時は短し走れよ乙女
私の名前は清水 凛、凛星高校の二年生、剣道部のマネージャーをやってるんだ。
左にいるムスっとしている可愛くない男は私のクラスメートの翔くん。
今日も私達は学校のコートのベンチでお互いの悩みを話し合っていた。
元々このベンチは2人がよく立ち会っている場所なので、会おうと思わずも会ってしまうことは多々ある。
だが、放課後の部活の終わりにここで待ち合わせをして一緒に帰るのが日課なのだ。
すると、後ろから数人の男子がこちらへ「ひゅーひゅー!」や「イチャイチャすんなよ〜」などの皮肉を言ってきた。
だが、私は翔くんとは何も特別な関係はない。
こいつらを無視してさっさとこの場を立ち去れば──
「なぁ、あいつ顔赤くないか?」
──へ?
(え、まさか翔くんこの状況で恥ずかしがってるの……?)
普通に考えれば、翔くんは高校生であり思春期の男である。
この状況を気恥しいと思うのは当然ではある。
だが、翔くんの顔を見てみると、さっきから顔色一つも変えていない。
──むしろ、先程より不機嫌な顔になっていた。
──まさか……
「おーい! 清水ー! そんなに照れずにさ、翔とくっつけって!」
私は翔くんの手を取って全速力で駆け出した。
──────
気がつけば私は、街の道路の交差点にやってきていた。
「おい凛! もういいだろ! 凛!」
「あ……ごめんね……翔くん……」
私は翔くんの手を離して必死に謝った。
それにしても、さっきは恥ずかしかった……。
まさか、赤面してたのが私だったなんて……勢いで翔くんの手を取って逃げたけど、明日なんて言われるやら……。
「いきなり走り出してどうしたんだ? あいつらの言葉なんか無視すればいいだろ? ──あ、まさかお前俺のこと好きだったりするのか? いやいやいや!まさか、あの凛がこの俺を好きになるとか有り得ないよな〜! あはははは……おい、なんか喋れよ」
「ふぇっ⁉︎ あ、そそそうだねねね!そんなこととと有り得るわけななないよね⁉︎」
…………
──ああああ!! マズいマズいマズい!
今ので悟られたって! 絶対に悟った! 明日になったら再確認されるやつじゃんこれ〜!
しばらくの沈黙が流れ……翔くんは真顔で言った。
「ごめん……俺、恋には興味無いんで」
──なんでこういう時に鈍感じゃないんだよ!!!!
──────
「あーもー皆死ねばいいのに」
私はさっきからそんなことを何回も誰にも聞こえないような声で呟いていた。
「……おい凛」
「あー、どうにかスナイパー雇って私の悪口言うやつ全員射殺してくんないかなー」
「凛!! 聞こえてんのかゴラァ!!」
耳元から聞こえる不良っぽい怒鳴り声を辿ると
「おー、誰かと思えばシネシネメンチョーじゃないっすか〜お疲れ様っす〜」
「──あ⁉︎」
私の悪口を素直に受け止め、私の首を締めてくるこの男は黒崎 顎門だ。
「おい! そのあだ名どこで聞いたんだオラァ!!」
「え? 翔くんから聞いたよ? ネーミングセンスバッチリだよね〜!『シネシネ』に『メンチ』と『バンチョー』かけてシネシネメンチョーだってさ!」
「あいつ絶対殺す!!」
端から見ればものすごいやりとりしているのだが、これが日常茶飯事なのだ。
──すると、黒崎がいきなり真面目な顔をして
「ってかお前今日は翔のことをずっと見てろって言っただろうが……」
「あ、忘れてた! ごめん〜今すぐ追いかける──」
その時、私は思い出した。
さっき、翔くんに告白されたと勘違いされて、振られてしまったことに。
「ゴメン今日ハ黒崎クンガ行ッテクレナイカナ」
「……流石の凛でもあの後じゃ気力持たないよな」
──へ?
