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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第四章 Cog by cog

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歯車は嚙み合う―⑧―

 ロック、一平とエヴァンスの間に散った銀の雫が火元となり、二人を遮った。


「ちょ、ま……って、熱ッ!!」


 炎の熱さに戸惑う一平。


 ロックは“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”を発生。


 発火しかけた銀の雫を“ブラック・クイーン”から弾き飛ばし、炎を爆散させた。


 “ザ・ネーム・オブ・ザ・ゲーム”。


 ダグラスの持つ、“獅子の頭蓋の右手甲”と“蜂の針を模した左手甲”の一対で成る“命導巧(ウェイル・ベオ)”。


 主な特徴としては、粉末アルミニウムと酸化鉄の混合物と“リア・ファイル”を併せた“銀色の雫”というナノ粒子ジェル――“銀の血蜜トーヴ・アルギッド・スアス”――を攻撃の際に散布し発火させる。


 そして、爆散した炎を煙幕にしてロックへ迫るダグラス。


 彼の左腕の針がロックの顔を捉える。


 ロックは右手の“ブラック・クイーン”の籠状護拳(バスケットヒルト)で、針の一撃を受け止めた。


 針の一撃が籠状護拳(バスケットヒルト)の表面を滑ると、ロックはダグラスの伸びた左腕に右肘を振り落とす。


 ダグラスの左の剛腕が下り、首から胴が開けた。


 ロックは、ダグラスの懐に入り込み、顎に目掛けて頭突きを放った。


 ダグラスは、ロックの攻撃に大きくのけぞる。


 ロックは“ブラック・クイーン”の籠状護拳(バスケットヒルト)越しの右拳打で、ダグラスの左頬をぶち抜いた。


 そして、ロックは左の鉤拳打(フック)で“ファーの大男”の(チン)を狙う。


 しかし、ダグラスはその攻撃を立って堪えた。


 損傷(ダメージ)を負いつつも、ダグラスは地に足を付ける。


ロックは順手に持ち替えた“ブラック・クイーン”で右から左斜め下へ、ダグラスを斬った。


衝撃で後退さるダグラスに寸暇を与えず、逆手に持ち替えた“ブラック・クイーン”で胴を左から斬り上げる。


ダグラスは、反撃として右腕に“銀の血蜜トーヴ・アルギッド・スアス”を発生させた。


だが、ロックは“銀色の雫”で強化した拳打を許さない。


斬り上げた斬撃による勢いを維持しながら、再度順手に切り替え、右袈裟斬りをダグラスに放った。


ダグラスも“命熱波(アナーシュト・ベハ)”使いとして、“磁向防スキーアフ・ヴェイクター”でロックの連撃を防いだのだろう。


しかし、斬撃を防ぎ切ったのと引き換えに、その衝撃をまともに受けたが故に、頑健な足腰が大きく揺れていた。


駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)”。


神経強化を行う“疑似物理現象”で、ロックの瞬間速度を高める。


 神速の移動と共に、神速の斬撃をダグラスに放ったのだ。


「なかなか、大胆じゃないか……“スパイニー”?」


 ロックの頭突きで、鼻血と歯を垂らすダグラス。


「おいおい、()()()()()()()()()を持ちながら、ずいぶんと……()()()()()()()()()()()()()?」


 ロックの不敵な笑みに、ダグラスは血化粧から怪訝な顔を示すが、


「これから、テメェを()()()()()()()()()()()()()()()()()()を後悔させてやるんだからな!!」


 ロックの嚇怒に満ちた月夜の湖畔色の眼が、ダグラスの両眼を支配する。


 ダグラスに映るロックの眼には、ダグラスの放った炎が怒りとして表れているようだった。


 ロックは、怒りに震える自らの像に呼応するように、ダグラスへ向かう。


 ダグラスも動き、ロックの振り上げた右拳に合わせて、自らの右拳を振りかぶった。


 ロックの右手の“ブラック・クイーン”の紅黒の刃が籠状護拳(バスケットヒルト)から伸びる。


 ダグラスは銀色の雫を、“ザ・ネーム・オブ・ザ・ゲーム”から溢れさせた。


 紅黒の一振りに対して、銀色の奔流がダグラスを守る。


 銀色の奔流が、反り立った刃を作り、ロックの一振りを弾いた。


 二つの刃の交錯が煌く。


 刃の表面が、ロックの向こう側の炎の壁を映した。


 刹那、鏡像の炎が()()()


 弾けた炎から吹き飛んできたのは、エヴァンスだった。


 狼狽した声を出すエヴァンス。


 彼女が炎から離れる。


しかし、()()()()()が白いハーフコートの刺客を追いかける。


エヴァンスを追い詰めるのは、一平だった。


爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェによる爆轟の進撃が、エヴァンスのナノリボンで強化された足技を跳ねのけている。


エヴァンスは、一平の爆轟の突進に吹き飛んだ。


膝を地につけその顔には、悔しさと疲労が宿る。


 一平が好機と捉え、エヴァンスに右拳を振りかぶった。


 しかし、一平とエヴァンスに割り込む人影。


 それは、二つとなり一平に襲い掛かる。


「――テメェら!?」


 一平が驚いたのは、二つの人影。


 それは、ダグラスとエヴァンスに付いてきた、二人の男性“政市会”会員だった。


 彼らの四肢から、静電気が弾けている。


 その痛みに、彼らの顔に苦悶が宿っていた。


「……助け……て……」


「みんな、焼か……れ……て……」


 一平はエヴァンスへの追撃を止める。


 ただ、自由を奪われた苦痛に喘ぐ、二人の“政市会”会員からの“スウィート・サクリファイス”の射撃が放たれた。

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© 2025 アイセル

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