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異世界ツアー2 ~異世界の未来とその趨勢~  作者: 黒田明人
5章 第二次対連合軍紛争勃発
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27話 ヒマワリ退役

 

 

「ねぇ、フェンリルの扱いが酷くない?」

「僕はこのままで良いよ」

「こう言ってるが」

「そんな便利な道具扱いされて本当に良いの?」

「だって、連続で・・だし」

「それにな、このほうが長生きするだろ」

「まあ、本人がそれで良いならまぁ」

「そういう訳でもふもふタイムだ」

「あは」


最近の彼はフェンリルを倉庫常駐型にしてしまい、だからミカが見かねて文句を言ったのである。

だけどフェンリルにしてみれば、連続で彼にもふもふされる事になり、ひたすら心地良さが続くと言う、安楽生活を享受していたから文句が出なかった。

それどころか、姉妹もそれを羨ましがり、ミカにおねだりするようになってしまう。


「カバンの中のほうが良いなんて、なんか寂しいわ」

「なら、しょっちゅう可愛がってやれば良いだろ」

「それしかないのね」

「寿命の問題もあるからな、いかに幼くしたとはいえ、もうかなり時が過ぎたろ」

「そう・・だったわね」

「しかし、お前は変わらんな」

「もしかして、同じになったのかしら」

「だとすると、ありがたいな」

「あら、それは何かの合図?」

「おくさーん、それはないよぅ」

「くすくす、はいはい」


   ★☆★


マナの構成物質の解析結果は魔法の効果の原理に迫り、遂にこの世界で初の魔法解析にと至る。

つまり、マナがどういう作用を起こして現象を構築しているのを解明する新しい学問となった。

魔法解析学、その研究の途中に解析された魔法【浮遊】

これは物体を浮かせる魔法であるが、その原理は重力制御である事が判明したのである。

なのでこれを効率的に用いれば、大気圏外への移動も可能なると思われた。


『あの空の彼方へ』を合言葉に、10年の歳月を掛けて遂に空の彼方へ届く。

異世界初の衛星軌道への到達はひっそりと行われ、仲間内での祝いに留まった。

本来なら大々的に祝いたいが、これ以上周辺諸国を刺激する事は拙いとの判断でそう決まったのだった。

本来なら同時に静止衛星もやりたかったが、あちらの世界とは少し事情が異なるようで、制止衛星軌道の割り出しに困難を極め、仕方なく重力制御内蔵の『静止させる衛星』という、珍妙な衛星に留まった。


彼提供の『邪神の卵』8個でMP6.24億の容量と、魔導発電を活用した、超長期での活動を可能とした衛星で、耐用年数は50年と推定された。

もちろん、外殻の破損などは降下しての修理も効くような、はっきり言って宇宙要塞とも言うべき代物ではあるが。

しかも有人なので、時々交代要員が往復するので、宇宙ステーションと言ったほうが良いかも知れない。


後は【偽装】の解析での【光学迷彩】技術も発展し、補給用の小型宇宙船は、浮いてすぐに見えなくなるという、近未来的な乗り物となる。

そうなるともう、飛行船の時代では無いかと思われたが、ヒマワリだけは最後まで残された。

それは初期の頃からの記念すべき飛行船であり、改装に改装を重ねても運用を続けたいという、使用者の強い想いがあったからだ。


当時15才で搭乗員に抜擢され、今では隊長になった彼もその想いは強く、何としても飛ばせ続けたいという、その想いも理由のひとつになっていた。

もう高空は無理だと言われても、乗り続けたいという意志を尊重し、移動の時は比較的低空を飛ぶ事になっていた。

そして任務中の高度に上がる時には、彼に輸入してもらった特製の酸素ボンベを愛用していたのである。

その隊長もさすがに年には勝てず、後進に道を譲ってはどうかと同期の連中に言われる日々だった。


そして事件が起きる。前紛争から13年目の事、科学文明に走る周辺諸国のうちの1国が、高射砲の開発に成功したのである。

かつては高度1万に静止していたヒマワリだったが、今では低空での調査を主にやっていた。

それでも今までは周辺国に到達する武器などが無かったのと、隊長への思いやりから比較的低空の高度800メートルを飛行中、突然後部甲板に異物が当たり、点検業務中の数人が死傷、慌てて浮上するも第2撃が側面を掠め、必死で帰還するという騒ぎがあった。

