34話 時至りて
ちょっと胸糞の悪い話です。
「はーい、みなさーん。良い子にしていないとああなっちゃうんですよ」
「うわぁぁ、何あの人達」
「服着ろよ」
「気持ち悪ーい」
「うわ、こっち来たぁ」
「臭い、臭いよ、こいつ」
「これらはねぇ、元は人間だったんだけど、悪い事をしたから魔物になっちゃったのよ」
「ぼく、悪い事しない」
「あたしもしない」
★
「しかしどうにもあざといですな」
「あちらの世界の某国を見習ったそうですが」
「向こうの世界ではこんな事をして、他国を憎むように仕向けてんのか」
「さすがに敵を憎むようにはやれないな」
「ええ、これは自らを戒める為の措置ですからね」
「アメとムチか、そうだよな。都市部の生活まさにアメだ」
「辺境開発も進んでるんだろ」
「今な、隣の大陸への調査が入ったらしい」
「あれ、敵も動物も何も居ないとか言って無かったか」
「埋蔵資源やら、マナ濃度やら、後は汚染物質の調査だそうだ」
「ああ、ばい煙垂れ流しの弊害調査か、ろくな事をしなかったな」
「調査の後、いけるようなら移民を募るそうだ」
「とは言うものの、行くのは降伏した奴らと」
「ああ、離してみて様子を見る事になるだろうな」
「抗うようなら今度こそ」
「なぁに、武装解除して、その手の物を排除してやればいいさ」
「第二の人物園か」
「そこはサファリパークと言ってくれよ」
★☆★
「マホロバ地下刑務所の様子はどうだ」
「最近、少し上昇傾向にあるようですな」
「熱さをもう忘れたか」
「刑務官の消費が激しいですけど」
「構わんさ。ストレスの溜まる仕事なんだ、少しぐらい減ってもな」
「後は子供が多くて」
「再生局はどう言っている」
「そりゃあそこは閑職ですから、来れば喜んで処置してますが」
「なら良いだろ」
「そういや、サファリが開園するそうですよ」
「うちからもかなり送ったが、増えるようならまた送らんとな」
★☆★
「初代皇帝も霊廟入りか」
「あれって何なんですかね。墓とは言いますけど」
「墓さ、入ったら二度と出て来ないからな」
「中ってどうなってるんでしょう」
「興味があるのか」
「あ、はい、守護神」
「特別に見学させてやろう」
「本当ですか?ありかとうございます」
「あいつ、送られたよ」
「余計な興味は身を滅ぼす、良い教訓だろ」
「そうだな。あいつもあの興味が無ければ・・」
「見境無しで我慢も効かない。あんなのは秩序を乱すだけだ」
「そういやそうだな」
★☆★
「霊廟の中がこんな事になってるなんて」
「お前、新入りか」
「え、え、何・・」
「なんだ、知らずに連れて来られたのか。ここは地の果て、サファリの地」
「う・・そ・・」
「お、お前、マナ持ちか。もてるぞ、女には一生苦労はしない。良いよなぁ」
「え、本当に?」
「おーい、マナ持ちの新入りだぁぁ」
「「うわぁぁぁ、アタシが先よぉぉぉ」」
「助け・・服が・・痛い・・あっ・・そこは・・そんなに・・やめて」
「いやいや、女は怖いねぇ」
★☆★
「うわぁ、あれ、何してるの?」
「あれはね、交尾と言って・・」
「今時はあんなのか」
「ああ、性教育だとよ」
「しっかしよ、ヒューマンって名前の魔物って思い込んでるぜ」
「人間もどきよりはましだろ」
「そりゃあな」
「それに、ヒューマンって言葉、あっちじゃ人間を指すらしいし。ほら、人間扱い」
「ものも言い様だな」
★☆★
「う・・私は・・ここは・・」
「起きたか、ユウカ、ご苦労だったな」
「父さん・・じゃあここは」
「霊廟の中さ」
「そうか、私は倒れて・・え、この身体は」
「元の身体に戻したさ。もう年を取る身体は終わりだ」
「じゃあこれからはずっと」
「ああ、オレ達と共にずっと一緒だ」
「はい」
「外に出る時は【変装】必須な」
「あ、そうですね」
「起きましたね」
「おう、お前、まだ研究やってんのか」
「くすくす、これから半永久的に研究がやれる、良い身体、ありがとうございます」
「とは言うものの、上にこっそり流すんだろ」
「くすくすくす、まあ、【変装】はしますよ」
「ならそれで良い。好きな事をして好きに過ごせばそれでな」
「ええ、そうしますとも」
★☆★
「世は全て事も無しか」
「ねぇ、あなた、久しぶりにあっちの観光旅行でもしない?」
「そうだなぁ、あちらも最近、ご無沙汰だしな」
「もう留学の必要も無くなったし、汚染物質のある世界だからと、最近行ってないでしょ」
「ああ、上ももう良いって言ってたし」
「だからね、最後の観光旅行。2人きりで」
「ホテル観光か、クククッ」
「そういうのも良いわね。まあ、こっちも似たような事にはなってるけど」
「さて、そう言う事なら、完全防備をして行くぞ」
「え、アタシまだ巧く抜けられないよ」
「サポートはするさ」
《うわ、これは酷いわね・・この身体で来て正解だな。この辺り、生存は無理だろ・・廃墟に、いつの間にこんな・・この壊れ具合、何かの攻撃だな・・ミサイルとか・・ああ、あり得るな。しかしこの分じゃもう・・残念ね、こっちが無くなればあっちも・・上も手の施しようが無いそうだ。確かに天変地異クラスの修復なら可能だけど、それをやるにはマナが必要で、こっちには無いから向こうに負担を掛けるそうだ・・それでも、共倒れよりは・・ああ、少しやってみる。先に帰すぞ・・頑張って・・ああ》
それから彼がどんな事をしたのか分からないが、戻るなり身体に潜って深く眠り込む。
身体の維持は専門の医師が執り行い、何年も昏々と眠り続けた。
その頃、向こうでは奇跡が起こったと大喜びだった。
惑星の自浄効果だと発表が成され、こういう事になっても自然に回復すると思われ、またしても世界は汚泥にまみれる事になる。
それでも一度は洗浄された世界なので、そうすぐに元には戻らず、ある程度の期間は長持ちしたようである。
しかし・・
会話ばかりで申し訳ないです。




