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善悪対価と仮想御伽譚【リメイク版】  作者: ハルカ カズラ
2/6

第弐話:主人公のカメ、それは俺。

 夢の中の夢に行って、楽しい目にあってみたい。

 そんなくだらない願いを誰かが叶えてくれた。ってなわけで、希望したのは浦島太郎。さて、どんな面白いことが起きるか行ってみるとしようか。


 浦島太郎っていったらやっぱり主人公になってカメ助けて竜宮城に連れてってもらって、玉手箱……いや、待てよ? それは定番すぎてつまらねえな。どうせ最後はジジイになっちまうしな。要は面白いことが味わえりゃあいいんだ。よし、奴になるか。


 ガキの頃から今までに何度も見てきたシーンと言えば、砂浜でよってたかってガキどもにいじめられていたカメ。俺は陰の主役でもあるカメになってみた。狙いはいくつかあるが、どうせ夢なんだから好き勝手に動いてみたいってのが理由だ。


 素直に砂浜に行っちまったら物語が進行しちまう。どうするか? カメになったことだしまずは海を味わってみることにした!


 俺はなるべく、人に見つからない端の方で海に入ることにした。


 それにしても砂の上を進むのがこんなにもスムーズだとは思わなかったぜ。人間はなんだかんだで陸に慣れすぎてるからな。砂浜なんてめったに歩かねえし、歩きづらいのは仕方ないのかもしれねえな。


 海に入ってまず俺がしたことは――


 うおぉ! 海水がうめえっ! 全然塩の味を感じないじゃねえかよ。かぁーーいいねぇ! 美味すぎて普通の水なんか飲めねえぞ。海の生物ってのはこんなにいい思いをしているものなのか。


 実はかなづちな俺はカメになって試したくなったことがある。もちろん海中を泳ぐことだ。


 うおっ!? 体が軽すぎて泳いでるって感じがしないぞ。おまけに早く動ける。羨ましい限りだぜ。溺れる心配がないってだけでもカメになりてえぜ……。


 言葉は分からねえが、俺……つまり動きの良すぎるカメに、首を傾げているように見える他の魚どもは俺を素通りしていた。さすがに魚の言葉までは分からなかったようだ。


 あまりに楽しすぎてしばらく海中を泳いでいたが……というか、砂浜にガキが来るのは何時頃なんだ? そしてそこに現れる浦島は今どこでなにしてるんだろうな。


 記憶じゃ確か夕方くらいだった気がするが。空を見た限りじゃまだ行かなくても平気だろう。俺は夢を見る前に付けていた腕時計を見てみた。こんなこともあろうかと左手首に付けておいた。


 案の定だが、腕時計の感触はカメになっていても残っていて、時の刻み音と共に時計は視覚上にあった。こういうリアルさをのこしてくれるとはディアボロスさんもやるねぇ。


 なら、このまま浦島を連れて行く前に竜宮城とやらに行ってみるか。俺はその辺のカメじゃねえし、たぶんスルーパスのはずだ。


 いや、待てよ? そもそもそれはどこにあるんだ。確かに俺は浦島太郎に出てくるカメになったが、今の時点で竜宮城への行き先が記憶の中に入ってないんだが……もしかしてフラグ立てないと駄目なのか?


 ってことは、助けてもらわなくても、ガキどもにいじめられればいいんじゃねえかな。いや、駄目だ。いじめられてるってことは時間が経過してるわけだから、要は浦島に助けられなければいいんだよな。ガキどもに会って、そこで行き方が分かればしめたものだな。


 仮に分からなかったら、予定通りに浦島に話しかければ事は進むはずだ。

 まずは砂浜まで戻る。そして予定通りに、いじめられる……のは嫌だからどうにかしてみる。


 海中遊泳を楽しんだ俺は、地上へ戻ることにした。


つづく。

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