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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第八章 Reckoning

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落とし前―③―

 ロックの右手で放り投げられる、巨漢で黒縁眼鏡のカンタ。


 その先にいるのは、黒いスーツを着た若い男が三人。


 いずれも、羊の頭蓋型“命導巧(ウェイル・ベオ)”が両腕から青白い光を両腕に宿している。


 突っ込んでくる半裸のカンタにむけ、その内の一人が青白い弾丸を発射した。


 宙に浮かぶ巨漢の背に当たった指向性熱力(エネルギー)弾が爆発し、青白い光が商店街の路地を照らした。


 ロックはカンタを盾に、“政市会”会員へ距離を詰める。


 意識を失っていたカンタの眼の色に輝きが戻り、全身から紫電を発した。


 雷の“物の怪”と化したカンタが、ロックと“政市会”会員の間で更に雷鳴を轟かせる。


 二人の間に、土瀝青(アスファルト)の擂鉢とイオン臭を残して消えていた。


 カンタは逃げたものの、彼の巨漢で視界を塞がれた“政市会”会員は、ロックの攻撃に出遅れる。


 二弾目の青白い弾丸が放たれようとした時には、ロックの右直拳撃(ストレート)が素早く男の左顎を抉っていた。


 顎への衝撃で意識を失う男の両眼に、ロックが映る。


 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()も。


 ロックの右肩まで到達する“政市会”の男に向け、彼は右後ろ回し蹴りで応戦。


 だが、男の()()()()()に眼を奪われる。


 男たちの両手に付けられた“スウィート・サクリファイス”とは別に、右手に黒い警棒が握られていた。


 把手の近くに、引き金が付いている。


――電磁警棒!?


 そう考えた時には、男の持つ警棒状のものがロックの右の靴底を叩いた。


「弟弟子!! 離れろ!!」


 姉弟子のリンカの声で、ロックは()()()()()()()()


 両手足に静電気が、駆け巡る。


――()()()()()()か!?


 痺れて行動を奪われたロックに、もう一人の警棒を持つ“政市会”会員の男が迫る。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 ロックは、咄嗟に後退を取る。


 しかし、二人目の警棒の男の踏み込みの方が速い。


 男の両眼が、紅い外套(コート)を纏うロックの脳天を見据える。


 ロックの右後ろ回し蹴りを逃れた男も、右手の警棒で追い打ちを仕掛けた。


――……“()”が入らない!?


 右拳に力が籠められないことに内心戸惑うロックに、一対の警棒が同時に振り下ろされた。


 しかし、二振りの棒から放たれる害意の風が唐突に消える。


「考えもなく走り過ぎ、()()()よ……?」


 ロックを背にして諭す口調の姉弟子――リンカ。


 両目元に施された星屑のメイクのように煌めく風が、ロックに吹いた。


 しかし、それを切り裂く閃刃がリンカと対峙する二人の男に一筋、疾走(はし)る。


 凜華の駆る大太刀による一振りが、男たちの警棒を()()()()にしていた。


「さて、“大和保存会”か“ホステル”か、定かじゃないけど……()()()()()()()()()()……」


 凜華が、真っ二つにされ、舗装された道路上に散らばった警棒状のものを目にして、溜息を吐く。


 その眼は、眼光の鋭さと内の忌々しさを隠そうとしない。


 しかし、“政市会”会員の二人も同じような目線を凜華に送る。


 特に、彼女の持つ“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()へ。


「そちら程じゃない……“イペタム”を手にした者がいるとは聞いていたが……まさか、“望楼(ヴェルヴェデーレ)”にいるとは……」


 二人の男の片割れが、凜華に答える。


「他の“()()()()()()()()()()、話が分かりそうだね……」


「なら、じっくり話と行きたいところだな?」


 二人の“政市会”会員の男、ロックと凜華の周囲に人が集まり始める。


 服装は背広もいれば、カジュアルもいる。


 男もいれば女もいて、世代を問わなかった。


「……無論、こちらに来ていただければ、だが?」


()()()()()()()()()()()()()()()は、()()()()()()!!」


 ロックを守る様に、凜華が前に出て、大太刀を構える。


 ロックに峰を見せ、刃が彼を覆う肩越し構え。


 彼女の剣気による牽制をしつつ、


「……ついでに言うと、()()()()()()()、どっちにしろ断る」


「……()()()()()()()()()()()()、お前と一緒はお断り」


 凜華の言葉にロックは、辟易して言った。


「それは置いといて、()()()()()?」


「……少しだが調子を取り戻してきたが……?」


 ロックは考えながら、右手に集中する。


 力が入ってきている感覚を覚えながら、“政市会”の持つ“スウィート・サクリファイス”以外の得物に目を向けた。


「……“微細機械(ナノマシン)”との繋がりが回復してきているが……」


「“芝打(しばうち)”……名前は修験道の剣を使った呪術から取られているけど、れっきとした……“UNTOLD”による武器で、“リア・ファイル”の機能を()()()()()()()()()


 イペタムという名の大太刀の刃の輝きを、相手に見せながら牽制する凜華が続ける。


「……どういうことって面だな、“弟弟子”?」


「アイツらの持っている得物までは知らなかった……だが、()()()()()()()()()()……」


 どこか勝ち誇った顔の姉弟子に、ロックは()()()()()()()被りを振りたかった。


 しかし、現実へ向き合うことを選び、


「“UNTOLD”に関連する“遺跡”……それを手にしたのは、“ワールド・シェパード社”や“政声隊”ばかりじゃなく……“政市会”――というよりは、“()()()()()()()()()()


 “遺跡”という施設が世界中にあるのなら、日本にもある。


 当然、それに“()()()()()()()()()()()()()()()()()


 まして、菅原の狙いが“真の民主主義”と“秩序”――それらをもたらす“天之御中主神アメノミナカヌシノカミ”の復活なら、“UNTOLD”に関する技術への造詣は――浅さや深さ――問わず、当然ある。


「……しかも、()()()()()()()()を真っ先に発掘して、隠し持っているとは、涙が出てくる……」


「私の胸で泣くか、弟弟子?」


 タンクトップを着ている凜華は、しっかり出ている胸の双丘を控えめに張ると、


()()()()()()()()……というのもあるけど、()()()()大丈夫だ」


 振り向いた凜華の眼が、呆れるロックを見据える。


 勝ち誇り、炎の様な煌きを確認した凜華が、


「じゃあ……()()()()だね!!」


「頼むぜ、()()()()()よ!!」


 ロックの声と共に、上空で爆音が響いた。

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© 2025 アイセル

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