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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第九章 Feed The Machine

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218/257

真実—⑲—

 ロックの攻撃で砕け散った氷が、首魁である間崎の不利に揺れる襲撃者たちを映し出す。


「ほらほら、手足がお留守だよ!!」


 サミュエルが金髪のポニーテールを揺らしながら、動揺する“力人衆”との距離を縮める。


 飴色のジャケットの青年の煽りに応える形で、黒シャツ男が白色トルク――“フロスト”――の氷の両拳を構えて踏み込んだ。


 だが、サミュエルの前で“力人衆”の男が大きく尻餅を付く。


「そういえば、僕の出身が()()()()()()()()()()……って、話したっけ?」


 転ばせたのは、サミュエルの散弾銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“パラダイス”の大鎌――その先端の刃を留める金具である。


 サミュエルはその先端を、男の拳撃の軸足である右足を引き寄せたのだ。


「焦って、()()()()()()()……典型的な、()()()()()()()()だね」


 サミュエルの指摘が、男の羞恥心を煽ったのか、全身をバネにして飛び掛かった。


 だが、“フロスト”の摩擦係数が皆無な足下で、跳躍するので前のめりになる。


 倒れようとした男の顔面に、サミュエルが右膝蹴りを放った。


「おっと……()()()()()()()()()()()()()()()()()、まず()()()()()()()()()()()()()――って、もう聞こえないか?」


 黒シャツ男の身体が、サミュエルの膝蹴りの慣性の法則に従い、上体を大きく逸らせる。


 潰れた鼻と、砕けた歯と血で汚れた口腔を洞窟の天蓋に晒した。


 サミュエルが時計回りに振り返ると、


「君は、()()()()()()()()()()!!」


 大鎌を畳むと、散弾銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”の後部――スリング(負い紐)を取り付ける金具――を“力人衆”の男の背に叩き込んだ。


 男は加速に乗せて、サミュエルに右拳を振りかぶったのだろう。


 大きく空振りをするだけでなく、後ろから叩きつけられた衝撃で体躯が宙を舞った。


 加速に乗せられ、宙に完全に浮かぶと、


「はい、一丁上がり!!」


 快活なシャロンが、声と共に跳躍。


 彼女が男の両肩に両手を添える。


 吹っ飛んだ男が地上に落ちる寸前で、シャロンが右飛び膝蹴りを繰り出した。


 シャロン自身も滑輪板(スケートボード)で加速していたので、彼女の力を乗せた攻撃が綺麗に男の顎に入る。


「ただ一つだけ、()()()()()()()()()()、重心を安定させた速さとパワーがモノ言うから、()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()


 意識を失った“力人衆”の男なぞ、視界から――否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのように、誉め言葉を掛けたサミュエルに、シャロンが一直線で向かう。


「そういえば、アイスホッケーって……バンクーバー強いんだっけ?」


 サキがサミュエルを見ながら、片刃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”を構えながら、滑走してくる“力人衆”を数人避ける。


 間合いを取りながら、“フェイス”の指向性熱力(エネルギー)の刃を振るった。


 氷の装備を狙った斬撃の破壊熱力(エネルギー)と、氷の足裏と地表により、“力人衆”

