第壱話:御伽のハナシ
我が世に降り立つは、ヒトの善と悪を見極める為。
人の世、生きとし生けるものは良いことをすべきヒトと、悪しき行いするモノで相対している。
――我が名は夢境に生きるディアボロス。
善なる人物で見極めを……壱のヒト、名はタロウ性はココノエ……内なる心を見定めル。
「いらっしゃいませ~! 毎度どうも!」
今日も一個150円の饅頭を30個ほど売りまくった。これで生活が成り立つか、だなんてそんなの誰が見ても分かる。これはただの愚痴。嫁もいるし、育ち盛りの娘もいる。
まだ日本が豊かだった頃はマシだと思っていたけど、正直これだけで食っていけるなんて思っちゃいない。だけど、助けてくれる心優しき人なんていやしない。ただの饅頭屋。だが、俺にも夢がある。夢を見る夢だ。
ガキの頃、意識もせずに読んでた昔話があった。いくつもの話をそれはもう夢中になるほどにだ。今じゃパロディ化にもなってるし、アニメにもなっている。それもかなり昔に。
そんなおとぎ話もガキの頃に読んでた時とは違って、大人になっちまった今読めば、全く感動もしなければ、面白いと感じることがなくなった。この感覚は一体何なんだろうな。
一度でいい。おとぎ話の中に入って夢を見てえ。こんなくだらないことを叶える奴なんて、夢の中じゃなければいないからな。一か八かで、俺は「夢の中で夢を見たいです」なんて、らしくもない丁寧な言葉でどこかの誰かに願いをしてみた。
ソノ夢、見させてヤロウ。ダガ、対価を頂くガ、イイか?
「対価? 駅前の小さい饅頭屋にこれ以上払えるものはないですよ? それでもよければお願いします」
受諾シタ。デハ、夢の中より、更に深く、お前の行きたい話をネガエ。
「おぉ。気前がいいねぇ。そうだな、俺の名前は太郎だから、ありきたりだが浦島太郎にするぜ」
ワカッタ デワ、ネガエ……世界の……ハザマへゆくタメに……
ツヅク