとシャロンも合わせて、一時帰宅という名目で(イースト)ヘイスティング通り(ストリート)に立ち入る許可を出した。


行先は、()()()()()()()()()()()

それにも関わらず、弟の帰宅も叶わなかった。


"望楼(ヴェルヴェデーレ)"は、"ブライトン・ロック社"や"ワールド・シェパード社"からも追われている。


 サミュエルとシャロンは、事件が終息に近づいたとわかると、姿を消していた。


――生きてりゃ、何時か()()()()()()だろ。


 そう思いながら、ロックがサキを案内することになったのだが、


「道も分からずに飛び出す馬鹿がいるかよ?」


 鼻を鳴らして彼は、サキの前に出る。


 彼の眼に伸びる、陽光に照らされた瓦礫(がれき)通り(ストリート)


 振り返りつつ、サキが自分の後から付いて来る姿を捉えた。


 柔らかい春の陽気を彷彿させる、サキの柔和な笑み。


 彼女の黒真珠の瞳に映る、紅い外套(コート)の少年。


 サキの双眸(そうぼう)の中に映るロックは、微かに笑っていた気がした。



The End of "Beginning Beat"

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© 2026 アイセル

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