少女と影と少年と
俺は普通の高校に通うごく普通の生徒、霧島 翔だ。
俺が夕飯の食材を買っている時、もう死んだはずの少女の姿を目撃した。
追いかけるのに夢中になっていた俺は、背後から近づいて来る少女の仲間の黒い影に気づかなかった。
俺は黒い影の攻撃をなんとか躱していたらいつの間にか──
「──ギャァァァ!! タズゲデママァァァ!!」
百体弱いる影に追いかけられていた。
「ナンデ!! ドウシテコウナッタ!! ドウシテコウナッタ!!」
理由は明確、あの少女に変態だと誤解したからだろう。
だが、百体近くの影達を出し、襲わせるなんて理不尽はこの世で聞いたことはない。
とにかく、こんなバケモノを沢山相手してたら絶対に殺される。
俺はしばらく狭い路地を彷徨いながら逃げていた。
「ん? 待て……こんな狭い路地挟まれたら終わりじゃね──」
これまでこんなにも綺麗なフラグ回収は誰も見たことがないだろう。
待ってましたと言いたげに前方から影が飛び出し、腕を鎌の形に変えこっちに振り下ろしてきた。
「キシャアアア!!」
響く金切り声。
俺は咄嗟に剣を構え、迎撃した。
──だが、
「うわっ!!」
なんと影の圧倒的な力で体ごと吹っ飛ばされたのだ。
別にこちらが遅かったわけではなく、タイミングは完璧であった。
むしろ、これで押し切られた方が不思議な程であった。
だが、よく見ると普通の影とは少し違う姿をしていた。
目付きはさっき追いかけた影よりも引き締まっており、体は少し紅くなり、体格も綺麗であった。
──恐らくこの影はいわゆる「主」という類であろう。
普通に対峙すれば勝てない相手ではないが、今は状況が悪過ぎる。
「仕方ない……ひとまず逃げ──」
すると後ろからあの影達がワシャワシャ現れた。
「…っ」
最早逃げ場が無いと思われたこの状況……翔はある考えが頭を過ぎった
(──そういや俺が影を初めて影を倒した時、何故か刃がない剣から刃が出てきたな……もしかしたら──)
そう思った刹那、紅い影が飛び出し、それに続くように他の影も反対方向から襲いかかった。
そして──
「銃で俺を吹き飛ばせ──!!」
俺は無駄だとわかって地面に向かって剣を突きつけ叫んだ。
──すると、剣がいきなりバズーカ砲のような形になり、特大の光線を打ち出した。
予期せぬ爆発で慄く影達の姿は一瞬で小さくなり、剣から放たれた衝撃の反作用で吹っ飛ばされた俺はさっきいた路地裏の隣にあった家の屋根の上にいた。
恐る恐る路地裏の様子を見ると、影達はこっちを見上げていた。
──いや、よく見たらだんだん奴らの姿が大きく見えるようになってきた。
「……もしかして、こいつら壁まで登れるのか!?」
信じたくなかったが、全くのその通りのようで、先ほどの紅い影が一番に壁を登りきったのだ。
「グシャァァァ!!」
頭に響くような叫びと共に、紅い影は小さい手を大きな鎌へと変化し、こちらの首を刈り取ってきた──
「──ひっ‼︎」
無意識にも身体を伏せ、情けない声をあげ、逃げ出した。
だが、それも無理はない。
ただの一般人がここまで死にそうになることはそうそうない。
俺は家と家の屋根を飛び越え、黒い影との命懸けの追いかけっこをしていた。
──────
しーんとしている路地裏で私は白兎の人形とお話をしていた。
「ねぇねぇ! 今日ね! 変な人と会ったんだよ! 今ねその人を殺しているところなの!」
私はウキウキしながら喋っていた──
何でだろう……このお人形さんはいつもと違って悲しそうな顔をしている気がした。
──ふと、頬から雫が落ちるのを感じ、慌てて私は拭った。
「ううん……大丈夫……あの人はきっと生きている……だって“翔君”はそういう人だもん……」
何を言っているんだろう……ただ、私はあの人から言われたことのまましているだけなのに……でも、この子さえ──笑ってくれるなら──
私は──
──────
「──うぉん⁉︎ あんぶねぇ!!」
上から突如現れた鎌を俺はギリギリのところで避けた。
そう俺は未だ奴らとの逃走劇を繰り広げていた。
あれから、何分たっただろう……いや、何十分かもしれない。
そろそろ体力も底を尽きる頃だ……今すぐにも一息つきたいところだが──
「キシャアアア!!」
この紅い影が予想以上にしつこく、休もうにも休めず俺は少しずつ重くなってゆく足を死に物狂いで運んでいた。
だが、逃げるのに気が入ってしまい、いつの間にか高層のビルに登っていて、逃げ道を自分で壊していることに俺は気づいていなかった。
そして──
「はぁ……はぁ……もうダメだ……走れない……」
俺はとうとう地に跪いた。
足は鉛の塊のように重く、呼吸も全くできない。
目を開けると紅い影が目の前にいた。
奴は先ほどの鎌を天に向かって伸びていた。
もういいや……どうせあの時死ぬはずの命だったんだ……これで、あいつのもとに……
──その時、何かが斬られる音がして、俺の意識はふと消え去った。
──────
(なんだ? 誰かが走ってる……)
屋根に叩きつけられる足音と荒い息で俺は意識を取り戻した。
(だけど走ってるって誰が? 屋根にいるのは俺とあいつしかいないはず……)
だが、骨と筋肉が動いている感覚、今にも吐き出しそうな倦怠感が俺の今の状況を説明した。
(マジか……走ってるじゃん……俺今走ってるじゃん……あの傷でよく走れるもんだよ……ん? っていうか)
何かがおかしいと思い俺は一旦足を止め、自身の体をまさぐった。
だか、何かに斬られた跡も血一滴無かった。
(もしかしてあの時斬ったのは──)
すると後ろから突然の断末魔が聞こえてきた。
「助けてくれ──!!」
「ぐわあぁぁぁ──!」
「や、やめろ! あぁぁぁ──!!」
「!! な、何だ?」
俺は不意にきた助けを求める声に無意識に反応し、街の方を見た。
──そこには“あの日”以来の惨劇が目に焼き付いた──逃げ惑う人々、それを追う無数の影、大通りのあちらこちらには何人殺されたか分からないほどの死人の山と彼らの血の池──
俺はその光景を見て膝を落とした。
「俺のせいで……俺のせいでこんなことに……」
いくつもの罪悪感に膝を地に落とし、そして目の前の地獄絵図に嘔吐感を催した。
──だがその時、ある人の姿が目を過ぎった。
「凛!!」
そう、俺のクラスメートの凛の姿があったのだ。
──だが、
「キエエエエ!!」
あの紅い影が彼女の目の前にいた。
「──っ! おい! 凛!! そこから逃げろ!!」
「!! その声……翔くんなの⁉︎」
凛がこちらに振り向いた瞬間──
「キシャアアア!!」
なんと、紅い影が凛に向かって襲いかかってきたのだ。
「──っ!! おい! 凛! 後ろだ!!」
「──へ?」
だが、もう遅かった。
最早、その死神は凛を捉え、首元を刈り取る前であった。
「やめろおおおおおおお──」
その時、俺の中の何かが壊れた──
はい!
こんにちはルナサです!
度重なるテストで全く小説に手をつけられませんでした……
今回は絵にならないと説明出来なさそうな場面が度々あってもし訳が分からなかったら本当に申し訳ありません……
少し短いですが、今回の後書きはここまでにします。
次回もお楽しみに!




