32話 戦後処理
荒廃した土地を魔導ブルドーザーが走り回り、廃材を運んでいく。
ここは元東の国、スリエン王国があったはずの場所。
死体は保護区の魔物の餌となり、ここに新たな都市が建設の予定になっている。
イースト・ヤマトと名付けられる予定の都市で、この周辺には魔物の保護区があちこちに作られる事になっている。
既にこことヤマトを結ぶリニア沿線が延びつつあり、多くの人員が作業に就いている。
乱獲された飛竜は少数になっていたが、今は保護区で過ごしている。
この土地も汚染物質が多く存在し、除染には苦労した土地だ。
だが今は綺麗に拭い取られたように、かつての星の一部のようになっている。
「みんな死んだか」
「ボクタチ、生きてても仕方が無いって。今までが楽園でこれから地獄になるなら、楽園のうちに死にたいって」
「そうか」
「オレは地獄でも生きていくぜ」
「残ったか」
「アント民もまだ残ってるしな、そいつらと精々仲良くするさ」
「あれらも消えゆく定め。共に消えるも良かろう」
「楽しかったなぁ、くっくっくっ」
大陸全土に対しての、ヤマト国の怒りが爆発した結果、全て国は崩壊した。
活躍した武器兵器の類は、マホロバ地下に眠る事になっている。
今、その地下には、広大な格納庫が作られていて、その片隅にアント民と統率者の住まいがある。
オーク農場は各都市地下にそれぞれ作られ、マホロバではもう用が無いのだ。
マナ持ちは既に移され、ここにいるのは作業にも向かない者達のみ。
僅かに残った統率者は、残りの人生をアント民らと共に過ごす事になる。
かつての戦いを思い出しながら、彼らは今日もアント民と戯れる。
マホロバは研究と実験の場となり、これからの未来を切り開いていく事になっている。
城の前に立つのは守護神とその妻、長男とその従者、そして2人の女性。
更にその後ろから1人・・
「これからは研究三昧の日々になりそうですよ」
「何も無くなっちまったな」
「必要だったけど、寂しいわね」
「あれだけの戦力差があったと言うのに、結局、3年も掛かっちまったな」
「いえいえ、たった3年で統一なら上等でしょ」
「オレのやった事は、ただの生殺しに過ぎなかったのか。成熟を願ったのは過ちだったのか」
「隣が良く見えるのは何処も同じのようです。自分がそこに至れば良いだけなのに、横取りを考える困った人たち。やはり滅んで良かったのですよ」
「ふうっ、これからは隠居暮らしだな」
「おや、立たないんですか?統一王朝ヤマトですよ。そのトップにお2人と言うのは噂になってますけど」
「ユウカ、任せたぞ」
「ユウヤにしてくれたら」
「くすくす、まだなんですね」
「フェン、説得は無理だったのか」
「ねぇ、ユウ、僕はこう呼ぶから関係ないよね」
「あはは、うん、フェン、僕達はずっと一緒だよ」
「良いカップルになりそうだな」
「冗談でもそう言うのは無しにしてくれる?父さん」
「いや、悪いとは思うが、絵面的には似合いのカップルだしな」
「くすくす」
「それぐらいなら取ってくれれば良かったのに」
「お、そんな願望があるのか。よし、取ってやるからフェンの奥さんになるか?」
「うわあぁ、冗談が通じないよ、この人」
「あははっ、それは無理よ」
「「兄ちゃんが姉ちゃんになるの?」」
「ならないっ、ならないから」
「奥さん」
「次の奥さん」
「うっ・・」
「懐かしい台詞だな」
「あは、そうね」
★☆★
こうして戦いは終わり、大陸には平穏が訪れた。
もう少しお付き合いください。




