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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第五章 Face/Off

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対峙―⑪―

 一平の左拳にはめた“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ライオンハート”の軽拳撃(ジャブ)が、原田 龍之助の持つ矛槍型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”矛先を包む水の刃を弾き飛ばす。


拳の勢いに押された龍之助が大きく仰け反った。


一平は右足を大きく踏み込み、右直拳撃(ストレート)を龍之助に放つ。


蒼く輝く右眼を中心に、顔と右手が同色に染まっていた。


しかし、一平の目の前で、陽炎となる。


一平は右腕を上げた。


龍之助の右脚の踵の槌が、一平の右腕に食い込む。


右腕の骨を揺らすほどの一撃に、腕越しの衝撃に一平の脳が揺れた。


足が崩れそうになるが、一平は右踵を地面に踏みつける。


歯を食いしばった一平の表情が、龍之助の右眼に宿った。


蒼く輝く龍之助の顔の右半分に、一平の全身が映る。


「龍之助……お前が、アイってやつのために戦っているのは分かる。そして、俺やサキ達も巻き込みたくないがためなのも分かってる。あんな、良い奴らを演じたい暇人に付き合うのは、お前のカラーじゃない」


 一平が“ライオンハート”を前に構えながら、龍之助に歩み寄る。


「一平……分かっているなら、頼む。引いてくれ!! これは、()()()()だ。()()()()()()()()()()()()()!!」


 一平はその言葉を聞いたとき、身体中の発条(ばね)が収縮したように覚えた。


 身体中に熱力(エネルギー)が蓄えられる。


一平はその放出を感じた時には、既に龍之助の懐に入り込んだ。


龍之助が吹っ飛んだのを見届けると、一平はそれが自分の右直拳撃(ストレート)によるものだと気付く。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 一平は、市役所の壁で蹲る龍之助の首元を右手で掴もうとする。


 しかし、龍之助の持つ矛槍“セオリー・オブ・ア・デッドマン”の蒼い穂先が、一平を拒んだ。


 扇形の軌跡を刻む穂先を避けると、龍之助が跳ね起きる。


 矛槍型“命導巧(ウェイル・ベオ)”の刺突を、一平に繰り出した。


 一平は、刺突を一つずつ見極め、回避。


 その際に間合いを離してしまい、龍之助が更に離れる。


 龍之助の“セオリー・オブ・ア・デッドマン”の穂先が、蒼く輝いた。


 一平が冷気を感じ取ると、“セオリー・オブ・ア・デッドマン”の穂先から蒼い弾丸が放たれる。


 その数は、三発。


 一平はその一つずつを、“爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”の炎弾で迎撃する。


 “疑似物理現象”から生まれた炎と水と言う、熱力(エネルギー)の塊が二人の間で爆ぜた。

 

一平の眼前を、熱気と水蒸気の幕が覆う。


 それを蒼い槍が切り裂き、穂先が一平に迫った。


 一平は気合を入れながら、“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を発動。


 水に包まれた龍之助の槍の一撃が、一平の鼻先で止まる。


 龍之助が戸惑うと、一平は左腕で槍の一撃をいなした。


 懐が空いた龍之助に、不可視の衝撃と爆轟が襲う。


爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェ”による、爆轟による衝撃に包まれた拳打を一平は龍之助に叩き込んだ。


「テメェの眼――“命導巧(ウェイル・ベオ)”――が原因で……俺たちに、危険が降りかかるかもしれないと考えた。だから、離れたんだろ?」


一平が距離を詰め、龍之助の襟首を右手で掴む。


「それなのに……お前が“眼”について、()()()()()()()()()()()()()()、友達じゃないと言ってしまった!!」


一平の右手を振り払った龍之助は、彼の腕の間合いから更に離れようとする。


「悔しかったんだよ……俺、“白光事件”で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいで!!」


 しかし、一平は龍之助との距離を縮める。


「テメェの問題……それは()()()()()()()。だがな……()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()()()()!! ()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()……だから、()()()()()()()()()()()!?」


一平の左腕による裏拳が、龍之助の槍型命導巧(ウェイル・ベオ)セオリー・オブ・デッドマンを吹き飛ばす。


徒手空拳となった龍之助。


ただ、呆然とした龍之助の蒼い右眼の中に、口の端を緩めた一平の顔が映った。


しかし、龍之助の眼が強張る。


「一平、離れろ!!」


 龍之助の叫びと共に、アイと言う“赤い少女”も苦しみ始めた。


「どうした、龍之助!!」


「一平、()()()()()()()()()()()()()!!」


 シャロンと言う少女の一言で、一平は即座に下がった。


 “セオリー・オブ・ア・デッドマン”を手放した龍之助の腕が、白いシャツの右袖を引きちぎって肥大。


 ()()()()を帯びて、蒼い右半身の中で脈動していた。


 龍之助の右半身に映る、薄桃色のスーツに包まれた三条の顔。


 彼女の顔が、口の両端まで吊り上がっていた。


「その腕……“へルター・スケルター”に支配されつつあるのか!?」


 ロックが“白い少女”のレンの右腕から放たれた、青白い波動による攻撃を翼剣で防ぐ。


「『“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()……』でしたか?」


 悠然としたたたずまいで、三条は言う。


「……では、()()()()()()()()()()()()()()のでしょう? “ウィッカー・マン”の大群で圧倒しなくても、()() ()()()は私の手中であることは変わらない……()()()()()!!」


