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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第五章 Face/Off

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対峙―⑩―

 ロックはブルースの言葉を反芻し、その意味に気づいた。


「ロック、どういうこと?」


 サキが聞き返すと、


「サキ、考えろ……三条の言うような()()()()()()()()()()()()()()()、今、この場で使われている……それこそ、前に県境で戦った“ウィッカー・マン”を()()()()()()()()()()()()()()()


 隣にいるサキは、ロックとブルースの言ったことに合点がいったようだ。


「出来ないのは簡単だ……すぐに使えないからだ。“天之御中主神アメノミナカヌシノカミ”、“へルター・スケルター”、“平和の神(アイレーネー)”と、()()()()()()()()()()()()()()()()()、な?」


 ロックの舌鋒は、研ぎ澄まされていく。


「なぜ使われないか、答えは簡単だ……“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()……じゃねぇのか、三条?」


 ロックの突きつけた内容に、三条は眼を微かに動かした。


「つまり、レンという“白い少女”とアイと言う“赤い少女”が、龍之助を通じて干渉しているなら、具現化されている()()()()()()()()()()


 アイが、”命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ブラック・クイーン”を逆手で構えるロックを睨みつける。


 レンの周りに青白い光が集い始める。


 それは、“政市会”会員ばかりでなく、“政声隊”――“力人衆”、S.P.E.A.R.(スピア)も含めて――からも吸い取られていた。


 吸い取られた者は、力が抜けていったのか、その場で崩れていく。


 しかし、S.P.E.A.R.(スピア)の秋津だけが立っていた。


彼女は青白い光に覆われていない。


 よく見ると、彼女はトルクをしていなかった。


三条が溜息を吐いて、


「……それがどういうことか、わかっていますか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


一平が息をのむ。


 具現化をさせているのが、龍之助の眼に移植された“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”が大元である。


それは、龍之助と一体化している“命導巧(ウェイル・ベオ)”を、破壊することだ。


同時に言えば、龍之助も無傷では済まない。


そして、彼が龍之助と目線を交錯させた。


 龍之助の蒼く染まる右の顔と、爬虫類を思わせる鱗の様な右手の輝きは、命の炎を思わせる。


「テメェ……馬鹿か?」


 一平が、三条の攻撃に使った炎の残り火を眼に浮かべながら、


「龍之助は……強い、()()()()()()()()()()()()()()!!」


 両腕の“ライオンハート”を構え、龍之助にその銃口を向ける。


「一平、大丈夫……()()()()()()()()()()()()()()()()()


 サキが凛とした笑顔で応える。


命導巧(ウェイル・ベオ)”:“フェイス”の片刃が、蒼白く煌いた。


「ロック、サキ!! 一平を龍之助まで、連れていけ!! 残りは――」


 ブルースが一対の半月に反った刀――ショーテル――の形をした“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”を三条に向けて言うが、その言葉は雷鳴に遮られる。


 三条を覆う大きな両腕から放たれた雷が、ロック、サキに一平に狙いを付けた。


 しかし、ロックの眼の前を砂塵が雷霆と激突。


「ブルース、ぼーっとしない!!」


 サミュエルが“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“パラダイス”の鎌から作った砂嵐で、ロック達を守る。


 砂嵐が雷鳴を包み込むと、サミュエルはそれを三条の正面に解き放った。


 雷鳴と砂嵐による蹂躙を背後に、ロックは正面の“白い少女”――レン――に右の逆手で“ブラック・クイーン”を斬り上げる。


 紅黒の翼が、レンの前で爆炎となり炸裂。


 しかし、レンの前で白い服を照らすだけに留める。


 青白い“命熱波(アナーシュト・ベハ)”が“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”となり、ロックの紅黒の斬撃を防いだ。


