21話 作戦は?
魔導自走対空砲が木の柱のようなものを撃ち出す。狙いは飛行船の皮袋。近くまで飛んだ事に驚き、慌てて飛行船を下がらせる。なんせ虎の子の飛行船。うっかり皮が破れてはどうにもならぬと・・
「狙いバッチリ、下がりますね」
「わざと外すのも大変そうだな」
「ええ、うっかり命中させないようにですからね」
「さて、いよいよ魔導歩兵の出番か」
「魔物の素材が凄まじい事になってますよ。あいつら張り切って狩りまくってましたから」
「余程、出番が待ち遠しかったんだな」
「殺さない武器と言うのは、やはり良いアイディアだったですね」
「人員確保にはな」
「ま、いずれは経験が必要でしょうが、今はまだ良いですよね」
「構わんさ。それに、殺したい奴なら地下に居るだろう?あいつらなら喜んで殺してくれるさ」
「適材適所と言えばそうですが、よくぞ彼らを従わせられましたね」
「あいつらは自分の性癖を理解しているのさ。だから普通では居場所が無いと思っていてな、与えてやるだけでいいのさ」
「じゃあ今頃はまた」
「そうだな、古くなった部品は潰して捨てる。そう言う事をやっているだろうな」
「例え話で助かります」
「慣れんか、さすがに」
「ええ、ちょっときついです」
「オレはもう慣れたがな」
「申し訳無いです」
「いいさ」
そしていよいよ、各々の制服に身を包んだ者達が現れる。
「第一魔導中隊、準備完了」
「第二魔導中隊、完了でっす」
「第三もおっけーでっせ」
「第四もいいですよ」
「第五到着、いけますよ」
「どうにもバラバラだな」
「そら、制服もバラバラですやん」
「はっはっはっ、そうだな。よし、まあいい。とにかく、これから模擬戦だ」
「くっくっくっ、冗談きついでんな」
「んで、作戦は?」
「鶴翼と思わせて、対称雁行、センター下がって釣り野伏」
「相手はん、そもそも陣形とかそんなん知りまへんやろ。行けるんでっか」
「お試しでな。使えるようなら色々使っていく」
「ほな、ワイは隠れる役やな」
「よし、オレも隠れるか。右な」
「ええやろ」
「よし、右雁行だ」
「左雁行だ」
「オレは逃げ役だな」
「ほんでこれ、誰が考えたんや」
「うちの子だが」
「何才でっか」
「12才だが、最近、陣形にはまっててな」
「なんや心配になってきたわ」
はっきり言って陣形はあんまり関係ないので、試験的に色々やるつもりの様子。
相手は横一列で進んで来る。
まずは前列が端から攻撃を加えていくと、内に内にと逃げていき、自然と丸っこい陣形になる。
まあ、撃たれたらバタバタ倒れるので、誰もが逃げるようになる。
対ヤマトの戦いに剣は無用の長物。
魔導銃の射程と弓の射程が近いぐらいなので、全員が弓兵と考えたほうが良いのだが、連射が効く点が弓とは違い、近付く敵は片っ端から撃たれていく。
それが下手に殺傷力のある武器ならば、致命傷にならない限りは動きは止まらない。
だが、麻痺銃にそれは通用せず、1発でも身体に当たればもう終わり。
対称雁行は広がりながら敵を包囲し、進む敵に対して中央は下がりながら攻撃をする。
左右を削られながらも中央は前進し、伏せた左右の奇襲攻撃で散々にやられてしまう。
後は内方円で周囲から殲滅するだけ。気絶した奴らはチョコチョコ間引かれていく。
専門の回収部隊である。彼らは戦闘には参加せず、こういう裏方を専門にしている。
全員、覆面をしていて、誰か誰だか分からない。だが、文句ひとつ言わず、何も喋らず、矢がかすめても平然として回収していくのである。
そういう奴らに聞き覚えがあると思うが、力の強い者達の副業のようなもの。そう、彼らは全員がアント民なのである。
同類になる者達を回収し、近くの浮遊台車で運んでいく。そして開口部に放り込めば、それらはゆっくりと降りていく。
そして地下ではとりあえず檻に入れられ、処置の時を待つのである。
「また多いでんな」
「うち、かなり減っちゃって、多めに良いかしら」
「遊びすぎちゃいますねんな」
「違うわよ、ちょっとうすのろが多くてさぁ、魔物に食べられちゃったのよ」
「変移種にでもなったんでっか」
「ああ、あれって変移種なのね。妙に大きくなっちゃって、でも、殺しちゃった」
「まだ増えるらしいな」
「ならさ、半分良いよね」
「ええでっせ」
「ありがと」
「そん代わり、おなごをぎょうさん頼んまっせ」
「アンタ何人孕ましてんのよ」
「そうでんな、先月は28人やったわ」
「人は増えたほうが良いんだろ。オレも食ってるぜ」
「男は良いねぇ、うちはそういう訳にはいかないからさ」
「その代わり、快楽数倍数十倍だろ」
「ふふふ、まあそうね」
統治者達の暗い会話は、戦闘が終わるまで続き、獲得された人員は全員に分配され、それぞれの塒に戻っていく。自らが使役する者達を連れて。
「ふうっ、さすがに多かったな」
「さすがやね、その手腕があればこそ、ワイらの下僕が増えるんや。身体労ぅてや」
「ああ、ありがとうな」
「総勢、8万8413、確かに受領しました」
「後は任せた」
「はっ、確実に」
やれやれ、精神がヤバいよもう。さて、癒してもらおうかねぇ・・疲れたよ・・
かくして今回の作戦でアント民の数はかなり増え、概算で17万程になったのである。その内、魔力持ちが約半数。
それから出力が上がり、予想年間出力が450億になったのは成果と言って良いが、西の国以外の軍は散々にその数を減らし、最後には撤退して行った。
気球船の準備は整ったものの、出発の前に撤退になったので結局は出動する事にならず、浮かないように係留しまくる事になるのだが、そのうちガスが抜けてしまう事になる。無駄な支出になったけど、また買わないとゴミになる乗り物。
次があるか無いかは分からないが、また人員を育成しての事になる。
それと平行して飛行船の数を増やす事が出来るか、それが今後の課題と思ってくれるかどうか。
「予想出力450億だとよ」
「ほお、かなり上がったな」
「これで守護神も楽になるかな」
「ずっと負担掛けっ放しだからな、早く楽にしてやりたいぜ」
「次、あるかな」
「あって欲しいぜ。可能なら余剰がやれるぐらいにな」
「また併呑になったら消費も増えるし」
「そのうち大陸統一ってか」
「相手が勝手に衰退するんだ、そうなったら嫌でもそうなるだろ」
「さて、次回に備えて倍増計画といくか」
「タヌキの皮の数え過ぎじゃないのか」
「収容施設の余剰が2500ぐらいしかないぞ」
「マナタンクがか」
「ああ、意外とマナ持ちが多くてな、杖の回収が凄かったらしくて、魔術師部隊でも居たんじゃないかって話だぜ」
「敵の魔術師も哀れだよな、魔導銃って名前の杖持ちに勝てないんだから」
「確かに杖と言えば杖だな」
「自分で魔法を構築するか、ただマナを流し込むかの違いさ」
「確かにな」
「そんなのが開発されたらヤバいな」
「対抗策は少しずつ考えているらしいな」
「ほお、さすがは戦闘系」
「さて、何とか終わったな。解散するか」
「ヤマトの民は」
「「我らが守る」」
陣形名は適当です。後、戦闘系と設備系では合言葉が少し違います。




