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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第九章 Feed The Machine

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229/257

真実―㉚―

「……何がおかしい、三条?」


 ロックの目の前の女弁護士の()()()()()()()()()感情の発露。


 ロックの凍える夜の湖面を思わせる眼を、彼女の双眸が映しながら、


「いえいえ……日本国憲法ではなく、彼らがやっと()()()()()()()()()……()()()()()()()()って!!」


 ロックの食い込む刃が、三条の顎と首の付け根の皮膚を薄く傷つけたのか、僅かに血が出ている。


 三条の中に()()()()痛覚が無いのか。


 それとも()()()()()()()()()が彼女の笑いのツボ(ファニーボーン)を突いて、()()()()()()()()()()()


 サキも三条の桃色のパンツスーツの背後で、彼女の豹変に目元が引きつっている。


 ブルースも二振りのショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”の鍔の銃口の射程を三条に合わせた。


 サミュエルも鎌の刃の内側の山土師に注意を向ける。


 鍔なし(ビーニー)帽の猿顔の活動家も、三条の反応を見たことないのか、目を剝いていた。

 サミュエルの“命導巧(ウェイル・ベオ)”の間合いにいる尾咲も同様で、反日と括る仮想敵の反応に言葉が無いようである。


 嗤う三条の眼がロックの背後も映した。


 一平、龍之助も事態に対処できず、目を合わせるに留める。


 シャロンも“祭壇”の入り口で、振り向き様に、三条の意図を量りかねていた。


「それでしたら……()()()()()()()()には、()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()のですから」