 は大きく転ぶ。


「ここ数年で調子が良いからスタンレーカップは、カナックスが絶対に獲るよ!!」


「アイスホッケー……深夜のケーブルテレビで観たけど、面白そうだよな!!」


 サキに喜々と答えるサミュエルの横で、一平が黒シャツの“力”一文字を消滅させる勢いの右蹴りを男に放った。


 土手っ腹に放たれた蹴りで、男の両脚が地表から一瞬浮かぶ。


 一平の蹴りで跳ねあがった男は、膝から着地すると腹を抱える様に崩れた。


「一平、是非ともカナックス応援してね!!」


「一平が言うなら面白そうだな……俺も観ようかな」


 龍之助が矛槍型“命導巧(ウェイル・ベオ)”の柄で――サミュエルのやったように――不安定な軸足を引き寄せた“力人衆”の顎に、右肘鉄をかまして言った。


 龍之助の興味が、推しているチームに向いたサミュエルの機嫌が良くなっている。


「ただ、最近、()()()()()()だがな……」


 ロックは“力人衆”の男の放つ、連撃を躱しながら言う。


 右と左、それぞれからの軽拳撃(ジャブ)は、足元の氷を無くしたのか安定していた。

「兄さん……盛り上がってるのに。酷いねー」


「事実だ」


 ロックは、“力人衆”の男の動きが止まると、咄嗟に身体を時計回り。


 男の攻撃が右直拳撃(ストレート)と踏み、右後ろ回し蹴りを放つ。


 男が踏み出した時には、ロックの右踵が男の右首から延髄に食い込んだ。


 右直拳撃(ストレート)の体勢で、黒シャツ男が崩れる。


「なんか、ムカつく」


「シャロン、兄さん……ホッケー嫌いだから」


 彼の好みも自分の趣味とするシャロンとしては、ロックに腹が据えかねるものがあるのだろう。


 怒りの発露として、飛び掛かる“力人衆”に、頭の上から滑輪板(スケートボード)を叩き込んだ。


 サミュエルが、そんな彼女を宥めていると、


「そうなの、サミュエル?」


「だって、兄さん……()()()()()()


 サキの問いかけに、サミュエルが、()()()()聞き捨てならない言葉を放つ。


「おい、サミュエル……?」


「なら、兄さん……“PS勝負”やる?」


 ロックは、無意識のうちに翼剣を順手にして、“迷える者の怒髪(ブイル・アブァラ)”の墳進(ジェット)火炎で五人の“力人衆”を薙ぎ払った。


「一平、PSってなんだ?」


「“ペナルティショット”の頭文字から取ったサッカーで言うPK戦だけど――って、ロック……なんで睨んでくるんだよ!?」


 龍之助に解説していた一平が、抗議してきた。


 彼の眼に映るロックの姿は、右手に炎が宿った翼剣を手にしている。


「まあ、カナダって寒冷地だし、滑れないのは……ね?」


「楽しむなら、季節と場所問わず出来るバスケの方が良いじゃねぇか?」

 ブルースが背後に向けて、二振りのショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”の柄を突き出す。


 銃口と化した柄から、弾が吐き出された。


“政市会”会員の両腕に付けられた羊の頭蓋――“スウィート・サクリファイス”――の青白い眼窩が、銃撃を浴びて消えていく。


「……ロック、そういう問題だったか?」


「……兄さん、しれっと話を変えるよね?」


 龍之助が疑問、サミュエルの逃げを指摘されると、


「前に進むぞ!! 階段で寝ていた“政市会”も来ているからな!!」


 ロックは祭壇に向けて、進んだ。


「お前ら……仲が良いな」


 ライダースーツを纏う男の“ライト”が、横に付く。


 その隣には、秋津と堀川がいた。


「会ったばかりのが、割と多いがな」


「でも……楽しそう」


「そうだね」


 ロックの言葉をどう受け取ったのか、定かではないが、秋津と堀川の表情には柔らかさと言うのがあった。


 少なくとも、ロックの見る限りでは、()()()()()()()()()()()()何かを見出したのかもしれない。


「そんなこと考えるくらいなら……アイツ等の中に入れば良いだろ?」


 茶髪の大男“バイス”が、突然言ってきた。


 ロックの視線に、無言ながら彼から。


「問題があるのか?」


 そう言われた気がしたロックは、


「……見ての通り、右だの左だの、国だの平和だの……そんな話とは、無縁で()()()()()()()()奴らだ。ただ――」


 気づいたら、言葉が紡がれていた。


 二人がロックを見て呆然とするが、


「アイツ等は、何かにつけて人や属性に優劣付けるような奴らじゃない……()()()()()()()()()()()()()()()()()、その限りじゃないけどな」


 ロックは、言葉を精一杯選んだからか、頭に熱さを覚える。


 だが、二人の返した笑顔。


 堀川の純朴さの中にある熱、秋津の芯の籠った優しさ。


 それを眼にして、ロックの頭を覆う熱源が消えた様に思えた。


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© 2025 アイセル

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