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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第九章 Feed The Machine

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真実—⑯—

――何があるってんだ……?


 ロックは鼻を突く香草(ハーブ)の臭いを仄かに感じながら、駆け出した。


 地下に続く階段を背に、“政市会”の男の特殊警棒“芝打”が、紅い外套(コート)を纏うロックに放たれる。


 ロックは翼剣の籠状護拳(バスケットヒルト)を右から突き出し、男の攻撃を食い止めた。


 それどころか、ロックは()()()()()()()男に飛び込む。


 後続の“政市会”会員が、ロックから生じる加速乗法と重力加速度の熱力(エネルギー)を受けた男の背を正面から受ける。


何人かを脇に押しやり、将棋倒しの要領で残りの“政市会”会員が階段から足を踏み外した。


ロックの突進で“政市会”会員たちが、鉄製の床に仰向けに倒れ、手すりに叩きつけられる。


「あれ、もしかして……前に河竹市で関わった――」


 一平の声に、ロックは上を見上げる。


 爆轟が響くと、ロックの飛び降りた階段から二人ほど滑り落ちた。


 赤、白のそれぞれのトルクを纏った“政声隊”メンバーだ。


 一平が、階段で仰向けに寝ている“政市会”会員を除けながら降りてくる。


「確かに、“遺跡”……だね」


 サキも“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”の片刃を突き出しながら、一平に続く。


「そう呼んでるの!? 何か、カッコいいな」


 一平が振り返り様に叫ぶと、サキが困惑する。


「バカ……楽しいものじゃねぇよ」


「なんでだよ!? “()()()()()()”とか“()()()()()U()F()O()”とかいう感じで熱いじゃねぇかよ!!」


「というか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、尚、笑えねえよ」


 反論に窮する一平を放置して、ロックは呆れながらも階段を下りる。


 一平とサキの言う“遺跡”を臨む形で、鉄骨式の折り返し階段は切り立った崖に建てられていた。


 尾咲と山土師という“政市会”と“政声隊”の首魁たちが使うエレベーターと並行する形となる。


 紅い外套(コート)と自分の頬を熱波が撫でた。


 階下から“スウィート・サクリファイス”の青白い弾丸が、螺旋階段を弾く。。


 ロックばかりでなく、階段に踏み込み始めた一平とサキ、龍之助、サミュエルとシャロンにも、地の底からの“死の眼差し”に晒されていた。


 半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”で、ロックも応戦する。


 螺旋階段から覗き込んで見えた二人に、“雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”のナノ強化銃弾を撃った。


 一人を倒すが、二人目は階下に逃げたため、二発目を外す。


 ロックの隣を疾風が駆けた。


 ロックは、鉄骨式の折り返し階段の内側に立っている。


 彼を押しのける形で、手摺を苔色の外套(コート)を纏うブルースが、折り返し階段の手摺に腰を乗せて滑走。


 ロックを狙う階下の“政市会”会員を、ブルースは勢いに乗せた飛び蹴りで力化させていく。


「……一番、()()()()()()()()()()


 頭を抱えてロックの隣に、追いついたサキが苦笑して返す。


「こういうのは()()()()()()()()()()、一番だぜ!!」


 ブルースの繰り広げる踊り場の乱闘が、鉄骨式階段の全体を振動させる。


 緑の閃刃が、作業用空間を照らす人工照明の中で煌き、青白い光の担い手をねじ伏せていった。


「ま、煙と()()()()()は高いところが好きと言うよね」


 サミュエルが追い付いて言うと、


「あれ……それって、()()()()()()()()()()()()()()()とかじゃなくて?」


「まあ、()()()()()()()()()()()()()も込みなんだろうな……」


 シャロンが疑問を呈して、龍之助がブルースの様子を見ながら言った。


 いずれも、ロックに負けず劣らず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 というよりは、ロックですらも酷いと思ったのをサキもそう感じたのか、周囲を諫めている。


 ロックは溜息を出しながら、ブルースが昏倒させた“政市会”会員で溢れる踊り場にたどり着いた。


()()()()()()()()()()なら、目の前にいるぞ!!」


 上から鉄骨を響かせながら、ロックの耳朶を叩く。


 声の主は、“バタリオン・ピース”所属でライダースーツを纏う“ライト”だ。


 寡黙な彼の相棒である大男の“バイス”も、背を向け秋津と堀川を折り返し階段の内側に移動している。


 折り返し階段の外側は、洞窟の空洞が広がっていた。


 しかし、()()()()()()()()()()()


