な○う小説みたいなことが起こった
なんということだろう。
信じられないことが起こった。
いや、起こっている。今、現在進行形で。
まるでな○う小説のような、異世界転生でもしてしまったかのような現実に俺は今直面している。
自分でも驚きが隠せない。俺はどうしてしまったのだろうか。
あえて言いたい。どうしてこうなった!
脳がかち割れるような痛みに苛まれながら頭を起こすと、そこは見慣れない大部屋だった。
床は大理石で作られているかのように固くひんやりと冷たく、部屋は誰もいないかのようにしーんとしている。
身体は良く言えばなんともない。悪く言えば、俺の身体じゃない。
紫の服を着ていて、肩にトサカのようなものがついた黒マントまで羽織っている。
立ち上がってみると、身体もなんかデカイ。
手が白く、デカイ。爪が汚い。獣のような爪だった。
俺は実家にいて、ニートだったはずだ。
それが、どうしてこんな場所にいて、こんな姿でいるのか、まるで意味がわからない。
これが俗にいう幽体離脱というものなのだろうか。こんな不思議体験を俺が味わうことになるとは思わなかった。
とりあえず、落ち着け俺。
俺は何度か深呼吸をし心臓を落ち着かせると、部屋をうろうろと歩き回り、閉めきられた漆黒のカーテンへと向かった。
外には何があるのか、想像もつかず恐怖で手が震え、カーテンを開けることが躊躇われた。
しかし開けないことには何もわからない。
俺は意を決すると、カーテンの隙間から外をのぞいた。
「……」
外には、荒廃した森と真っ暗な空が広がっていた。
そして、その森を見渡せるほどの高さから、この部屋がとても高い位置にあることが伺えた。
俺は恐ろしくなった。
こんな闇の世界にただのニートだった俺は連れてこられてしまったのかと。
俺は足を震わせ未だに信じられない恐怖におののきながら反対側へと歩いて行き、ラスボスへと続くような巨大で豪奢な赤い鉄扉を押してみた。
ゴゴゴという軋む音を出しながら扉は次第に開き、俺はその先に続く廊下へと出てみた。
廊下へと出て、ある物に気付くと、俺は唇を青くさせて失神しそうになった。
部屋の入り口には立て札があり、そこにはこう書かれていた。
この先、魔王の部屋。と。