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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第五章 Face/Off

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対峙―⑨―

 ロックは驚き、周囲を見渡す。


「もしかして……ロック、()()?」


 サキが話しかけてくる。


 しかし、周囲はその内容に首を傾げた。


 ブルースは眉をひそめる。


「そんな……無粋な名前で呼ぶとは」


 三条が心外と言わんばかりに、大きく呟き、


「“アイレーネー”……平和をもたらす存在として、相応しいものはないでしょう?」


「バカ言え、こんなに死人を出しておいて、平和もクソもあるか!」


 ロックは、三条に“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ブラック・クイーン”を構える。


「……ロック=ハイロウズ、コスタリカと言う国をご存じですか?」


 三条に言われて、中央アメリカの国のことを思い出す。


 だが、()()()()()()()()()()()()()()が見えないことに戸惑うと、


「確か、“常設軍”を持たない国だな」


 一平が躍り出て言う。

 冷静な口調だが、“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ライオンハート”の銃口からは炎が煌いていた。


「ご名答です……あなたは意外と頭が良いですね」


 三条はそんな一平の炎など見えてないかのように、続ける。


「では、持たないけど『()()()()()()()()』というのは?」


 三条の言葉に一平もそこで言葉を出さない。


 というよりは、その内容に戸惑い、出すべき言葉が言葉にならないようだった。


「……コスタリカの憲法として、軍隊を明記しないという意味では日本と似ていますが、明確な違いは……()()()()()()()()()()()()()です」


 三条の言い回しはどこか、どこかの歌劇(オペラ)歌手を思わせる。


 直立不動の彼女を覆う両腕が、彼女の内なる情熱を表している様に動いていた。


 龍之助と“赤い少女”――アイと彼が言っていた――は苦しみと共に、目の前のレンと言う名の“白い少女”と対峙している。


 黒いシャツの“力人衆”――“政声隊”の荒事専門集団――は“コーリング・フロム・ヘヴン”のトルクから出る人型を待機させつつ、アイとレンという少女の出現に戸惑っていた。


 “政声隊”については、三条の背後にいたメンバー達――10代の若者たち中心のS.P.E.A.R(スピア)の代表の秋津 澄香を含めて――も、二人の少女の乱入という状況を上手く受けれられていない。


 三条の攻撃に巻き込まれた“政声隊”――または、エヴァンスの攻撃の煽りを受けた“政市会”――のメンバーは、薄紫色の牙ヴァイオレット・ファングによる応急処置を受け、アイ、レンと三条から離れた場所にいた。


 応急処置を受けた者は、それぞれ、頭部、腕部に脚部に包帯を巻かれている。


 殆どが成人で、薄紫色の牙ヴァイオレット・ファングの装備――榴弾発射機(グレネードランチャー)付の携帯型騎兵銃(アサルトカービン)――くらいしか無いにも関わらず、包帯は全員に行き届いている。


 ロックが疑問に思っていると、見つけたのが、駐車場で破壊された職員の車に割れた庁舎の硝子。


 もしかしたら、戦闘の間に足りない救急道具を拝借したのかもしれない。


 しかし、薄紫色の牙ヴァイオレット・ファングのバラクラバも焦げ目が目立ち、薄紫色のシャツや黒いパンツスーツから生傷が微かに見える。


 拝借したモノの他に、()()()()使()()()()()、バラクラバから見える凛とした彼女の眼は疲れが見え隠れしていた。


 “政市会”側も、二人の少女の出方を見ている。


 “エヴァンス”は()()()()()()()()()()()()()()()()、意気消沈していた。


 レンは、()()()()()()()()()()を取り返し、満足したのか視線をアイに戻している。


 その間に、オーツと“政市会”会員の男を脅し、一緒に蹲ったエヴァンスをその場から動かした。


 そして、離れた場所で鍛冶と一緒に、エヴァンスは眼に涙を溜めながら、二人の少女の対峙を見ている。


 “政市会”の堀川も共に。


「……待って、()()()()()()()()()()()()()……そんなのあるの?」


 サミュエルが三条に食って掛かる。


「そもそも、現在の国際情勢って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃない……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ロシア(柔道バカ)中国(くまのプーさん)辺りでも、戦争なんて馬鹿な真似しないのに?」


 薄桃色のパンツスーツを纏った三条は、その眼に映るサミュエルに首をかしげる。


「……サミュエル、あるぜ」


 ブルースが首を振って言う。


()()()()()……戦争に限らず、暴動や地震のような災害など()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。憲法は、刑法や契約法のような個別の事案の法律というよりは、()()()()()だからな」


「その通りです……可もなく不可もなし、ですね……ブルース=バルト」


 三条が肩をすくめて言うと、


「でも……ブルース。()()()()()()()()として、じゃあ()()()()()()()()()は何処になるんだよ?」


 一平の疑問に、サキがはっとして答える。


「……一平、軍隊だよ……()()()()()()()()()()()()が、確かコスタリカで認められていた」


 サキの言葉に、一平が驚いた。


「“()()()”か……お前等“政声隊”のような“|小難しい市民《ソーシャル・ジャスティス・ウォリアーズども》”が好きそうなやつだな……()()()()()()()()()()()()()()だ」


 ロックは吐き捨てる。


「しかし、日本国憲法はどの国家の硬性憲法とは到底相容れられない、()()()()()()――所謂、“9条”――を掲げていたはずだ。加えて、徴兵制と言うよりは“()()()”で、訓練のない市民の入る余地がない……つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()筈だが?」


 三条を問い詰めるが、ロックは自分の言葉に違和感を抱いた。


 三条の薄い笑みが、苦虫を嚙み潰したようなロックの顔を映す。


「クソが……今の世界情勢で言う()()()()()()()()()()……“ワールド・シェパード社”と“ウィッカー・マン”を始めとした“U()N()T()O()L()D()()()()()()()()()9()()()()()()()()()()()()


 ロックの言葉に、サキの顔が蒼白になった。


 一平は驚愕し、サミュエルとシャロンの二人はため息を吐いた。


 後者の二人は、三条の言葉にあまり驚かなかった――というよりは、予測仕切っていたように見える。


「……ブルース、そりゃ……()()()()や“()()()()()”も“UNTOLD”を欲しがるワケだな!! 9条に関して言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 ブルースがロックの言葉に神妙な顔で頷いた。


「分かっていただけたようですね」


 三条の表情から感情は見えないが、声からは安堵が伝わる。


「“アイレーネー”……平和をもたらし、そして()()()()()……無論。この国を!!」


 三条が恍惚な顔を晒すが、


「三条、そんなに出した方が良い存在なら、何故初めから使わない?」


 ブルースの言葉に、三条の顔から恍惚の顔が消えた。

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© 2025 アイセル

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