 笑いが落ち着いた三条の言葉に、


「テメェ……どういうこ――!?」


 三条に真意を問うが、ロックの息が止まった。


 ()()()()()()()()()()に、ロックも目を向ける。


 三条の眼に浮かぶのは、()() ()()() ()()の二人だった。


 桃色のパンツスーツの女の視線を受け、堀川達も怪訝な顔を見せた。


 シャロン、サミュエル、ブルース、一平と龍之助も三条の()()()()()が分からず、戸惑っている。


“バタリオン・ピース”の狼と牛の擬獣(エミュレータ)達も、首を傾げていた。


 そんな中、彼らの眼がロックとサキを映す。


 蒼白となった彼らの顔が。()()()()()()()()()()()()()()()を告げていた。


「ロック、サキ……どういうことだ? 三条は()()()()()()!?」


 龍之助が矛槍型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”の穂先を、三条に向ける。


「原田 龍之助……それは、“()()()()()()()”が()()()()()()()のではないですか?」


 桃色のパンツスーツの女の蠱惑的な言葉に応えるように、白い少女――“レン”――が浮かぶ。


 彼女の眼に、龍之助と共に赤い少女――“アイ”――の鏡像が映っていた。


 彼女は、妹の“レン”と向かい合う。


 ロックの眼に映る“アイ”の一言は、()()()()()()()()()()()()()とかけ離れていた。


『あなた……誰なの?』


 赤い少女の強張った瞳は、()()()()()()に向けるものではなかった。


『ようやく……()()()()()……』


 白い少女が口を開いた。


 その言葉に赤い少女の顔から、血の気と言えるものが消えていく。


『まさか……()()!?』


 空中で頭を抱えこむアイ。


 アイはおろかロック達も()()()()()()()白い少女の口が、下弦の月を作る。


“レン”という名の笑顔の仮面を纏う少女の眼の輝き。


 それが、()()()に染まった。


 苦しむアイを見下ろす、“()()”だった少女の装いが()()()()()()になる。


「おい……アレ、三人の少女の中で()()()()奴――!!」


 一平の絞り出した言葉に、ロックは息を呑む。


 二人の少女たちから香る、四つの香草(ハーブ)の匂い。


 匂いと共に、ロックに頭痛が走った。


「ロック……これは!?」


 サキも頭を抱え、三条の背の向こうで膝を突いた。


「これは……周りを見てみろ!?」


 龍之助に言われ、ロックは頭痛を堪えながら周囲を見渡す。


“祭壇”の機械に覆われた内装が消えていた。


『……あれ、ここは……?』


 柔らかい少女の声が聞こえた。


 ロックは周りを見ると、卵の殻を思わせる楕円の樹脂に覆われている。


 樹脂を触るのは、両手だった。


「これは……()()()()()を通している映像か?」


 ブルースの言葉に、


「じゃあ……それは、誰の――!?」

 シャロンが真っ青になって、突如として現れた両手の先を凝視する。


 樹脂を触る両手は、白く瑞々しい。


 両手と樹脂の向こう側に、卵の楕円が出っ張る何かが見えた。


 その中で蠢く影を見ると、


「アイ……か?」


 少女の格好にロックは訝しがるが、


「いや……違う」


 龍之助が隣で被りを振ると、


『……レン。私の妹』


 憔悴しきった“アイ”が口を開く。


「ちょっと待って……これは、“アイ”の()()ってこと!?」


 サミュエルが眉を顰めると、


「みんな、見て!! ()()が!?」


 サキの叫び声に、ロックはレンに眼を向けた。


“フィンヴェナフ”と刻まれた楕円の樹脂の内側を、アイの双子の妹が叩いている。


『ねえ、アイ……怖いよ!! 助けてよ!!』


『わからないよ、私も怖いよ!!』


 樹脂越しに向かい合い、恐怖を吐露する双子の姉妹。


 二人の視線からの直径の中心には、大きな人型があった。


「待て……()()()()……()()、“()()()()()()()()!?」


 一平が、感情と共に吐き捨てた。


 血を分けた少女が、()()()()()()()()()閉じ込められている。


 その様子を見せられて、誰も平静でいられる訳がなかった。


 無論、()()()()


『リュウちゃん……助けて、助けてよ……』


 龍之助が、姉妹を呼ぶ自分の声に歯を食いしばる。


 どうにもできない過去に、彼が矛槍を砕かん勢いで力を入れていた。


()()()()……()()()()()!?』


 アイを覆う樹脂越しに見える巨人から、()()()()()滲み出る。


 滲み出た光が、アイとレンのいる卵型の容器に伸びた。


『苦しいよ……アイ、助けてよ!!』


『レン……私も痛いよ、怖いよ……助けてよ!!』


 アイの視界を覆う青白い光に、レンの容器もその餌食となっていた。


 不意に、ロック達の視界が光に包まれる。


“祭壇”はおろか、巨人も苦しむレンの姿もない。


 ただ、大きな影が現れる。


 影は少年を描いた。


 眼鏡を掛け、綺麗な短髪。


 そして、鋭く真っすぐな瞳を持っている。


「これは……龍之助!?」


 サキが叫ぶと、一平と本人が頷いた。


「これ……()()()()()だよね……」


 シャロンの言いたいことに、ロックは理解してしまう。


 その答えが、真っ青に立ち尽くす赤い少女――“アイ”――で示されていたことを。


『そう……お前は、()()()()()。死にゆく、()()()()()()……()()()()()を望み、()()()()()


 レンを()()()()()が、宙に浮かび“アイ”を見下ろす。


『私のことは……“ルイ”かな……。()()()()()()()()()()()この姿を作った……』


 青緑の少女の“ルイ”の眼は、どんな鏡よりも綺麗に輝き、()()()()“アイ”を映し出す。


 彼女の蒼白な顔を見て、


『レンも……龍之助が好きだった。でも、アイがいつも()()()()()()()()――』


『止めて!!』


 近づく“ルイ”に、“アイ”が悲鳴と共に離れる。


『それなのに……レンは恐れながら死んだのに、()()()は“()()()()()()()()()()()()――』


“ルイ”の糾弾に、“()()”の()()()()()が“祭壇”を覆った。


 龍之助の顔は、姉妹の気持ちを思わぬ存在から知り、呆然と“アイ”を見つめる。


 どう処理していいか分からない。


 そんな彼の視線に耐えきれなくなり、


『見ないで……私を見ないで!!』


 青白い光が“アイ”から放たれる。


“ルイ”も呼応するように、同じ光を華奢な身体から放出。


 二人の光は、()()()()()()()()()()()


 光の行き先は、()()()()だった。


「これは……?」


「何……これ、どういうこと!?」


“アイ”の光が堀川を包む。


 秋津は、“ルイ”の光に覆われていた。


 二人が苦しみ出すと、


「何が起きているの!?」


「“バイス”……これは、どうなってんだ!?」


 サキと“バタリオン・ピース”の“ライト”が叫ぶ。


 余りの出来事に、“ライト”の両腕の力が緩むと、山土師と尾咲の二人が拘束から抜けだした。


「……“パトリキウス”。これは、どういうことだ?」


“政市会”と“政声隊”の構成員たちも目の前の事態で混乱している中、“バイス”の声が響いた。


 ロック達ですら、何が起きているのかの把握も難しい状況の中で佇む、牛型の擬獣(エミュレータ)の男の視線。


 “ソカル”の首魁――赤毛の“パトリキウス”――が、無から現れた。



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© 2025 アイセル

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