歯車は噛み合う―⑤―
ロックは、“イニュエンド”による銃撃を放つ。
雷鳴の角笛。
ローレンツ力によって発生した地場で“リア・ファイル”による電気体を生成。
それを飛翔体として、一平に発射した。
発射されたナノ強化弾丸は、三発。
しかし、一平は動かない。
避けようともしない。
ただ、呼吸を繰り返す。
闘争心の炎を宿した眼を、ロックに向けた。
ロックの撃った銃弾が一平に、着弾しようとする。
しかし、その代わりに風圧がロックの頬を撫でた。
一平の周りで不可視の爆発が炸裂。
銃弾をかき消すと、一平はロックに向けて突進してきた。
――こいつ、爆衝烈拳の衝撃破を障壁にしやがった!?
本来、爆衝烈拳自体は、拳の強化に使う。
ロックの知る限りでは、だが。
しかし、一平の場合は、両拳――厳密にいうと、“命導巧”:“ライオンハート”――に纏うどころか全身を覆って装甲にしたのだ。
「畜生が!!」
ロックは、左手を突き出す。
一平の衝撃の装甲の突進に対して、不可視の壁で対抗した。
“磁向防”。
本来、“命熱波”を使う者の間における、“リア・ファイル”起動の際の電磁波を使った、“命熱波”と“命導巧”を使う者にとっての、本来の“障壁”だ。
一平の衝撃の装甲と、ロックの“磁向防”がぶつかる。
一平の衝撃を感じつつ、ロックは反動で彼との間合いを稼げた。
「何だそれ、凄いな!!」
――いや、知らねえのかよ!?
“磁向防”に関する、一平の無知へ内心突っ込む。
だが、“磁向防”が防御にしか使えないことを考えれば、攻防一体の技を編み出せた一平の末恐ろしさをロックは自覚させられた。
“イニュエンド”を背後に持ち、籠状護拳と柄だけの“ブラック・クイーン”に入れる。
ロックは、間合いを詰めてきた一平の右からの衝撃の拳打に“ナノチタニウム製”の刃を顕現。
右拳に対して、“ブラック・クイーン”を振り下ろした。
一平の右の“ライオンハート”とロックの“ブラック・クイーン”がぶつかる。
剣圧と“拳圧”の衝撃が、二人の間から爆発。
頂砕く一振りという、“命導巧”内の“リア・ファイル”の電子配列を換える。
強靭な刃を作ることで、一平の衝撃に纏われた拳打を防いだのだ。
一平がロックの一振りにより、攻勢を阻まれる。
――攻める!!
ロックは踏み込む。
彼は、頂砕く一振りによる一撃を、一平の胴に見舞った。
だが、後ろへ下がりつつあった一平は、その隙を許さない。
一平は左足を下げて、右の半身を作る。
そして、腰を入れた左拳の一撃で、ロックの二撃目を出迎えた。
ロックの翼剣越しに、一平の拳の衝撃が伝わる。
衝撃にしびれ、歩みを止めた。
一平の右からの三打目が、ロックの左の顎と鎖骨を捉えた。
ロックは順手から逆手に、“ブラック・クイーン”を握る。
“ブラック・クイーン”の刀身で突き出して、一平の拳撃を流した。
右手から左手に翼剣を持ち替え、ロックは籠状護拳の一撃を一平に放つ。
「そう来るか!!」
一平はロックの籠状護拳からの一撃を、難なく躱す。
間合いを離すと、爆轟咆破による炎の砲弾をロックに向けた。
“磁向防”を展開しながら、ロックは炎の塊を防ぐ。
衝撃で後退しながら、ロックは“ブラック・クイーン”から半自動装填式拳銃の“イニュエンド”を取り出した。
ロックは、一平に向けて銃弾を二発放つ。
一平は銃弾を右に避けるが、二発は潰された車の束に命中。
ロックはすかさず、一平の足元に二発の銃弾を見舞った。
銃弾は地面を抉り、
「外したな……ロック、もうグロッキーか?」
一平の勝ち誇った笑みがロックに向けられる。
「……いや、もう終わりだ」
勝利を確信した一平の眼の中で、ロックは獰猛な笑みを浮かべる。
一平は、ロックの笑みの理由を確信した。
一平の左側で、突如として噴出した白い煙。
一平の頬を撫でて、虚を突いた。
そして、寸暇を置かずに、一平の足元から白い煙が勢いよく、吹き上がる。
道作る蹄による、炭酸ガスの白い煙だ。
衝撃により、足場を崩すことに特化している“疑似物理現象”。
狼狽する一平の両脚は、地上から離れた。
しかし、ロックは頂砕く一振りで強化した“ブラック・クイーン”を宙に浮かぶ一平を斬り上げる。
右拳で受け取るが、ロックの斬撃で一平は更に宙を舞った。
宙を浮かび、不安定な尻餅を突きそうになる一平。
ロックは、地上への着地を許さない。
彼は、左からの横殴りの斬撃を一平に見舞った。
有利に誇った笑みから、狼狽色に変わる一平は両手の“ライオンハート”を交差。
斬撃を受けるものの、ロックの腰を入れ、分子配列を強化した一撃に一平は吹っ飛ぶ。
ロックの銃撃で壊れた廃車の壁を、宙を舞う一平の身体は超えた。
彼は、背中から一回転して着地。
勢いのまま転ぶと、背中がもう一つの潰れた廃車の束の壁にぶつかった。
「銃身が好きなら、銃弾の味も悪くないが、試すか?」
一平は尻餅を突かされ、ロックが前に立つ。
ロックは“イニュエンド”の銃口を、一平の目の前に突きつける。
彼の炎に染まる闘志の眼が一対、ロックの銃口が支配した。
「わかった、わかった……負けたよ」
一平は、“ライオンハート”に包まれた両掌を曝す。
ロックはそれを確認して、“ブラック・クイーン”の柄に“イニュエンド”を収めた。
一平は両手を突き出して、ロックに離れる様に促す。
それから、泥で汚れた半パンを一平ははたき始めた。
「一応聞いておくが、”ベネディクトゥス”とは、どうやって知り合った?」
ロックが、「答えられるなら聞く」と言って、“ブラック・クイーン”から“イニュエンド”を取り出して弾数を確認。
外套から予備の弾倉を取り出し、半自動装填式拳銃型の“命導巧”に入れた。
「どうやって……って、アイツから来たんだよ?」
「アイツから……?」
一平の言葉に、ロックは首を傾げる。
一平から“ベネディクトゥス”に接触は考えにくいが、逆のケースも想像に難しい。
「色々話して……強くなりたいって、言ったら」
ロックは一平の話の内容で、“命導巧”を受け取った流れを理解した。
しかし、根本的な疑問をロックは一平に投げかける。
「どうして強くなりたい?」
「龍之助を助けたい……友達だからな」
ため息というか、呻きとも言える、言葉にならないものが、ロックの口から思わず出た。
“命熱波”があるから、一平には使えるのは把握している。
しかし、“命導巧”が必要な理由――特に『龍之助を助ける』という下り――が繋がらない。
「一平、どういう――逃げろ!!」
ロックは、飛ぶと同時に一平を突き飛ばした。
ロックの背後を衝撃が遅い、灼熱に染まる風が項を撫でる。
「やっと会えたな……“スパイニー”!!」
振り返ると、首を覆う毛皮のコートをした茶髪の男が立っている。
男は、喉を炎色と銀色に明滅させながら、炎に染まる眼にロックと一平を映した。
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