 ロックの眼前で、レンが白い腕を上空に上げる。


青白い光が波飛沫を作り、ロックの前で爆ぜた。


ロックは衝撃で一歩、後退させられる。


しかし、熱波がロックの眼前を舐めた。


ロックは翼剣“ブラック・クイーン”を突き出し、“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を展開。


眼前に迫る炎をかき消した。


炎の出所は、アイと言う龍之助の側にいる少女。


「傷つけさせない……レンは、絶対に!!」


 アイが叫ぶと、炎の弾が彼女の周りを囲む。


 炎弾が三つ、放たれた。


 だが、()()()()()()()


 蒼白い弾丸が、ロックの横を飛び、炎をかき消した。


「ロック、大丈夫!?」


 サキが言うと、“フェイス”の銃口から蒼白い光弾を放つ。


 レンとアイの二人に向かった弾丸。


 それが眼前で炸裂し、蒼白い光が二人を包む。


『……これは!?』


 赤い少女――アイ――が、戸惑って声を上げた。


 ロックは、“ブラック・クイーン”の柄から半自動装填(セミオートマチック)式拳銃――“イニュエンド”――を取り出し、レンとアイを撃つ。


 雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフがそれぞれに命中し、電影を歪ませた。


()()()()()()()()()()()、もしかして……と思って!!」


 サキがロックの隣で、得意げに言った。


 サキと再会した時の夜、ロックは龍之助の展開した“愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”により、“命導巧(ウェイル・ベオ)”が全て使えなかった。


 しかし、サキは()()()()()()()()使えた。


 あの夜、ロックはそれから三条に“命熱波(アナーシュト・ベハ)”による攻撃を行えたのを思い出す。


 しかし、氷柱がロックとサキの間を貫いた。


 振り返ると、三条の()()()()()()からと分かる。


 彼女の顔が炎の印影で、微かに彫を刻んでいた。


それが、更に二撃、三撃とロックとサキに襲い掛かるが、


「余所見厳禁!!」


 桃色の風――“滑輪板(スケートボード)”に乗ったシャロン――が氷柱の噴進爆弾(ミサイル)の前に躍り出る。


 それから、細長いものが現れ、一本ずつ叩き落していった。


 細い長い何かは、銀鏡色の(うなぎ)となる。


それが槍となって、三条に向かった。


 大きな両手から、炎に染まる方陣が彼女の前に現れる。


 しかし、彼女はそれを出さず、後退。


シャロンからの銀鏡色の槍が、三条のいた足元を抉った。


やり過ごした三条は右掌を突き出す。


磁向防スキーアフ・ヴェイクター”が、展開され、三条の前に波紋が揺れた。


「ロック、サキ!! お前らは、一平の援護だ!! 三条は俺たちが食い止める!!」


 ブルースが叫びながら、ショーテル型“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ヘヴンズ・ドライヴ”を交差させる。


三条の華奢な両肩に刻まれる袈裟切り。


しかし、苔緑の斬閃の奔流が、三条の眼の前で止まった。


「……しばらく会わない間に、太刀筋が鈍りましたね……ブルース……!?」


 三条の顔が微かに強張る。


 金色の鎌の斬閃が、三条の頭上に振り下ろされた。


 鎌の担い手、サミュエルが上空から強襲。


 “磁向防スキーアフ・ヴェイクター”で、サミュエルとブルースの攻撃を防ぐ三条。


 斥力で、二人から離れて、三条は距離を稼ぐ。


 しかし、シャロンの”滑輪板(スケートボード)”による体当たりが、三条を休ませない。


 ロックは三人の戦いに目を向けていたが、炎の熱気と氷の冷気を感じ取る。


 “命熱波(アナーシュト・ベハ)”として現界した“アイ”と“レン”が、攻撃の矛先をロックに向けていた。


「ロック……()()()()……()()()()()()()()()()()()?」


 サキに言われ、ロックは声出さずに頷き、


「カバーする……一平に水を差さないようにしないとな!!」

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© 2025 アイセル

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