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Do L.L.,z  作者: zaq2
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DoLLz

 最初は、SNSの片隅にアップロードされた内容だった。


 アップロードされた"ソレ"は、50cmたらずの人の形をした代物だった。



 ただ、"ソレ"は普通の人形とは少し異なっていた。



 なにしろ"なんとか自立で動いている"と、少なくとも一応はそう言えそうなほど、微妙なレベルの存在でもあったからだ。



 しかし、"ソレ"はたった一人で制作された代物であり、未熟ともいえる技術で何とか自立稼働と言える物へと個人でたどりついた結果でもあった。



 そして、製作者自身は、自分が「未熟」である事も理解していた。



 未熟であると知っていた製作者は、自身の技術向上と作品の性能向上の為にと、SNSというツールを使って世界へと技術の全てを無料で公開したのだった。



 そうして"ソレ"は、世界の片隅で"ごく一部の人たち"にだけに知られる存在となった。




   *   *   *



 しばらくすると、製作者が公開された技術を元に、同じように試行錯誤する者達が現れた。


 試行錯誤する者たちは、お互いの技術の公開をするのが当たり前の様に広まり、改善・改修を繰り返しては公開され、そうして進歩していく自立人形のその様に、世界の片隅にいる住人たちが虜になっていった。



 気が付けば、ひとつがふたつに、ふたつがよっつへ・・・そんな感じで試行錯誤する者たちが増え続け、製作者たちは自身の研鑽を踏まえては、幾度も幾度も試し、そして失敗を繰り返し続けるが、その失敗すらも経験の糧として公開され続けた。



 そうして、最初の製作者の公開から数年たったころ、一つの区切りとなる作品を作り上げることに成功する。



 50cmの自立人形。



 "完全"・・・とまでは言えないが、単調な言葉を理解しては単純な言葉を返し、自身の思考で体を動かす。

 ハードウェアとソフトウェア、両方が混ざり合った一つの完成系。



 この人形の事を、片隅の住人たちは"最初の自立人形( E V E )"と呼び始めた。



 その名は、まるで、そう付けられるのがあたり前かの様に最初の女性( E V A )から、ともいえた。



   *   *   *



 最初の自立人形( E V E )の成功ともいえる事柄は、世界の片隅の住人だけにとどまらなかった。


 常に公開されている技術の情報、それらを簡単に手に入ることができるため、他の人たちが「真似る」事を始めるのは、普通の流れだったのかもしれない。



 特に、自立思考を持たせるAIに関しては、今だ完全といえる物は出来てはいなかったが、言葉を理解し、簡単な行動に移す事ができるだけでも、大きな進歩でもあったのである。



 そうして、次に世界の片隅に現れたのは、120cmの自立人形であった。



 その自立人形を制作したのは、EVEとは違う製作者であった。


 EVEで培われた技術や仕様を元に、より人へと近づけようとした意欲作と言われる代物と、後の人たちはそう語る。



 この120cmの自立人形は、最初の自立人形( E V E )と比べると、倍以上に大きくなっていたが、大きくなれば搭載できる容量も増えることにつながった。


 その自明ともいえる単純な事から、新たな理念を持たせることにも繋がった。



 一つは、未来を推測する事


 EVEでは、蓄積されている情報から過去に合ったことを選択する(・・・・)だけであったが、この自立人形は、その過去の情報から想定される事柄を、未来というモノを推測する思考が持たされた。



 そして、もう一つ


 "無駄"という概念がもたらされた。



 この製作者が、何を考えてこの理念を搭載したのかは誰にもわからなかったが、この二つの理念を搭載された自立人形は、それまでのEVEとは確実に違うと言えた。


 ただ、「どこが?」という質問に対して、はっきりとした回答は未だ得られないままだが、この自立人形を見た世界の片隅の人たちは、"より人に近づいた"という発言を、数多く飛び交わせていた。



 そうして、新たな理念が搭載された120cmの自立人形は、公開された製作者の仕様書ファイル名から"ALICE"と名づけられ、このALICEの仕様も、また、EVEを作り出した製作者の意思を組んだのか、それとも技術を歴史に刻みたかったのか、そのすべての技術が世界へと公開されていった。



 この新たな技術の集大成ともいえるALICEの仕様を公開するという事に、世界の片隅の人たちは何も思わなかった。



 今までがそうであったからか、それとも、製作者の意図を汲んでなのか。



 だが、製作者の意図がどこにあったのかは誰にもわからないままとなった。


 なにしろ、その製作者は、初期型ともいえるALICEそのものと共に、その世界の片隅からいなくなってしまったのだから・・・



 ただ、ALICEという"存在"があった事を残して




   *   *   *



 公開された120cmの自立人形「ALICE」


 それは、ロボット技術、とくにロボットAI技術という界隈に大きな衝撃を与えた。



 この頃になると、個人趣味で行われていた物が、学術組織・企業・技術団体はては国の機関においても、その技術に目をつけては競い合う様に開発をする部門が出てきた。



 そうして、ALICEの子といわれる物が世界中に現れ始める。


 成人と同じサイズの代物が出てくるまで、そう時間はかからなかった。



 それらは、


 某国では、人の代わりとなる物を

 某国では、人を助ける物を

 某国では、人を壊す物を

 某国では、搭載AIだけを発展させた物を


 色々な用途や目的にと、いろいろな物が現れ始めた。



 その中で、ある国での発展が一番変わっていた。


 基本理論はそのままに、人が乗れる10mクラスの自立人形を作り上げたと思えば、まったくの真逆に15cm未満の小さな自立人形を作り上げ、果ては、人という形ではないモノにすら、その概念と理論を組み込んでいった。



 他にも、さらにより人間らしく魅せる構造物を纏わせたり、従来型の機械的な部分を高性能化を実現させたりと、他の国々とは異なる異常な独自進化を、それも個々人の技術でなし遂げていっては、常に世界を驚愕させていった。



 そうして、いろいろな世界に自立人形という"ソレ"が認められ、普通に存在し始めた。



 あまりにも多く存在する形になったソレは、ロボットというにはあまりにも異なってしまい、また人形といえる代物でもなくなったが、その延長でもあるため、それらの規格を制定する事も視野にいれた総称として"DoLLz"と名づけられた。






 "DoLLz"が世界にありふれるようになって半世紀、今なおDoLLzの進化は止まらない・・・




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