本来ならば届かないはずの攻撃に慌て、新鋭機での調査の結果、それが判明したのであった。

極秘裏の開発だったらしく、さしもの情報部もそれを掴めず、まんまとしてやられたものである。


そして隊長は退任した。67才になっていた彼は、自分の想いが事件を生んだと責任を感じたが、皆がそれを訂正し励ました。

そしてヒマワリは綺麗に修復され、そのまま記念艦として残される事が決まったのである。

そこには歴任の隊長の名を刻んだモニュメントがあり、彼の名も最後に記されていた。

ヤマト国の建国に関わった飛行船、その最後のページはこうして閉じたのである。


しかしそうなると他国の調査に困ると思っていると、ある上申が届く。

見ればとんでもない物が出来上がっていた。新型航空母船【アマテラス】である。

研究結果の重力制御技術を用い、高度3万で長期索敵任務を可能とし、上部には飛行甲板とマナスタンドを備え付け、下部には【シールド】による防御も備え、更には【ビーム】砲や、新技術の【光学迷彩】まで備える。

他にも【魔導爆雷】を投下爆弾風に改良した物を投下可能な射出口や、魔導発電システム、彼からの譲渡を受けた【邪神の卵】を2個備え、航続距離は惑星18周という、これ1隻で世界征服も可能じゃね?と言うような代物だ。


確かに彼は卵を2つ渡したが、それから何の音沙汰も無かったので、まだ建設中とばかり思っていたという。

武器作りおたくは作る事が好きなのであって、運用は考えてない。

とにかく新しい武器や装備の開発に余念が無く、出来た物は倉庫に突っ込んで、また新たな開発に取り組んでいた。

本来ならそのまましばらくお蔵入りの予定であったが、ヒマワリ大破の知らせを受けて、作戦本部に上申。そして就航が急遽決まったのであった。


「あいつら、完成しても言わないんだからな」

「くすくす、もの造りが趣味なので、使う事は考えてないんですね」

「一度、倉庫の調査をしないといかんな。どんな不思議な武器が出て来るか」

「くすくすくす」


彼は半ば本気でそう思い、後日調査の結果、本当に色々な物が出てきたのであった。


「重力制御の個人用ヘリコプター?これ、ヤバい代物じゃ・・倉庫にナイナイ」

「くすくす、あれにそっくりですもんね」

「ハンドガンタイプのビーム?こんなの役に立つの?」

「しかもそれ、自力供給タイプのようですね」

「普通に魔法で使ったほうが良いような」

「くすくす、確かに」

「これはヤバいだろ」

「えーと、光学迷彩の服、ですか。これは偵察用には良いようですが」

「腰に水中カメラがくっ付いて無ければな」

「え、これって、もしかして」

「何年か前に事件があってな、まだ犯人は見つかってないんだが」

「じゃあこれ、証拠物件ですね」

「魔皇子の接待の件で、ヤマトの湯を貸切にしたんだが、盗撮写真が巷に流れてな」

「じゃあ女性の・・」

「いや、魔皇子のだ」

「うぷっ、くっくっくっ」

「ミカが言ってたよ。あれ以来、接待が無いから独り遊び用に配られてるって」

「うわぁ、赤裸々な話ですね」

「お前、嫁さんはどうなったんだ」

「えっと、今、3人目妊娠中です」

「中々お盛んだな」

「一応、名くらいは残してやろうと思いましてね」

「本家はどうなったんだ」

「風の便りですけど、どうやら没落したようですね」

「優秀な次男を出向させるからだ」

「くすくす、感謝してますよ。親にも貴方にも」


他にも色々出てきたが、怪しいものばかりで没収と決まった。後、犯人は判明したが、そのまま闇に葬られた。犯人が身近に居たからである。


「仕方が無いじゃない、あれ以来接待はまだかまだかとせっつかれちゃってさ」

「けど、それはヤマトの湯の後だろ?」

「アタシのコレクションの放出よ」

「そんなの隠れて撮らなくても」

「どんなに鼻の下が伸びているのかと思ってね」

「あれは仕事だろ」

「そうかなぁ」

「なら、確かめてみるか」

「そうね」


(守)職権乱用?いえ、違います。魔皇子の妹という名目なので、外交上の政治的判断です。

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