「止めるぞ、“()()()()()()()()()()()!!」


 “政声隊”のメンバーの怒号が、折り返し階段の外側から響いた。


 彼のトルクの色は赤色。


 “ブレイザー”の炎の人型が()()()()()()()()()()、上昇してきたのだ。


「それだけじゃない!! ()()()()()()()!!」


 “バイス”が上を向いて叫んだ。


 折り返し階段の最上階を見ると、足音が折り返し階段を振動させる。


「“ベネディクトゥス”達の攻撃を逃れた奴らが、来たのかもしれない!!」


 龍之助が背後に回り、階段を下りてくる集団と対峙する。


 矛槍型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”を構え、穂先から“加圧水流(ウォータージェット)”を放った。


 “ライト”と“バイス”も加わり、龍之助と共に応戦。


 三人が秋津と堀川を背にして、


「えーっと、()()()()()()()()()()()()()に聞くけど()()()()()()()()()()()()()()()はどうする!?」


「変な肩書を付けんじゃねぇ、ブルース!!」


 抗議を込めて、ロックは半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“イニュエンド”を空から乗り込もうとする“政声隊”メンバーに向けて撃った。


 “雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”の銃弾が、空中の“政声隊”メンバーを撃ち落とす。


「ロック、単純明快で良いと思うよ!!」


 サキがロックの銃撃と共に、駆ける。


 “ブレイザー”の上昇噴射を使って手摺を超えてきた“政声隊”の男に、片刃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”の指向性熱力(エネルギー)の刃で応戦した。


「サキ……()()()()()、言うんじゃねぇよ!!」


「というか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」


 一平が叫びながら、手甲型“命導巧(ウェイル・ベオ)”の“ライオンハート”から、炎の榴弾を両手から放った。


 ロック達のいる折り返し階段の踊り場の上空にいる、“政声隊”メンバーを炎の榴弾が遠ざけていく。


「そういう意味で言えば、()()()兄さんは()()()()()()()()()()()()!!」


 ロックの側で、サミュエルが散弾銃型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“パラダイス”の大鎌を立ち上げる。


 サミュエルが“金砂波刃(スピール・オー)”の砂塵の刃で一人切り伏せ、“金剛風波(スプレア・ガイエッフ)”による砂塵風射(サンドブラスト)を、手摺を超えようとした“政声隊”二人に放った。


 散弾銃の発砲の衝撃で、手摺に叩きつけられる。


「ロック、シャロン!! 二人で地上まで突っ切って行け!!」


「人使いが荒いな!!」


()()()()()、同意だ!!」


 シャロンの()()()()()()()()()()共感して、ロックは跳躍。


 ブルースがやったように、ロックは両腿を手摺に乗せて階下まで一気に下った。


 左手で“ブラック・クイーン”を持ち、“籠状護拳(バスケットヒルト)”を前に加速。


 折り返し階段の中心を上る“政市会”会員を、ロックは風を感じながら次々に跳ね飛ばした。


 ロックの向かいでは、シャロンが“滑輪板(スケートボード)”に乗っている。


 彼女は滑輪板(スケートボード)の胴の部分を、手摺に交差させるように乗せて、バランスを取っていた。


 彼女の体重による滑走も――ロックと並行で――“政市会”会員を押しのけながら、滑っていく。


 ロックとシャロンが階段の両手摺で急加速の襲撃を“政市会”会員達は、彼らに背を見せて、階段を引き返した。


 “政市会”会員達は彼らを避ける際に、転び、跳ね飛ばされる。


 また逃げる途中で列を崩して、階段から落ちる者もいた。


「よし、着いた!!」


 シャロンが向かいの手摺から、飛び降りる。


 ロックも底に付く、直前で飛んだ。


 洞窟最下層から伸びる折り返し階段の一階部分に、“政市会”会員達はいない。

 むしろ、階段に集中していたのか、ロックとシャロンの急襲とも言える移動で、階段の途中で倒れている者が多い。


「ロック、着いたか!!」


 後ろからブルースの声が聞こえた。


 彼に続いて、サキ、秋津と堀川、サミュエル、一平、龍之助、“ライト”と“バイス”が、是音台研究所の最下層に降り立つ。


 彼らが進む内に、後ろから来る団体の構成員を対処したのか、追手の気配はなかった。


「研究所の下にこんな洞窟があったのか?」


 ロックは、奥にある機械に蝕まれた洞窟を見る。


「ああ、元々住宅地を立てる予定だったんだが、この洞窟の“遺跡”を発見した。その調査も行う為に、地表に研究所を建てたんだ」


 ブルースの目線は、機械に覆われた洞窟の奥を見据える。


 ロックも視線を合わせると、その先には、()()()()()()()()()()()姿()が見えた。


「少し遅れているが、尾咲と山土師に追い付きそうだな」


 ロックは言うと、走り出した。

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© 2025 アイセル


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