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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第十章 Pedal to the Metal

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祭禍—⑫—

『……ラ、ハ……ブ……』


 ロックの眼の前の純金頭の魔人――“ライティングス・オン・ザ・ウォール”――から、声が聞こえる。


 金色の彫像の頭の口が動いた気配はない。


 ロックは声の出所が、銀色の胴体に取り込まれた三条 千賀子からと気づく。


 彼女の青白い炎の吐息を漏らす()()()()()()()顔――それでも、ロックは何回か対峙して彼女の感情の起伏を感じたが――からは、感情はおろか()()()()消え失せていた。


 ロックは、度々耳にする言葉の意味を問い返さない。


 地中から出た銀鏡の槍が、ロックの頭を狙ったからだ。


 ロックが後ろへ飛ぶと、


「サキ、気を付けろ!!」


 ロックの目の前で、サキが跳躍。


 ロックを狙った銀鏡の触手が、サキのキャミソールに包まれた身体を狙う。


 片刃の“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”の蒼白い刃を輝かせ、無数の銀鏡の槍の中に飛び込んだ。


『サキに触れるな!!』


 短髪の円らな瞳の“命熱波(アナーシュト・ベハ)”の守護者“ライラ”がサキの右側に出る。


 右腕の細剣から放たれる斬閃で、サキの足に襲い掛かる触手を3本切り落とした。


 残りの触手が、サキの正面を覆う。


『邪魔です!!』


 鶏冠の兜(ガレア)の守護者――“ヴァージニア”の弓と化したに光が宿った。


 “祭壇”を覆う青白い炎を払わんとした閃光が、魔人――“ライティングス・オン・ザ・ウォール”を護る触手群を照らす。


 彼女の右腕に収束された光の矢が、一条放たれ、サキを迎え撃つ銀鏡の触手を焼き払った。


 “ヴァージニア”の放った光の矢が、触手なき純金頭の魔人に向かう。


 銀色の右肩を突き出し、一擲に応戦を選んだ。


 しかし、純金頭の魔人――“ライティングス・オン・ザ・ウォール”――の視線が、“ヴァージニア”に釘付けとなった時、()()()()()()()


 サキが“ヴァージニア”の一擲の背後に隠れ、三条を取り込んだ魔人の銀色の右鎖骨に“フェイス”を振り下ろした。


 サキの“フェイス”が、魔人の銀色の肌に触れる寸前、紫電が迸る。


『そんなの、あり!?』


 素早く動いたのは、“ライラ”だった。


 三条と一体化した“魔人”に現れた、一振りの青銅の剣。


 “ライラ”が右の細剣で、それを撃ち落とさんと振った。


 宙に浮かんだ主なき剣が、“ライラ”の一振りを躱す。


 雷を放ちながら、“ライラ”の胴に入り込んだ。


 紫電と共に、彼女の華奢な体を真っ二つにする。


「“ライラ”!!」


 半身の喪失に叫ぶサキの“フェイス”が、“魔人”の右肩に届かない。


 紫電を放つ、()()()()()()()()()()がサキの一撃を防いだ。


 主なき剣から放たれる斥力に、サキの身体が弾かれる。


 “魔人”から離れた場所に、彼女が受け身を取って。立つ。


 二つの主なき剣が、サキに向かった。


「鬱陶しいんだよ!!」


 空間を斬る一筋の水流が、サキに向かう二振りの“青銅の剣”を止める。


 ロックの“穢れなき藍眼(スール・ヒンプリィ)”による水の刃を出し、サキへの凶刃を防いだ。


 ロックは翼剣の“籠状護拳(バスケットヒルト)”を突き出し、水流の勢いで“青銅の剣”を弾き飛ばす。


 右手から殴った勢いによる逆時計回りの推力を得たロックは、跳躍。


 ロックの右回し蹴りが、“魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の左首筋にめり込んだ。


「ロック、離れて!!」


 サキに言われて、ロックは魔人の左肩を左足で蹴る。


 反動で“魔人”の間合いから離れると、その頭部が爆発した。


「――なッ!?」


 ロックは思わずサキに眼を向けた。


 彼女が構える“フェイス”から、蒼白く輝く光の楔が“魔人”の頭に向かう。


 純金の頭部が、その輝きだけでなく、爆発を浴びて、更に光沢を増す。


 サキの“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”から放たれる指向性熱力(エネルギー)による銃撃が、“魔人”の長身を大きく揺らした。