 三条の歓喜の声と共に、龍之助の右腕が上がる。


右半身と右の顔が蒼く染まり、


「なんだ……これ?」


 一平は、青白い光が自分から出ているのに気付いた。


「一平、離れろ!! お前の“命熱波(アナーシュト・ベハ)”が吸い取られているんだ!!」


 ブルースが一平に叫ぶと、更に舌打ち。


 一平だけではない。


 ブルース、サミュエル、ロックにサキからも青白い光の糸が、龍之助に収束されていった。


「“アイレーネー”の力……“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”は“命熱波(アナーシュト・ベハ)”を()()()()()ささえられる。なら、それを使って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と考えられませんか?」


 恍惚に染まる三条の眼が、龍之助の悶え苦しむ姿を捉える。


「これぞ、()()()()!! “アイレーネー”、あなたの渇きや欲望が手に取るようにわかるわ!!」


 三条の声はさらに甲高さを増す。


 その喜びは至上のものなのか、両腕で彼女自身を抱き、身もだえていた。


 しかし、三条の愉悦を冷静に見つめる眼が一対。


「一平、諦めないで!!」


 三条を見つめるサキの眼が一平を映す。


 彼は、顔を真っ青にしていたが、サキの一言で血色が戻る。


 サキは左手に片刃と軽機関銃を合わせた“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”を持ち替えた。


 彼女は右手をアイとレンに向けて、突き出す。


 それから、アイとレンから蒼白い陽炎が出た。


『……あれ、なにこれ、力が入らない!!』


 アイが戸惑い始めると、龍之助の身体に変化が生じる。


「――!? これは……?」


 驚いたのは三条の方だった。


 三条が掌握していたと思いこんでいた、龍之助。


 彼が立ち上がりはじめる。


「そんな……()()()命熱波(アナーシュト・ベハ)”……それに耐えられる筈は!!」


 大きな熱力(エネルギー)の流出入を三条に委ねられていた。


 それは、彼女の鶴の一声で、自滅をさせることも可能。


 一平はそう理解していて、皆もそうだと確信していた。


 しかし、()()()()()()()


 サキの覆った蒼白い光が、レンという“白い少女”にも変化を与え始めた。


 こちらは、不快感を表し、サキに飛び掛かる。


 サキに、レンの青白い右の手刀が迫った。


 しかし、ロックの順手から翼剣を振り下ろす。


レンの右肩から左腰まで、紅黒い軌跡が大きく一筋入った。

 

龍之助の蒼い眼が捉える。


そして、戸惑う龍之助を他所に、彼の蒼い右腕が、サキに狙いを定めた。


しかし、龍之助はサキに届かない。


「一平、龍之助に取り憑いた“()()()()()()()()()”を追い出して!!」


「サキ、任されたぜ!!」


 サキと龍之助の間に入った一平。


 彼は呼吸を整え、左腰を精一杯引く。


 押し出された右直拳打(ストレート)が、龍之助の前で止まる。


 不可視の壁に遮られたかと思ったら、不可視の衝撃に龍之助の身体が大きく揺れた。


 青白い奔流が龍之助の背後からあふれ出る。


 奔流はやがて、青白い人型を作り出した。


 顔の一対のくぼみは眼だろうか。


 大きな青白い人型の何かは、ロックとサキを見ながら消えていった。


 そして、一平の前で龍之助の膝が崩れる。


 右眼は蒼いが、右手と半身を染めた蒼色の部分はすっかり消えていた。


 ぼろぼろとなったシャツは、わずらわしさを覚えたのか、龍之助は脱ぎ捨てる。


「一平……」


 龍之助が半裸でため息を吐きながら、一平を見上げ


「認めると言って、()()()()()()()()()()()()()()()()”だと……全く、無茶苦茶な“()()”だよ」


 その顔に強張った者はなく、鋭さを残しつつ柔らかい眼に映る一平は、


「サキ、アカリにキョウコも心配してんだよ。もう失いたくないからな。無茶苦茶にもなるさ」


 一平と龍之助が、笑い合う。


 しかし、二人の笑顔は長く続かなかった。


 唐突に表れた土煙。


 そして、耳をつんざく騒音と衝撃が、一平と龍之助を覆った。


 ロック達の姿が土煙で見えない。


 しかし、衝撃の爆心地(グラウンド・ゼロ)》に立つ影を、一平は見る。


 それは、5mの高さの()()()()だった。

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© 2025 アイセル

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