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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第三章 Obstacles

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111/257

敵対―③―

広島市内 地方自治研修センター 講堂内 午前10時37分


――何で、こんなことになるのよ!?


 雑賀 多恵は携帯通信端末(スマートフォン)の通知の嵐に辟易していた。


 原因は分かっている。


 いや、()()()()()()()やり場のない怒りが、雑賀の感情の器から溢れ切っていた。


 方々からの視線が、雑賀 多恵に注がれる。


 視線の紡ぎ手から(ささや)かれた言葉が、雑賀の劣等感に突き刺さった。


()()()()()……?」


「あの人たち……()()()()()()()()()?」


 河竹市。


 雑賀 多恵の勤める市で、所在地は山陰地方の島根県と鳥取県の間である。


 島根県か鳥取県の違いが分からないという自虐冗句があるが、少なくとも河竹市に行けば()()()()()()()()()()()使()()()程度の知名度である。


 しかし、地元や近辺に住む者からは()()()()の意味も含まれていた。


――……河上 サキに斎藤 一平……!!


 雑賀が負傷した地自労の河竹市の若い組合員に聞いてみると、二人の名前を確認したという。


 しかも、深紅の外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイドと一緒に共同戦線を張っていたのだ。


 世界で有名な“ウィッカー・マン”討伐の英雄の少年と少女に対峙してしまった、組合員は雑賀に組合を抜けたいとまで言い出した。


 そして、今回の深紅の外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイドとの交渉に臨んだ職員の中には、役場を辞めたいとまで言い出すものもいる始末だ。


 組合は、原則、脱退は自由である。


 しかし、組合に入ることを是としている組織で、その逆は想定されていない。


 抜けた者についての、職場での関りも必然的に皆無。


 そうなった場合は、()()()()と同じ扱いになる。


 雑賀はそれを心配しているのもあるが、


――全部、()()()()()()()()()()()!!


 雑賀 多恵は男社会でもある地方公務員の中で、若い女性リーダーとして白羽の矢が立った。


 その使命感は、“政声隊”のデモで台無しである。


 しかも、()()()()()()()()()河上 サキと斎藤 一平の二名が関わっていた。


――()()()()()()()()!!


 雑賀 多恵が高校卒業してから今日までの7年間、河竹市に勤めている。


 地元の高校で優秀な成績だったが、大学へ行くよりも、早くお金を稼げる公務員に進路を定めた。


 地元で安定した日常を送れると考えていた。


 しかし、彼女の人生の展望(ライフプラン)は崩壊を迎えた。


「河竹市って、“預け”と“差し替え”してたんだろ?」


「しかも、裏金も作っていたんでしょ?」


「俺……そこの職員が裏金使い込んで、女子高生と未成年飲酒させようとしたら、女の子の友達に見つかって、ぶちのめされたって話聞いたぜ?」


 “預け”は、使い切れなかった国や県の補助金を取引業者にプールさせる行為である。


 “差し替え”は、業者に請求書と違う品物を納入させることである。


 当然、認められる筈が無い。


 何より、河竹市役所が、()()()()()()()も事実である。


 しかし、


――私の草一さんを……()()()()()と一緒にしないで!!


 彼女の夫、雑賀 草一は河竹市職員である。


 彼とは課が違うものの、組合活動で知り合った。


 雑賀 草一は、県外から入庁をした――いわゆる、I(アイ)ターン――職員である。


 浅黒い肌で、笑顔は爽やか。


 何より外のことを知っているからか、地元の郷里の人間よりも洗練されている雰囲気があった。


 雑賀 多恵も高校を卒業してからすぐに入庁。


()()()()()()彼女にとって、刺激的な出会いだった。


 それから二人は恋仲となり、結婚もした。


 しかし、彼女たちの人生が荒天に見舞われたのは、ある少女と少年との出会いだった。


「しかも、河上 サキの高校の前で好き放題に騒いでおいて、河竹市の連中……()()()()()()()()()()……まったく、田舎役人め」


――そんなんじゃない!!


