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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第九章 Feed The Machine

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210/257

真実—⑪—

「龍之助!!」


 凛としたサキの声が響き、蒼白い閃光が矛槍を持つ龍之助の傍を駆け抜ける。


 二撃目の雷撃を龍之助に放った“政声隊”のメンバーの男の胸を、“指向性熱力(エネルギー)”の(やじり)が貫いた。


 男の周囲の空気が灼かれ、彼から閃光が放たれる。


 熱力(エネルギー)の炎に晒された男から、青緑の人型“アンペア”が霧散。


 電撃の悪意の矢が消え、射手の“政声隊”メンバーは膝から崩れた。


「サキ、助かった!!」


「良いけど……でも、ロック……()()()()()()()()()()


 龍之助の感謝をサキが受け取りつつ、研究所への入り口に続く道に顔を曇らせる。


 サキの言う通り、ロックの目の前には“政市会”と“政声隊”の面々がひしめき合っていた。


 “パトリキウス”と“ベネディクトゥス”の二名が、道を作ろうと先陣を切ったが、やはり人海戦術に手を焼いている。


 ――単純に()()()()()()からな……。


 ()()()()人死にの出るほどの攻撃をしてないのが大きいだろう。


 ()()()()()”でも、()()()()()()()()の“コロンバ”や“ケンティガン”の様にすれば話は早いだろう。


 あるいは、“スコット決死隊”や三条の様な強硬手段も有効だろう。


 考えていると、最後尾に回った桃色の風となったシャロンの支援を行う、堀川と秋津の姿が目に入る。


 異なる考えだけで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()二人の少年と少女。


自分(テメェ)の為に護らないといけない分、楽には行かないな」


 苦笑するロックの隣で、“政市会”の女会員の放つ“スウィート・サクリファイス”の光と共に意識を奪うサキが振り向いた。


 彼女がロックの姿を眼に入れると、笑顔で返す。


 ロックは照れくささを覚えていると、


「おい、俺たち“バタリオン・ピース”が突入するから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 “ライト”が後ろから話しかけてくる。


「どうにかできるのか?」


 ロックの問いに、ライダースーツを着た狼の耳を噛みの間から覗かせる青年が頷く。


「じゃあ、俺とロックで行く。“ライト”、合図は?」


()()()()()


 苔色の外套(コート)のブルースが二振りのショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”を構えると間もなく、ロックは背後から熱気を感じた。


 ロックに立ちはだかる“政市会”と“政声隊”の眼に、映る解き放たれた炎と雷。


 シャロン、堀川と秋津のいる最後尾に集団が見える。


 研究所付近で乱闘しているのとは別の“バタリオン・ピース”が援軍として加わったのだ。


 街中で、各地で展開していた“電脳右翼(デンウヨ)”と“電脳左翼(デンサヨ)”の鎮圧が落ち着いたのだろうか。


 ロックは隣のライトの出す唸り声に、思考を停止する。


 狼の“擬獣(エミュレータ)”の青年の顔が、狼類を思わせる形になった。


 犬歯を突き立てて、消失。


 ロックは翼剣:“ブラック・クイーン”を逆手に、大地を蹴った。


 “駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)”による全身の神経強化を行う“疑似物理現象”で、超神速で突き進む。


 “バタリオン・ピース”の一員である“エクスキューズ”達の放つ、炎がロックに立ちはだかる“政市会”の青年に直撃。


 突然の攻撃に驚いた“政声隊”の青緑のトルクの男が、“アンペア”を出そうとした瞬間、右に持つ“ブラック・クイーン”の“籠状護拳(バスケットヒルト)”を前に出した両腕の突進で跳ね飛ばす。


 “政市会”と“政声隊”の面々が、“バタリオン・ピース”の加勢に気づいた時には後の祭りと言えた。


 ロックと並列に進むように、右隣りのブルースの双刃が織りなす“エメラルド”の突風と閃光が両政治団体を男女問わず、地べたを舐めさせる。


 ロックの左隣では、雄叫びと共に三日月を思わせる閃光の爪による“ライト”の猛攻が、団体の構成員たちを切り刻んでいった。


 ロックも右に持つ翼剣の“籠状護拳(バスケットヒルト)”で、“政市会”の特殊警棒の“芝打”を振りかぶる女を、()()()()()()()()()