「サキ、テメェ……放つなら、『放つ』って――」


『言ってたら、相手が避けるに決まってんじゃん……アンタ、バカ?』


『“()()()()()()()()()()()()”……孫氏じゃありませんか?』


 “ライラ”と“ヴァージニア”の反論に、ロックの不満の矛先が潰される。


()()()()()()()()()()分かったから……次来るよ!!」


 サキが諫めると、二人の“命熱波(アナーシュト・ベハ)”の守護者が眉を顰める。


 ロックは胸の中で不平を溜めながらも、()()()()()()


 発生源を見ると、サキの攻撃で()()()()()()()()()()()()姿()()()()


「サキ、生きてたら()()()()()()()()()()()()!!」


 ロックは翼剣型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ブラック・クイーン”を逆手に、サキの前に躍り出る。


 銀の胴体をした“魔人”の両腕と両脚を鉄色に覆い、ロックとサキに向かってきた。


 “駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)”の神経強化による神速で、ロックは魔人“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の間合いに入る。


 神速により強化された左拳撃の熱力(エネルギー)を、“魔人”の振りかぶる右拳に選好して、顎に打ち込んだ。


 巨体の出した加速度を一時的に上回る衝撃を受け、“魔人”が両手を広げ大きく仰け反る。


 ロックは“籠状護拳(バスケットヒルト)”越しの翼剣の右拳を放った。


 顎に狙った拳撃が命中し、斬撃がその軌道に乗る。


 紅黒の軌跡が、“魔人”の銀色の喉に刻まれた。


 純金頭の“魔人”が後退り、ロックは翼剣を順手に構える。


 ロックは翼剣を左から右に、斬り下ろした。


 “頂砕く一振りクルーン・セーイディフ”による分子配列によって()()()()()()()()刃が、魔人の右側の銀色の肩を食らう。


 “魔人”が左腕の拳撃で、ロックの斬撃を迎え撃った。


 ロックの両腕に伝わる衝撃が、全身を震わせる。


――クソ、離れて!!


 両手を握る翼剣の力を抜き、魔人“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の右拳を鍔で受けた。


 一撃の勢いを流しつつ、ロックは宙返り。


 “魔人”の間合いから離れると、翼剣“ブラック・クイーン”の鍔から半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“イニュエンド”を右手で取り出した。


 ロックの銃口が“魔人”の頭を捉えた。


 鉄色の具足を付けた魔人が右足で、宙に浮くロックに向け、蹴り上げる。


 “魔人”の右脚がロックに届く寸前、白い煙幕が爆轟を上げた。


 “定めに濡らす泪フアスグラ・ウイルイエアダサン”による水蒸気爆発が、“魔人”を衝撃で吹き飛ばす。


――このまま、畳みかける!!


 ロックは翼剣:“ブラック・クイーン”に、半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”を再装填。


 右の逆手に、駆け出した。


 蹈鞴(たたら)を踏む“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の前方から、突風が吹く。


 ロックはそれに足を止めると、()()()()()()()()()()()()()()()が立ちはだかった。


――“祭壇”前に立ちはだかった、巨大“ウィッカー・マン”の欠片!?


 ロックは“籠状護拳(バスケットヒルト)”で、大きな欠片を殴り飛ばす。


――これは胴体の方か!?


 ロックは右拳の感じた衝撃について、熟考していると、


「ロック、前に気を付けろ!!」


 ブルースの声と共に翠色の閃光が、ロックの前を疾走(はし)る。


 彼のショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”の双子の斬撃が、銀鏡色の人型を3人、塵に返した。


「ブルース……こいつ、三条の力を!!」


「というよりは、“()()()()()()()()()()()()!!」


 苔色の外套(コート)の戦士が、ロックの隣でショーテル二刀流を逆手に構える。


「ブルース……そういえば、三条は“()()()()()()()()()”の声を――!!」


 サキも隣に加わると、片刃型の“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”の切っ先を“魔人”に向けた。


「ああ……“パトリキウス”の言った様に“()()()()()()()()()()乗っ取られていた!!」


 ブルースが吐き捨てると、


「三条の“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“()()()()()()()()、“ワンダーウォール内”から直接熱力(エネルギー)を得て動く“命導巧(ウェイル・ベオ)”だからな!!」


「つまり、『“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』ということか!!」


 ロックは前傾姿勢になり、“ヘルター・スケルター”の傀儡と化した三条とその“命導巧(ウェイル・ベオ)”を見据える。


『チ……カラ、モット……オ……レ、ニ……チ…カラヲ!!』


 三条の口から声が、くぐもった、低い機械音声が響く。


 “祭壇”を覆う青白い炎が巻き上がり、“四つの香草(ハーブ)の匂い”がロックの鼻孔を突いた。

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© 2025 アイセル

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