 雑賀 多恵の知る限り、()()()()()()()()()()は大きく違う。


 端的に言うと、汚職をした職員がいた。


 そいつとつるむ一部の職員が、よく行く()()()()()()()連中たちが、よりにもよって斎藤 一平と河上 サキの友達の女子高生を連れてきてしまった。


 彼女の同意も曖昧なまま。


 しかも、常連が飲酒を持ち掛けたのもタチが悪い。


 そこに、斎藤 一平と河上 サキが店に乗り込んだ。


 彼らは、友達を救うために汚職職員たちばかりか、飲食店の従業員や常連客もぶちのめした。


 そこで終わりかと思ったがそうではなかった。


 斎藤 一平と河上 サキの友達の女子高生が、()()()()()()()()()()()()()()U()S()B()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


 全課で行われた不適切な会計に加え、一部職員による横領という異常事態に河竹市全課が、記録を確保するために職員に回収を命じた。



 消防団も総動員である。


 無論、命じられた職員兼、消防団員には、雑賀 草一もいた。


 このことから、斎藤 一平や河上 サキと事を構えることになった。


 何で上司がそんなことを命じたのか、多恵にわかる由は無い。


 しかし、この争いは思わぬところから横槍が入る。


「しかも、()()()()()()()()()()()を“ワールド・シェパード社”の関係者が嗅ぎ付けたんだよな……そして、“ウィッカー・マン”対策の特区を作るという名目で、河竹市役所を買い取った。山陰両県知事も防災目的だと何も言えないから」


「そして、中国地方全体の県から市町村までの職員を、消防団の減少も重なって()()()()としての訓練が義務付けられた……」


 “ワールド・シェパード社”という民間軍事会社は、戦闘だけでなく災害時の救助活動も行う。


 そのための人員としての訓練への参加が義務付けられた。


 無論、その第一弾が()()()だった。


 男女の関係もない。


 老いも若きも些細な事だった。


 ()()()()()()()()()()()()


 しかも、防災とはいえ“ウィッカー・マン”を討伐するためのものだから、厳しいものだった。


 河竹市は全国の消防団訓練では上位にいたが、“ワールド・シェパード社”の訓練の前では、その時の賞などは(ちり)紙と化した。


 全国に河竹市役所職員が、男女平等に倒れ、泣き言を晒した。


 公共の受視機(テレビ)ばかりでなく、電脳空間でも。


 しかも“河竹市役所”も、“ウィッカー・マン対策”の前線として24時間、インフラをフル稼働という状態になった。


 世界的な脅威の前に、公務員の権利はなくなった。


 しかも、河竹市の悪事の連座と言わんばかりに。


 それが中国地方全体に広がった。


「要は河竹市のせいで……俺たちは、座学と実技で訓練しなきゃいけないんだよな」


「しかも、減給もあるからな……」


「就業時間で終われないものね……」


 河竹市の汚職の中心人物は、()()()()()()()


 証拠を確認しようとしただけで、中国地方の全自治体職員が()()()()()()()()()()()()()()


 当然、地元市民からも冷たい目で見られるようになった。


 そして、携帯通信端末(スマートフォン)の止まらぬ通知も、雑賀 多恵の短文投稿サイトに限らず、SNSへの返信だ。


 無論、上万作(あまんさく)の軍事化に反対するパレードの写真だ。


 地自労の一人として参加したものだが、


“公安さん、反日デンサヨがいます”


“税金泥棒”


“髪染めたサル顔女”


 

 多恵は通知を受けるたびに、携帯通信端末(スマートフォン)を操作。


 ブロックと報告を繰り返す。


――何が悪いのよ……()()()()()()()って訴えて、何が悪いのよ!!


 雑賀 多恵は、内心ぶちまけたい思いだが、留まる。


 彼女だけではない。


 河竹市から研修で派遣された職員たちは、皆、同じような目に遭っていた。


 しかも、地自労の活動に乗り気でない、出張と言う名のガス抜きでやっている公務員からの()()()()()のサンドバッグにされた。


 悪口は高卒の若い職員を中心だが、同年代や年上の職員は笑顔で接するものの()()()()()()()()


 話そうとすれば、すぐに距離を離す。


 目を合わせたら、意図的に逸らす。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()、どれほど楽であろうか。


 ()()()()()()()()()が、思わぬ形で雑賀 多恵への悪意となり返ってきた。


――私は……負けない、負けてたまるか!!


 雑賀 多恵に、これらの悪意に引き下がる選択肢はない。


――おなかの中には……()()()()()()()()()()!!


 多恵もだが、草一も耐えていた。


 草一にいたっては、何故か()()()()()()()()()()()()()()()()()()とまで言われたほどだ。


 だから、


――生んでやる……生きてやる!! しかし……その前に。


 雑賀多恵は、この現状を訴える。


 国ではないが、少なくとも、デモに加わった地自労関係者が、深紅の外套の守護者クリムゾン・コート・クルセイド、斎藤 一平と河上 サキという三名に無意味に倒された。


 その原因を作った、山土師 靖。


 彼には責任がある。


――彼に、直に()()()()()――!!


 そう思いながら、多恵は休憩時間の終わりを迎える。


 それから、次の研修の準備に入った。

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© 2025 アイセル

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