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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第三章 Obstacles

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敵対―⑩―

午後5時21分 上万作(あまんさく)市中心の業務用スーパー“みずい”


「ロック……言っていい?」


「……なんだよ?」


 スーパーのカートを押すブルースの言葉に、


「『()()()()()()()()()()』だろ……問題ない」


 ロックは両手に持つ品物を、カートの上に置かれた買い物かごに放り込む。


()()って言葉……知っている?」


「意味は知ってる……()()()()()()()()


 ロックはため息を吐き、


「極めて、後出しだが」


「それ、前(もっ)て、知っておくべきことかな!?」


 ブルースの過剰とも言える反応に、


「……ブルース、甘いものは精神落ち着かせるらしいから、一つやるよ?」


「ありがたいけど、それはお前の()()()()()()()()()で、()()()()()()()()よ……」


 ロックの目の前で、ブルースが肩と目線を落とす。


 業務用スーパーで、幼児が三人くらい入るのではないかというサイズのカート。


 その層の()()が、パンである。


 菓子パンだ。


 あんぱん、ジャムパン、クリーム等が色々積まれている。


 業務用のスーパーで、()()()()()()()()()()()()()()()()だ。


 ブルースがまじまじ見つめていると、


「なんか……クリームチーズ、あと、白あんも……何気に種類があるのな……」


「……だから、欲しけりゃやるって?」


「驚いているのと同時に呆れてるんだよ!? 日本の子どもでもこんなに菓子パン積まないと、わたし、ブルースは思うけどな!?」


 ロックの言葉に、ブルースが全力で突っ込んできた。


「ブルースが思う故に、ブルースの考える今がある。現実を受け止めろ」


「ロック……デカルトの“我思う故に我あり”に当てはめて、この状況を正当化しないでね!?」


 ため息を吐いたブルースが、右の掌に左の人差し指を重ねて“6”の数字をロックに示す。


 菓子パンは六つだけで、あとは返してこいということらしい。


 カートより小さいプラスチック製の籠を、ブルースから手渡された。


「菓子パン食えなくて、餓死するかもな」


()()()()()()()()()()()()()()()()尿()()()()()()()しか思いつかないんだけど……」


 ブルースの口調から、菓子パンの増加は見込めない。


 ロックは考えながら、一番食べたいものをカートに残す。


 それ以外を籠に入れ、菓子パンのコーナーに足を向けた。


 ロックは本来、この時間に買い物をしていることはない。


 当然、()()()()()()()()()()()()()()学校に出られる訳もない。


 その代わり、()()()()()()に勉強や訓練の他に()()が加わるのは、ある種自然の流れだろう。


 ブルースと共同生活をしているため、学校に行かない時間が必然的に生活面で補助に回らなければならない。


 そして、彼から「好きなものを買っても良い」と言われ、先ほど限度を弁えるように釘を刺された。


 ロックは心の中で、肩をすくめながら菓子パンのコーナーに戻る。


 プラスチック籠の中の菓子パンを、手早く元の場所へ戻していった。


 籠を空けると、


「……ロック?」


 ロックは自分の名前を呼ぶ声に気づく。


 その声は聞き覚えがあった。


 いや、少し語弊がある。


 ()()()()()()()()()


 同時に、今一番、()()()()()()()()()()()人物だ。


「……ロックさーん……ですよね?」


 女子の声だった。


 アニメやゲーム、漫画なら、異性から話しかけられる展開は、主人公の心が()()躍る展開だろう。


 無論、現実でも。


しかしながら、()()()()()()()()()()()()何故か「()()()()()()()()()」という圧力を感じる。


彼女はそれを心得ているのか、呼びかけを止める。


だが、ロックは沈黙が耐えられないので、応えることにした。


「……サキ」


 ロックは、その名前を呼んだ。


 聞きたくもなく、会いたくもなければ、()()()()()()()()()()()その名前。


 その主の顔は、笑顔だった。


 彼女の目に映るロックは、深紅のコートではなく、灰色のフード付きトレーナーとデニムを身に纏っていた。


 そんなロックを映すサキは肩にスリットの入った水色のキャミソールと、腹部に大きなバックルを模したサッシェベルトで飾っている。


 満足したのか、サキは満面の笑みを浮かべるが、


「……リーネア、読んだ?」


 核心を早速突いてきた。


「……リーネア、メッセージ素子(アプリ)だな? SNSの一種で――」


「……ロック、誰も『()()()()()()()()()()』とは言ってないよ?」


 逃げ道を塞がれた。


 停学になってから、何回かサキからメッセージが来た。


 大乱闘のあった日の夜、一平によって招待された会話グループに入った。


 手早く挨拶を終わらせたが、その後、サキから個別にメッセージが来た。


 しかし、ロックは返信しなかった。


 そして、その結果が、現在、目の前にあるサキの笑顔である。


「来ているのは分かった……」


大体、携帯通信端末(スマートフォン)の通知画面で大体内容は分かる。


その日の出来事について聞いてきたものがあった。

 

だから、ロックは答えなくても良いだろうとは思い、通知を切った。


「忙しかった? そして未読の理由は勉強、運動とゲーム以外……あれば聞くけど?」


――それ、「どんな理由も聞かない」ってのと、同じじゃねぇか!?


 ロックはサキに声を大にして叫びたかった。


 だが、


「悪い……今確認する」


 ロックは謝罪して、携帯通信端末(スマートフォン)をトレーナーの前ポケットから取り出す。

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© 2025 アイセル

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