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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第六章 Hash

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姦計―④―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

スタンレー・パーク 午後10時17分



 スタンレー・パークの北側に、ロックはいた。


 先程、戦った"アンティパス"を木製の長椅子に横たえる。


 彼の脈をロックは確認。


 灰褐色の戦士を右隣りに、ロックは長椅子に腰を下ろす。


 雨降る夜に、森林に放置するのも気が引けたので、雨を凌げる場所を探した。


 そうして、蹴球(サッカー)はおろか、野球も出来そうな広場――競技場を、公園の北側で見つける。


 選手の待機するベンチに、"アンティパス"を運んだのだ。


 右手を"アンティパス"の喉に再度当て、呼吸が途切れていないことを見極める。


 "アンティパス"の横たわっている場所の隣のベンチに、ロックは腰を深く下した。


 あの様な戦いをした後でも、ロックの中では、"アンティパス"が死んでいない事実への安堵が心の中を大きく占めている。


――何だ……あの記憶は?


 "()()()()()()"()()()()()()()()()()()が再度、ロックの脳裏に甦る。


 戦った時に見えた、スカーフの青年の目に映る鉢金の青年。


 まるで、自分が()()()()()のように思えてならなかった。


 しかし、ロックの中で、()()()()()()()()大きな戸惑いが生まれる。


――"アンティパス"……()()()()()()()()()()……?


 ()()()()()姿()()()()()()()姿()が、一致していない。


 スカーフを着た青年の姿が、()()()()灰褐色の偉丈夫に()()()()()()()()のだ。


 ()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()の接点にロックは戸惑う。


 だが、目の前の違和感について、ある事実に気付いた。


「……"命熱波(アナーシュト・ベハ)"、サキと同じ。しかし……」


 疑問を抱きながらも、ロックは翼剣"ブラック・クイーン"を右手に構える。


 球技が出来る程広く、木々に囲まれた広場に、無粋な"(かに)の甲羅"が三体立っていた。


 それを眼にしたのと同時に、携帯通信端末(スマートフォン)が振動する。


 左手で取ると、画面にメッセージが何度か来ていることが告げられていた。


 ブルースからである。


 着信したメッセージを読むと、


<"ワールド・シェパード社"の人型戦車が狙っている。気を付けろ>


 人型戦車――"蹄鉄"――の種類についての詳細が続くが、


<手遅れ>


 ロックは寸暇を置かず、返信。


 翼剣"ブラック・クイーン"を右手に駆けた。


 長い脚を折りたたんだ一体――"ラ・ファイエット"が、雨風と大地を吹き飛ばし、跳躍。


 飛び散る土片が、ロックの視界と進路を覆った。


 迸る泥土を避け、ロックは二時の方向に移動する。


 蹄鉄のいない広い場所を目指したが、"蹄鉄:コシュチュシュコ"の肥大した肩部の右拳が、その道を閉ざした。


 ロックは、右腕の"ブラック・クイーン"を人型戦車の右腕に突き出した。


 振りかぶった翼剣の"籠状護拳(バスケットヒルト)"から生じた紅黒い雷が鉄の拳骨とぶつかり、空間が悲鳴を上げる。


 蹄鉄の膂力(りょりょく)の反作用で、ロックの身体が泥と共に宙に舞った。


――泥濘(ぬかる)んでいるなら!!。


 "ブラック・クイーン"の"籠状護拳(バスケットヒルト)"から、ロックは半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型”命導巧(ウェイル・ベオ)”を抜き、大地に撃つ。


