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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第六章 St. Anger

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脱出―②―

4月11日 午後6時24分


「下がれ!!」


矛槍を構えた龍之助、鎌を得物としたサミュエルが、ロックの声に反応して、巨大甲冑から離れた。


ロックは、翼剣型”命導巧(ウェイル・ベオ)”から、半自動装填(セミオートマチック)式の拳銃型”命導巧(ウェイル・ベオ)”:”イニュエンド”を突き出す。


銃声が轟き、甲冑の巨人が炎に包まれた。


穴という穴に炎が入り込む。


暫くして甲冑の中を回りきったのか、穴から火柱が突き出た。


供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)”のサーモバリック爆弾が、甲冑の巨人を巨大な火達磨に変えた。


――マジかよ!?


“酸素喰い”と言われるサーモバリック爆弾による炎の蹂躙をしても、動じない5mの巨大甲冑にロックは内心舌打ちした。


火達磨から黄昏の空を爛々と照らした炎が立ち消える。


傷一つ負っていない巨大甲冑が、壊れた庁舎と夕焼けを背負い、ロック達を見下ろした。

甲冑の頭部に咲く、三輪の炎の華。


一平の”命導巧(ウェイル・ベオ)”:”ライオンハート”から放たれた、”疑似物理現象”、爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”による、可燃物、炎と助燃剤をまとめた攻撃が、崩れた庁舎の陰影に染まる、銀色の騎士甲冑を照らす。


「つうか、”ウィッカー・マン”って弱点とかないのかよ!?」


一平が叫びながら、”ライオンハート”の両拳に付けられた空の”弾倉(マガジン)を外して、新しいものに充填。


「だそうだけど、ロック、サキ……()()()()!?」


 ブルースからいきなり話題を振られ、ロックは舌打ちをしながら、


「それを攻撃するために、”供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)”。を放ったんだよ!!」


ロックの眼には、騎士型甲冑の胸部に大きな”熱の塊”が見えた。


 “ウィッカー・マン”は機械生命体である。


そして、()()()()()()()、動力源が無ければ動けない。


他の“命熱波(アナーシュト・ベハ)”と違い、ロックとサキは、その動力源が見える。


 二人はその経緯を探るが、それぞれ所属する“ブライトン・ロック”社と“ワールド・シェパード”社の両社とも、その解明には至っていない。


「見えるけど装甲が硬いから、貫きようがないのよ!」


 サキが”命導巧(ウェイル・ベオ)”:”フェイス”を、騎士甲冑の胴に向けて撃つ。


鶏冠(ガレア)の守護者――“ヴァージニア”が、サキの隣に現れ、手に光を宿した


 “フェイス”の片刃の切っ先から蒼い光が、ヴァージニアの光を受け結晶化。


蒼い(やじり)が飛び、甲冑の胸部で爆散する。


蒼白い光の雨が、甲冑巨人の全身を覆った。


『砕けろ!!』


 蒼く広がる光の前に、出現する短髪の少女――サキのもう一人の守護者――“ライラ”が吠えた。


 細身の剣と化した彼女の右手を、光の中で振るう。


 斬閃が巨大甲冑を覆う蒼い光の霧を震わせた。


振動で生まれた指向性熱力(エネルギー)の槍が、一斉に5mの巨大甲冑を貫く。


光の振動で伝わった熱力(エネルギー)が、甲冑の内から爆ぜた。


「だから、()()()()()()()()()()!!」


「いや、()()()()()()から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」


ロックはサキの仕事の早さに舌を巻きながら、内部からの爆発で立ち尽くす巨大甲冑に迫る。


駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)により、体中の神経を強化し、神速による移動。


 右逆手に構える“ブラック・クイーン”の籠状護拳(バスケットヒルト)による拳打を放った。


 巨大甲冑の頭部から、質量と力の乗法から来る反作用の力が、ロックの右腕に伝わる。


 反作用に応え、生じた作用の力により、巨大甲冑は吹っ飛んだ。


 ロックは順手に切り替え、巨大甲冑を追う。


 彼の背後を火球が過った。


 一平の“爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”による火炎榴弾が、ロックの攻撃を援護。


 巨大甲冑が、立ち上がろうとしたところに、その頭部と肩に炎の華が開花し、散華する。


 黄昏時の空を焼き尽くさん、炎の花々の下に沈もうとしていた。


「サミュエル、龍之助、決めるぞ!!」


「ブルース……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「応!!」


 サミュエルの抗議と龍之助の同意を背に、ブルースは二振りのショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”を腰に付けて、飛ぶ。


 音の力による揚力で、甲冑巨人の頭上を飛翔。


 甲冑巨人が、右手の鶏の嘴を突き出す。


 嘴から出た、光弾がブルースの背後を捉えた。


 二発がブルースを過り、三発目は、彼が腰に構えたショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”の交差斬りで防ぐ。


 ブルースが歯を食いしばりながら、その衝撃で“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を発動させた。


青白い光弾が破裂し、周囲を焼くほどの閃光が辺りに降り注ぐ。


 甲冑巨人がその衝撃を防ぐために左手も上げたため、胴を晒した。


 サミュエルの“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“パラダイス”の鎌を畳んで出した散弾銃(ショットガン)の銃口が、金色の一擲を放つ。


 龍之助は、サミュエルの(はす)向かいに立つ形で、“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”の蒼い矛槍からの“蒼海の翼スキアハン・ナ・マラ・ゴラマ”による”加圧水流(ウォータージェット)”が、サミュエルの金色の礫の命中に続いた。


 二人の集中攻撃が、甲冑巨人の胸部装甲を抉る。


 引き剥がされた胸部装甲の内にあるのは、青銅色の球体だった。


 青銅色の球体が輝くと、


「まさか……()()()()()!? みんな逃げて!! これは、()()()()()()!!」


 シャロンが叫び、滑輪板(スケートボード)で後退した。


 地上に降り立ったブルースが、腰に一対のショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”を収める。


 ロックも彼の隣に並び、


「サキ、一平、龍之助、後ろに来い!!」


 言われた三人は甲冑巨人から離れ、ロックとブルースの背後に回る。


 ロックは、ブルースと共に右手を突き出した。


 青銅色の球体から放たれた閃光が、ロックの眼前に広がる。


 右腕に衝撃が走り、全身を揺るがした。


「堪えろ、ロック!!」


「分かってる、ブルース!!」


 ロックの出した“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を、隣のブルースも展開。


 二重の結界が、破壊の光を受け止める。


 遅れて、爆発音と破砕音の二重奏がロック達を襲った。


 衝撃波によって後退り、光が消えていく。


「これは……一体……!?」


 龍之助が息を呑む。


「ロックとサキの見た光は弱点じゃない……熱源は、むしろ障壁(バリア)にして、蓄積した損傷(ダメージ)熱力(エネルギー)にしたもの。そして、それが放出されたのが……」


 シャロンの視線が、()()()()()()()()()()庁舎、駐車場に置いてあった車に舗装された路地に向けられる。


 その爆心地(グラウンド・ゼロ)に立つ、甲冑巨人。


 剥がれた胸部装甲の内に秘められた、青銅色の球体が割れる。


 そこから出てきたのは、()()()()()()()()()()()人間。


 肩と鎖骨を外に晒した人間は女性だが、茶色に染まった頭髪を()()()()()()()()()まで切り揃えていた。


 ロックの隣にいたサキと一平が、その女性を見て、眼を見開いた。


 龍之助も戸惑いながら、その女性の名を絞り出す。


()()()の、()()……()()だと!?」

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© 2025 アイセル

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