孤独な時間
俺は数瞬の間何が起こったのか理解出来なかった。
俺の目の前に浮かび上がった「ひっかくLv2」の文字は少しして跡形もなく消え失せた。
もう一度手をぐちゃぐちゃと振り回してみたが表示は出てこない。
何だあのポケ○ンみたいな技名は。あれは幻覚だったのだろうか。いや、幻覚なはずはない。もしかしたら、俺は技が使えるようになったのではないだろうか。
そこまで考え、俺は動悸が激しくなり身体が熱くなるのを感じた。
辺りは薄暗くしんと静まりかえっている。布の擦れる音と俺の呼吸の音だけが部屋に響いた。
魔王は孤独だ、などという中二病臭いセリフを俺は喉を通して部屋にはき出した。はき出すと、俺は本当に魔王だというような錯覚に陥ってきたが、俺は本当に魔王なのだろうか。
「……」
そこまで考え、俺はふと我に返った。
……いや、俺ニートじゃん。
そう、俺はニートだ。ニート(21)♂のまおうゆうまだ。
ただの引きこもり人間ニート。そしてある日不思議な出来事が起こって自殺しようとしてそのニートが、階段で蹴躓いて脳天打って異世界に飛ばされて気付いたら魔王?ありえない。どうしてこうなった!俺はどうしてこんなところに(以下ループ)。
そして薄暗い部屋の中孤独に時間だけが過ぎていった。