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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第四章 Cog by cog

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歯車は噛み合う―⑦―

「炎を使うのか……」


「……ただの炎じゃない」


 冷や汗を拭いながら言う一平に、ロックは否定する。


「粉末アルミニウムと酸化鉄のテルミット反応だが……」


「花火の弾ける音で有名な、あれかよ?」


 ロックは一平の疑問に首を横に振り、


「それは、あくまで一般的な粉末だが()()()()になると、話が変わってくる」


 ロックと一平の視線に、炎の海を作り出したダグラスが気付いた。


 彼は両手を開き、炎の熱を愉しんでいる様を二人に見せつけている。


「ナノ粒子化されていると、表面積対体積比が大きいから、燃焼速度が速い。掠っただけでも燃焼するから、()()()()()()()()()()()()()()


 ロックは“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ブラック・クイーン”を右手に持つ。


 一平が、ロックに合わせて、“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ライオンハート”を構えた。


「アタシを忘れていないー!?」


 上空からの上機嫌ともいえる上擦った声に、一平が“ライオンハート”で対空射撃を行った。


 爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイによる、火球は声の主のエヴァンスを捉える。


 エヴァンスの靴から生えた刃が、火球を食らう。


「弾いた!?」


 隣の一平が愕然とする。


 エヴァンスの靴だけではない。


 両足を中心に、雷鳴が蔦の様に這い、彼女の肢体を包み込む。


「エヴァンスの“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ダンシング・クイーン”……元々は、脳波によって可変する靴の刃が武器だったが……」


 ロックの言葉が詰まり、


「“スパイニー”、素直に言っちゃいなよ……()()()()()()()()()()()()()ってね!!」


 降り立ったエヴァンスの言葉に、一平が戸惑い、


「でも、あいつ、両脚が!?」


「……()()()()()()()()、“リア・ファイル”が()()()()()()()()()()()()()()()”の塊だ!!」


 エヴァンスの脚を構成するナノマテリアルとしては、強度が2cm以上あり、かつ軽量の防弾ベストだろう。


 そんな素材として候補に挙がるのが、エポキシ母材にケイ素と酸化チタンのナノ粒子、二酸化ケイ素のナノ粒子を混入したポリマー、プラスチックよりも軽量かつ100倍もの強靭さを持つカーボンナノチューブだろうか。


「ロック……お前の言っていることは、『あいつの脚は現段階で()()()()()()()()()()()()()()()()()』って、聞こえるんだけど!?」


「一平、その通りだ。オマケを付けるなら、ナノリボンという重量と熱に強い、炭素一個分の厚みを持つグラフェンを細長くして、銅の約100倍の電気負荷に耐えられるモノも両脚に組み込まれている!」


 ロックの右隣りの一平から言葉が消える。


「そうよ、“スパイニー”!! でも、あと一つ加えることがあるなら、私たち“スコット決死隊”……その“()()()()()()”の()()()()()によって、生かされているってことだけど」


「こいつら、それじゃ……」


 エヴァンスの言葉に戸惑う一平に答えるのは、ロックではなかった。


「そうさ、まともな“死に方”が出来ないんだよ、()()()は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()によって()()()()()()()んだよね!!」


 ロックの隣の一平は、顔を蒼白にしている。


 一平の世界における“UNTOLD”は、せいぜい喧嘩沙汰しかないのだろう。


 同時に言えば、ロックの一平の勝ち方。


 その恐ろしさの片鱗を垣間見たに違いない。


「だから……一平……」


「逃げねぇよ」


 ロックの言葉に、一平がぴしゃりと言う。


「周りを見て思うんだけど、放っておいたら?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうな」


 一平の言葉に、ロックは近未来を予測して言った。


「実質、“スコット決死隊(アイツら)”は人の形をした“()()()()()()()()”だ」


「なら、俺たちの“命導巧(ウェイル・ベオ)”でどうにかしないといけねぇな」


 ロックの断定口調に、一平は“ライオンハート”を構えた。


――……“ベネディクトゥス”、人を見る目だけは確かだ。


 よく考えれば、()()()()()()なら一平は、“スコット決死隊”と同類でしかない。


 ロックは肩をすくめて、“ブラック・クイーン”を逆手に構える。


 どんなに呆れた顔をしているかと考えたが、ダグラスの青白い眼の中のロックは不敵な笑みを浮かべていた。


「……“スパイニー”、あんたの眼付……すごいムカつくわね」


「エヴァンス、腹が立ちはしないが少し……物足りないな」


 猫科を思わせる目付きのエヴァンスに、ダグラスは考え込む。


「そうだ……()()()が足りないな、エヴァンス!!」


「じゃあ……彼に()()()()を与えるために……」


 二人の目付きが、彼らに付いてきた二人の“政市会”会員に向いた。


()()()()()()()()言いながら、他所見してんじゃねぇよ……()()()()?」


 ロックは予備動作なし(ノー・モーション)で、ダグラスの顔面に籠状護拳(バスケットヒルト)越しの右拳打を放った。


 ロックの声に、張った顎で歪んだ笑みを浮かべたダグラス。


 ダグラスは、反撃で左腕の針の刺突を繰り出す。


 ダグラスの180㎝の身長でガタイのある肉体から放たれた拳に、170㎝のロックは中肉中背で受け止めた。


 衝撃に競り負けたロックは、ダグラスの間合いから吹っ飛ぶ。


 茶色の長外套(ロングコート)の右袖から放たれた銀色の雫が、ロックの“ブラック・クイーン”に粘度のある液体となってこびりつく。


 ロックとダグラスの眼が合う。


 ダグラスの眼には、ロックの他に一平が映っていた。


「一平、ダグラスから距離を離せ!!」


 ロックの警告に、一平はフットワークを利かせて後ろへ下がる。


 ロックの“命導巧(ウェイル・ベオ)”に付いた銀色の雫。


ダグラスの右腕から同じものが放たれ、大地を銀色に染める。


そして、ロックと一平との間に境界も作る。


「他所見してんじゃないよ!?」


 一平の上空から襲い掛かる、エヴァンス。


 彼女の“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ダンシング・クイーン”の蠢く刃が、一平の頭上で踊る。


 一平は駆けて、エヴァンスの凶刃を躱した。


 エヴァンスの“ダンシング・クイーン”が、一平のいた場所を切り裂く。


 一平は、“命導巧(ウェイル・ベオ)”:“ライオンハート”の爆衝烈拳ドーン・ナ・セーイジェの衝撃破の鎧で、地を貪るエヴァンスに迫った。


 しかし、一平とエヴァンスとの間にも撒かれていた“銀色の雫”。


 ロック、一平とエヴァンスの間に炎の壁が立ち上った。


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© 2025 アイセル

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