 ロックの一撃で砕ける警棒からの“命熱波(アナーシュト・ベハ)”封じの光が、周囲に降り注ぐ。


 赤いトルクから“ブレイザー”を召喚しようとする初老の男が、光の消失に戸惑った。


 彼の眼に自身の姿が映る。


 武器をなくし、待てと言いたかったのかもしれない。


 しかし、その言葉はロックの放った左蹴りが彼の口を塞いだ。


 股関節の右を破壊され、初老の“政声隊”メンバーが痛みのあまり横転。


 “芝打”の欠片の憂き目にあったのは、“政市会”も例外ではなかった。


 ロックに両腕の命導巧(ウェイル・ベオ):“スウィート・サクリファイス”の銃撃を放とうとするが、起動の証である眼窩の青白い光が消え失せる。


 ロックは空かさず、右にある籠状護拳(バスケットヒルト)で一撃を加える。


 頭部から全身を揺らすと、ロックは左と再び右の護拳の連打で沈めた。


 倒れる“政市会”会員の眼に映る、ロックの背後。


 “政声隊”メンバーの二人が好機と思い、白と青緑、それぞれの人型をそれぞれ召喚した。


 しかし、そこに二つの人影が、襲撃者を包む。


 影の正体は、駅前広場で、速攻を仕掛けていた二人の虎と黒豹の擬獣(エミュレータ)だった。


 黒豹の全身から繰り出される突進の熱力(エネルギー)で、青緑の“アンペア”ごと男を吹っ飛ばす。


 虎の方は、速さと力の乗法による熱力(エネルギー)で白い“フロスト”を出した男もろとも、周囲を巻き込んだ。


「ロック!!」


 背後の一平の声と共に、炎の榴弾がロックの側を滑走。


 目の前の両派の活動家たちが、攻撃の衝撃で左右に散らされる。


「道を開けるから突っ込んで来い!!」


 彼の声に合わせる様に、“バタリオン・ピース”の“エクスキューズ”たちの氷柱(つらら)が一斉に“政市会”と“政声隊”に降り注いだ。


「行こう、ロック!!」


 サキが、ロックの隣を駆け抜ける。


 彼女の両隣に浮かぶ“ライラ”と“ヴァージニア”。


 二人の”命熱波(アナーシュト・ベハ)”の守護者の熱力(エネルギー)を感じ、“駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)”の()()()()()()()()()()


 全ての世界が遅く感じる中で、炎、氷や雷が飛び交う。


 獣化した擬獣(エミュレータ)による肉弾戦の熱力(エネルギー)が、“政市会”と“政声隊”から迸っていた。


 サキの進む先には、“研究所”の玄関に立つ大柄な男が二人。


 一人は“政市会”らしく、特殊警棒の“芝打”を装備するが、筋骨隆々だった。


 もう一人は“政声隊”で、その中の白い“力一文字”の黒シャツを着た“力人衆”の男。


 巌を思わせるシルエットが黒シャツからも浮かび、白いトルクの“フロスト”による氷の拳を構えていた。


 ロックは彼らに向けて、全力で駆ける。


 ロックの周囲を囲む空気が、鎧となり、立ちはだかる者たちを弾き飛ばした。


 “電脳右翼(デンウヨ)”と“電脳左翼(デンサヨ)”の違いは関係ない。


 ()()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()()()()()()()


 些細な違いがあるとすれば、それだけだった。


 先を進んでいたサキと並ぶ。


 彼女の黒真珠の瞳に、ロックの獰猛な笑みが浮かんだ。


 それに呼応したサキの命導巧(ウェイル・ベオ):“フェイス”の蒼白い光が、彼女を包む。


 彼女の身体が浮かぶと、ロックは翼剣の“籠状護拳(バスケットヒルト)”構えた。


「あたし達の前に立つなら――」


「ぶっ飛ばす!!」


 空中に浮いたサキの右脚が、速さと重量の乗法の熱力(エネルギー)に、守護者二人の光を加え、“政市会”の男に向かう。


 ロックの右拳は、“政声隊”の氷の拳を構える大男に狙いを付けた。


 全ての粒子の流れが止まったような感覚を覚えるロック。


 動き出したと思ったら、ロックの右拳が“政声隊”の門番の左頬から砕いている。


 右のサキの飛び蹴りは、“政市会”の門番の胴に入っていた。


 刹那、二人の攻撃の衝撃(インパクト)が、空気を揺らす。


 その“ベクトル”に乗りながら、ロックとサキはドアを()()()()破壊した。

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© 2025 アイセル

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