第参話:最強のカメ、見参!
さて海辺の砂浜に行くとするか。カメになった俺は自分だけで竜宮城へ行く為のフラグを立てるために、あえていじめられる為、3人のガキどもの近くでのそのそと歩いていた。案の定、というか……物語通り、ガキどもは俺の元へ木の棒か何かを持って、寄って来た。
「なんだこいつ~カメのくせにでかいぞ~」
「生意気だね、カメなのに」
「こらしめてやろうぜ~」
カメのくせに……だと? ふざけやがる。それはお前らがまだガキだから小さいだけで俺は悪くないぞ。でかいから生意気だとかそんなの俺の世界じゃ当たり前なんだがな。やれやれ、このまま黙ってやられるのはシャクだが、思いきりストレスを発散させてやるとするか。
「バキっ、ドカッ……グワァングワァン」
俺の甲羅を思い切り叩いてきやがるガキたちは満足げにいじめてくるが、音だけ聞けば確かにこらしめたと思ってるだろうな。耳には響いてしまうが我慢だ。
ふっ、俺をなめるなよ? 痛くもかゆくも……少し痒いが、全然痛くないぜ! おいおい、もしかしてカメ最強説? なんせ甲羅の中に手足引っ込めて黙っていればいいだけだからな!
「気は済んだかな、子供たち……」
言葉が通じるのか分からんが、息を切らせて叩くのを中断しているガキたちに話しかけてみた。
「カ、カメが言葉を……生意気だぞ、お前」
おいおい、驚くどころか闘争心を燃やしてるじゃないか。これは予想外だ。こうしちゃいられねえか。カメは強いということを証明しなければな。まずは木の棒を持ったガキの足を噛んでみた。
「いててて!? こいつ、足をかんでるぞ……」
あれ? あまり効いていないのか。ならば次は石を持っているこいつだ。持っている石を、手ではらってやった。これで甲羅を攻撃出来まい。ふっ、我ながらなんてかしこいんだ。
「こいつ、俺たちと勝負しに来てるそ。どうする?」
な、何だと? くそっ……こんなはずじゃないんだがどうする?
「カメは上からは最強かもだけど、ほらこうすれば……弱いぜ! 俺たちの勝ちだ~!」
し、しまった!? 不意を突かれて裏返しにされて捕らえられてしまった……だと!? これでは奴がそろそろ来てしまうじゃないか。どうする俺?
いや、待てよ? これでいいんだ。浦島が来る、助けてもらう。そしてお礼に連れて行く、の流れになるから、このまま奴を待って黙ってるのもアリだな。
しかし、このままでは頭に血が上りすぎてやばいな……早く来てください~浦島さーん。
「これこれ、子供たち、可愛そうなことをしてはいけないよ。ほら、ホンの少しのお金をあげるから、そのカメさんを離してあげてはくれまいか?」
浦島さーん、待ってました! しかし、冷静に考えればこの時代から金で子供を買収してたのか。こいつ、タダモノじゃないな。
「大丈夫かい? カメさん」
ここでは何も言葉を発さずに、黙って頷く俺。
「うんうん、次からは気を付けるんだよ」
よし、ここまで来たか。次は奴が海で釣りをするはずだから、それまでは大人しくしてるとするか。
続く。