「え、今なんて──」
「流石に振られた後じゃ翔と顔会わせずらいよな〜」
黒崎はさっきのお返しとばかりに顔をニヤニヤさせながらこっちを見てきた。
「ま、まさか──」
最早、悪意しか見えない悪魔の顔でこちらでこう告げた
「ドンマイ! いつかいい事あるって!」
私は全力で翔くんの元へ駆け出した。
──────
「えーと……? 翔くんはここかな?」
私は今街の中心にある商店街前の交差点に来ていた。
先ほど翔くんの家に来たのだが、留守だったので、それならばとここに来たのだ。
しかし、流石は街の中心部、観光客や主婦、学生達で賑わっており、おかげで翔くんは見つかる気配すら無かった。
「やっぱり、もう一回電話してみようかな……さっきは出たと思ったんだけどな〜」
先程私は、抵抗はあったのだが、誤解を解くためにも翔くんに電話をしてみたのだ。
だが、出たと思ったら、何度私が声をかけても、まるで老人のような荒い息と地面を弱々しく叩く靴からの反響しか聞こえなかった。
挙げ句の果てには、潰れたような音が響いて連絡が途絶えてしまった。
「──きゃっ」
突然目の前にいたサラリーマンと衝突してしまったようだ。
「すみません! ちょっと考え事をしてて……怪我は無いですか?」
私は咄嗟に謝った。
するとサラリーマンは優しい笑顔で言った。
「いえいえ、こちらこそ突然ぶつかって申し訳ありま──」
ふと、サラリーマンから出ていた天使の様な顔が消え、恐怖に怯えた顔へと変貌した。
「──危ないっ!! 逃げろ!!」
──いきなり、サラリーマンは両手で私を前方へ強く押し退けた。
よほど焦っていたのだろう、強く押した勢いで電柱に頭を打ってしまった。
「いたたたた……いきなりどう──」
私がサラリーマンがいた方を見るとそこには二つに分かれた男の死体がドス黒い血の池に転がっていた。
さらに、その上には人間とは思えない様な歪な形をした黒い生物が呻き声を挙げながら血で染められたヤイバのような手をこちらに向けながら歩み寄って来た
「──っ!! ……ひっ!」
無残な死体を見たときの嘔吐感、恐怖で停止した足、普通の日常ならありえない不可解な状況が私を焦らせた。
「──いやっ! こ、来ないで……!!」
それでも、止まらない影の脚は一層私の恐怖を煽らせた。
「──凛! そこから逃げろ!!」
──っ! この声、この感じ……私がずっと待っていたこの響きは──
「その声……翔くんなの⁉︎」
彼は、建物の屋根の上から私を見下ろしていた。
どうやら、翔くんは建物の上に避難していたようだ。
よかった……生きていた……本当によかった……もし、こいつらに殺されていたらどうしようって思ってた……
やっと、会えたんだ……
「──っ!! 凛! 後ろだ!!」
「──へ」
後ろを振り返ると、あの影が私の目の前で大きな死神の鎌を振り下ろす直前であった。
(──そんな……もう私、翔くんとバイバイしなくちゃいけないの? …………嫌だよ……嫌だ……イヤダイヤダイヤダいヤダイやダ!!)
翔くんが涙を流しながら何かを叫びながら私に手を伸ばしている
その時私は悟ったのだ。
あぁ……おそらく私、もう殺される直前の瞬間なんだな……
人は死ぬ瞬間、自分の脳にある生まれてからの全ての記憶がまるで映画のフィルムのような映像が見えるという言い伝えがある。
だが、私にはそんなものは流れて欲しくはない。
今、この瞬間、翔くんが目の前にいるというこの光景が最後まで目に焼き付いてくれれば私はもうそれで満足なのだ。
私は覚悟を決めて次のフレームの痛みに身を備えた。
「──っ! ……っ?」
こ、来ない……?
いくら経っても神経が反応しないのである。
それは最早、自分はもう死んでいるのではとも錯覚する程である。
私は恐る恐る後ろを見た。
「──っ!! 翔……くん……?」
私の目の前には赤い剣の様なものを持った翔くんと紅と黒で混ざりあったヘドロが翔くんの足で踏みつけられていた。
「やぁ! お嬢さん……怪我は無いかい?」
翔くんは純粋で不気味で可憐で残酷な笑顔を私に見せつけてきた
はい!おはようごさいますこんにちはこんばんは!ルナサです!
もうすぐ夏休みですね。
皆さんはこの二ヶ月をどう過ごすのでしょうか?
僕は小説を書きながらクラブと塾をこなす予定でございます。
夏はとにかく暑いので、熱中症をきをつけたいですね。
まぁそんな近況報告は置いといて、一つこの物語について注意を……
この物語は決してシリアスオンリーではなく、きちんとギャグ(多分こっちメインのことが多いかも)もあるのでご安心を(?)
それでは皆さん!次回は鋼で創る神様への贈り物で会いましょう!