 鉄の機巧人形の足元から、"道作る蹄ニャッフ・ジェナブ・ラハーチ"の炭酸ガスが噴き出した。


 足元の不安定な地盤に、地団太を踏む鉄の巨体。


 "イニュエンド"を前かがみで翼剣に戻し、ロックは"コシュチュシコ"に疾走した。


 だが、ロックは歩を止め、人型戦車への追撃を断念する。


 ロックの前から飛んできた飛翔体。

 それを避ける為だ。


 機種は不明だが両腕から延びる()()()()()()()()()()()()()、三体目の"蹄鉄"。


 三体目の右腕の後ろから、雨に混じりながら排出煙が上がる。


 名前については、()()()()()()()()()()()とブルースからの連絡に書かれていた。


 思考しているロックの真上から降り立つ、跳躍型"蹄鉄":"ラ・ファイエット"。


 重力を使った位置熱力(エネルギー)による踏みつぶしが、紅い外套(コート)の少年に迫る。


 落下地点の近くで発生した位置熱力(エネルギー)による衝撃波を、ロックは辛うじて(かわ)した。


 反転攻勢で駆けるロックの足下を、揺るがす大地。


 "コシュチュシュコ"の体当たりが、ロックの行く手を阻む。


 ロックは接触を避けたが、右肩部から放たれる鉄拳が彼の回避の速さを上回っていた。


 辛うじて半身を左回転、ロックは"コシュチュシコ"の右の鉄拳に、翼剣の"籠状護拳(バスケットヒルト)"を当てる。


 "コシュチュシコ"の右拳の衝撃を利用して、ロックは肩の肥大化した鉄蟹(てつがに)の猛攻から逃れた。


 吹き飛ばされたロックの背中に、何かが当たる。


 刹那、ロックは胴を締め付けられ、骨の(きし)む音が全身を襲った。


 空中で固定されたロックを、二体の"蹄鉄"から放たれた照明が照らす。


 紅い外套(コート)を覆う鋼鉄の五指の輪郭が鈍く輝き、鉄箱の付いた右腕から伸びていた。


 ロックは痛みと共に"蹄鉄"へ目を向けると、


『"紅き外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイド"……大人しく投降しろ!』


 両腕に箱の付いた蹄鉄から、電子加工された声が聞こえた。


「カイル=ウィリアムス……テメェ、()()()()()()()()なら……手荒な歓迎を止めることをお勧めするぜ?」


 ロックは、吐き捨てる。


 返事は電子化された声ではなく、彼の体に激痛として返ってきた。


「"ウィッカー・マン"対策の兵器開発とはいえ、()()()()()()()()()を宛がうとは……気合の入った嫌がらせに、恐れ入るぜ!!」


『少なくとも、この"ジャクソン"でお前を捕まえられたなら、()()()()()()()()()()()()()()()()


 電子加工されたカイル=ウィリアムスの音声が、雨の降る広場に広がる。


 ロックの耳に入る雨音に骨の軋む音が混じり、体の節々を伝う雨粒が痛みを呼び起こした。


『安心しろ……"ジャクソン"のAIの中には、成人男性の骨格のデータが入っている。死ぬことなく苦しめることも出来る』


「取り敢えず、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をどうにかしろ……()()()


 嗜虐の色が混じるカイルへの返答を、ロックは腰からの激痛として受け取る。


 肺が圧迫され、ロックの口から呼吸が途切れがちに出た。


『ロック=ハイロウズ……お前には"ワールド・シェパード社"の仲間が世話になった。特に、ジェイソンの顔が今も良く浮かぶよ』


「アイツか、覚えているぜ。あの()()()()()()()の、()()()()()()()()()()()()()()か。テメェのお仲間と戦った過去に良心が傷むが、その名を言われたら、()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 ロックは、欧州で戦った黒と白の甲冑に身を纏った兵士たちを思い出す。


 ナオトの様に、"UNTOLD(アントールド)"を危険視するものもいれば、()()()()()()()()()()()()()()()()もいた。


()()()()()()()()()()仲間への侮辱や仕打ちは忘れんさ?』


「戦場行って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、離婚するのが分からねぇのかよ……この()()()()()のクソッカス!!」


 鋼鉄の甲羅の中から声は出なかった。


 代わりにロックを掴む鋼鉄の拳、人工筋肉と電子駆動関節の腕の駆動音として表れる。


 力をさらに強めるつもりだろうか。


 だが、ロックの右腕の動きが速かった。


 力を強めようと、自分を掴む掌をカイルが緩めた瞬間、ロックの右手の"ブラック・クイーン"から紫電が放たれる。


 "頂き砕く一振りクルーン・セーイディフ"が、カイルの"ジャクソン"機の右の腕関節を砕いた。


 人間の腕を完全に再現できる義手には色々な課題が残る。


 機械による再現の限界として、特に関節部分は熱が生じやすい。


 運動の多い人工筋肉と関節は電力の溜まり場を作り、熱暴走を起こしやすかった。


 大きな火花を散らしながら、ロックは右脚の蹴りから生んだ反動で飛ぶ。


 後退する彼を追う、脚力強化型の蹄鉄"ラ・ファイエット"。


 その巨体が、()()()()()()()()()()()()も遮る。


 機械の熱源から生じた熱波が、彼を包んだ。


 鉄の腕が両腕を組み、腕槌として振り下ろす。


 ロックの"ブラック・クイーン"による上段受けが、間に合う速度ではなかった。


 "ラ・ファイエット"からの叩きつけ攻撃だけでなく、()()()()()()()()()()()()()()()もロックは見落とす。


 彼の目の前で、鉄の壊れる音が響いた。


 脚力強化型の"蹄鉄"が両手を組んだまま腕を仰け反り、空中で一回転して地に落ちる。


 雨に運ばれた、微かなセメントの土臭さがロックの鼻を突いた。


 彼が足元を見ると、精悍な偉丈夫が、その背を上回る円筒の剣を大地に突き立てていた。


「"アンティパス"……!?」


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© 2026 アイセル

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