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異世界ツアー2 ~異世界の未来とその趨勢~  作者: 黒田明人
2章 王国内紛という名の独立戦争
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8話 武器展示会

 

 

戦闘系各団体は、にわかに熱狂して各関連団体に連絡を取り合い、慌しく動き出す。

様々な合言葉が飛び交い、あちこちの倉庫から見た事も無い武器の数々が躍り出る。

それらは各団体のメンバー達によって運ばれ、あらゆる方向に向けて、始動の為の準備に取り掛かっていた。


趣味の者達は、この平和な時期でも仮想の戦いを夢に見て、様々な奇想兵器の立案や試作を行っており、それらの集大成は日の目を見る事なく倉庫の肥やしになっていた。それが遂に表舞台に立つのだ。愛する兵器達の晴れ舞台を飾ろうと、彼らは喜び勇んで準備に取り掛かる。


それは奇しくも、あちらの世界で年に2回行われる行事の如く、彼らは熱中して戦いの準備をしていたのである。

それを黙って見ている他の者達ではない。

なんせ領民の殆どと言っても過言じゃないぐらいに、その手の趣味持ちが多い特色を持つ領地なのだ。

余程の非戦闘向きの趣味じゃない限り、戦いに使えないかと、お蔵入りになった倉庫の備品の数々の調査に入る。

中には偶然、投げるとヤバいものがあったりもしたが・・


「アンタ、それ、ヤバいわよ」

「いけるかな、粉塵爆発」

「だからさ、小麦粉がもったいないって言ってんのよ」

「クラスターやるって言ってたし、これ、投げたら相乗効果で、ふふふっ」

「アンタ、旦那がそっちの趣味だから染められたね」

「今行くわよ、アンター」

「はぁぁ、仕方が無いか」


「よーし、こいつの出番が遂に来たー」

「今度は何よ」

「あのね、てんぷら鍋の新作でさ、それを戦闘系の奴と色々考えててさ」

「早い話が何なのよ」

「煮えたぎった油をそのままミサイルにして」

「うへぇぇ、何よそれ」

「だからね、ミサイルを半分にしたようなてんぷら鍋で、使った後は武器になるって」

「下らない・・下らないわ」


結局、ありとあらゆる奇想兵器の数々は、襲い掛かる狼の群れを完全に殲滅した・・いや、まさしくオーバーキルであった。

なんせ想定される敵があっちの軍であり、兵器であるからだ。

対戦車用の兵器を食らえば、どんな奴も粉砕するだろうし、対飛行場用の親子爆弾など食らえば、大群とてひとたまりもない。

科学と魔法をミックスした兵器もお目見えし、理解の及ばないような罠も炸裂した。

魔法の発動を探知して爆発する地雷や、小型のビームライフルも活躍していた。

彼らの頭上を飛び回り、魔法を放つ魔導バード・・こんなの誰が考えたのか・・


確かに相手にも飛び道具はありはする。

だがその遥か先から飛んでくる、見た事もない武器がいきなり炸裂するのだ。そんなもの、どうしようもありはしない。

しかもそれがもう1度炸裂し、その時には火炎地獄が周囲に広がる。

まるで伝説の最上級の火炎魔法でも撃たれたみたいに、侵攻しようとしたある領主軍は壊滅した。

そんなのが5つも飛んできて、それぞれに爆発したのだから。


残党はごく僅か。その誰もが地獄から戻ったかのように小刻みに震えており、二度と戦闘には向かない存在に成り果てていた。

欲にかられて全軍を送り出した各領主達は、誰も戻らない現状に呆然とするばかり。軍の消えた領地など、他国の餌食になるだけだ。


ちゃっかりと南の国は動き出し、亡命領主を担ぎ出して旗頭とし、王国の領土をかすめとろうとし始める。

ここに王国の版図は104年ぶりに縮小しようとしていた。

そうなれば支援の約束など無かったかのように、西の国も東の国も動き出す。

そんな彼らの動きは把握していたが、混ざる意味など無いとばかりに放置していた、我らがブルマン領民達だった。


「もうこれ独立いったんじゃね?」

「だろうな。王国はオレ達とか相手している場合じゃねぇし」

「お前ならどうする」

「決まってるさ。さっさと独立を承認して、軍事同盟を結び、他国への対抗を頼む。見返りは領地の割譲だ」

「お前が王様なら良かったのにな」

「ふん、オレが王ならこんな事にはしないさ。独立したいならしろと言うだけさ。どうせ他の領にはやれない事、だから王国としてつるんでるんだしな」

「カラスより入電」

「なんだ、今更」

「飛行船、数14、急速接近中」

「おいおい、他国の動き無視してんのかよ」

「どうする」

「第一防衛ラインを超えたら撃墜だ」

「砦へ通達、飛行船接近、防衛ラインを超えたら撃て」


「目標確認」

「上げ角調整よし」

「照準よし」

「てぇぇぇ」

「あのよ、オレ、思うんだけどな」

「なんだ」

「これ、妙に威力強くねぇか」

「そういやそうだな」

「前に聞いたのは飛行船にパルス3発とか言ってたろ」

「1発で粉砕したな」

「また来たぞ」

「後で守護神に聞いてみようぜ・・上げ角調整よし」

「ああ、そうしようか・・照準よし」

「てぇぇぇ」

「号令係、暇そうだな」

「いいよ、気分出るし」

「そろそろ交代じゃね?」

「もうそんな時間か、じゃ、メシ行こうぜ」

「お、来た来た。我ら3名、交代」

「ういっす、我ら3名、引継ぎ」

「お疲れ」

「飛行船また来ると良いな」

「え、撃ったんすか」

「2発な」

「うぇぇ、いいなぁぁ」

「んじゃあな」

「おつですぅ」


彼ら砦の射撃部隊は、3名の6交代勤務に就く。

それが12砦なので216名の部隊になっている。

仕事を終えた彼らは、そのまま地下までエレベータで降り、専用の宿舎で食事を摂る。そして次の出動の時まで自由に過ごすのだ。

もちろん、砦には他にも働く者は多い。食事もそうだし、宿舎の掃除や備品の交換など、それぞれに部隊が編成されていて、交代で任務に就いている。

とは言うものの、普段は閑職と言われる暇な部署であり、今回のような事は滅多に無い事だと、皆は戦闘に焦がれている。

だからこそ飛行船への攻撃や、馬車への攻撃をあんなに軽く話せるのだ。

それは奇想兵器をぶっ放した奴らにしても同じだ。

人生初にして最後になるかも知れない戦いの場に、余計な感情などもったいないと・・

魔物相手とは違う、本物の戦争に、彼らは酔っていたのかも知れない。

それこそが、その性癖こそが、彼らが趣味の者達と呼ばれる所以なのかも知れない。


「カラスより入電」

「次は何だ」

「遥か東より飛竜の群れの接近だそうです」

「何、ファイヤードラゴンか」

「ワイバーンだ」

「今、日本語なんだからカタカナで言ってくれよ」

「ああ、気を付けるが、どうする」

「どうすると言ってもな・・魔物は守護神に連絡する決まりだろ」

「素材そっくりだしな」

「うし、連絡して見学だ」

「酒もってこーい」

「こら、ふざけすぎだ」


ワイバーンか、久しぶりだな、クククッ・・


平常運転になってるようです。

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