18話 魔界の砂
ヤマト国武器開発部署・・戦闘系団体の有志が集う、国で一番危険な部署とも言える場所。もっともその危険を味わうのは主に敵なのだが・・
その部署で今研究が進められている武器がある。
魔導ミサイルの構想は既に旧知のものとなり、今では大量生産も可能になっているのだが、それの活用が行われていた。
守護神から譲渡のあった、不思議な黒い粉・・かつて彼が邪神の卵を粉砕して出来た粉の事であるが、それからも卵は随時作られていて、都市部の要所に鎮座されていて、それから供給されたりそれに供給したりと言った具合になっているが、その粉が譲渡されたのである。
そしてそれを使った様々な武器の開発が行われていて、今日もその成果の発表が成されていた。
実は彼は例の魔皇子の件で洒落で名付けてあり、それにはこういう名が付いていた。
「まさか魔界名産が魔界の砂だとはな」
「魔皇子から友好の印だそうだ」
「こいつは凄いぜ。凄まじいマナの保有量なんだ」
「だからあっちの事は極秘事項になっているのか」
「だけどこうして友好の印と言って贈ってくれる。ありがたいよな」
「そうだな・・それで、有効利用はどうなったんだ」
「それがよ、これを微量、ロケットに詰めて発射したんだがな、魔法が暴発しちまってよ」
「つまりこの魔界の砂は、魔法を使えば反応しちまうって事か」
「それで思い付いたんだが、あいつら草原に火を放つのが好きだろ」
「おいおい、粉末攻撃かよ」
「前に空中機雷って発想があっただろ」
「風船爆弾じゃなかったか?」
「似たようなものさ。つまりな、ミニクラスの気球で粉を現場に降らせるのさ」
「それの打ち上げに使うのか」
「後はな、胴体が地面に落ちる衝撃で何かの爆発があれば、それが攻撃だと思うだろ」
「偽装も込みか、いけそうだな」
「この魔界の砂、もっと手に入らんかな」
「守護神に聞いてみようぜ」
「そうだな、交易になるとありがたいし」
かくして魔界からの特産品の名目で、彼から魔界の砂が供給される事になる。
元々、自給率の余剰分の倉庫入れは、税金100年前払いの現物返済が名目であったが、それが過ぎた今、いい名目がなく、やむなく買い取りという事になっていた。
そんな訳で、新たな名目を必要としていて、渡りに船だったのでそのまま活用した。
どのみち魔界など誰も知らず、本当にあるのかどうかすら不明なのだ。
だから魔界名産、魔界の砂と言っても調べようも無い。そんな訳で余剰食料と魔界の砂との交換交易が開始されたと、そういう話で収まった。
彼は100年の研鑽の一環でその備蓄がかなりあり、それを減らしての供給にはなるが、そう簡単になくなる量ではない為、問題無く供給したのであった。
ただ、この件で魔皇子の人気が更に上がり、ファンクラブの人数が増えた事は極秘事項になっている。
「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「どうした、ミカ」
「昔、ドラキュラみたいな格好した事があったよね」
「あのマントか、そういや倉庫に入れっ放しだったな」
「素の姿であれで首都の空を、あちこち飛んで欲しいんだけど」
「何でまたそんな」
「それでね、城前の停車場に降り立ってさ、集まったファンと握手会を・・」
「うぇぇ・・何だよそれ」
「それがね、あの魔界との交易の話で盛り上がってね、一度で良いから握手したいとか言い出してね」
「誰がだよ」
「じゃーん、魔皇子ファンクラブ、会員番号085542」
「8万5千?・・何だよその数。てか、何でファンクラブなんてものが出来てんだよ」
「まあまあこれも政治の一環って事で」
「お前、漏らしてないだろうな」
「冗談じゃないわ。魔皇子は兄って事になってるのに、それがアンタだとバレたら大変よ」
「ああ、そうだったな」
「だからさ、今回の事は、兄にお願いして実現したって形にしたいのよ」
「ははーん、言われたんだな、そうしてくれと」
「ま、まあ・・あの子達も純粋に憧れているだけだし、それぐらいは良いかなって」
ところが、何をどう間違えたのか、守護神と魔皇子の会談みたいな話になり、彼の代役を探さなくてはならなくなる。
その結果、何とかフェンリルが彼に化け、会談には成功する。
そして、友好の握手の後にフェンリル扮する彼はお役御免となりはしたが、彼の扮する魔皇子は夜も更けるまでひたすら握手する羽目になったとか・・
「もう嫌だぞ」
「あはは、ごめんね、あんなに人が来るとは思わなくてさ」
「それにしても、あれをどうするかだよな」
「良いじゃない、友好の為にはさ」
「しかしな、いくら何でも無責任だろ」
「向こうは庶子で納得してるんだから、それで良いと思うわよ」
「後腐れは無いか」
「無かった事にするって契約もあるんでしょ、なら問題ないわ」
「まあ、ほぼ、そういう可能性は無いとは思うが」
「だから問題ないのよ。それとも疲れて困る?」
「そりゃ確かにあれくらいの数なら問題は無いが」
「そうしてちょうだい。アタシ一人だと限界があるからさ」
「うっ・・そう言われたらさすがにな」
かくして希望者の中から10名を選び、彼との一夜を体験する事になる。
万が一、庶子が出来たとしても自分で育てて彼には負担を掛けないという誓約書を交わして。
もっとも、彼の場合は恐らく生まれないと分かっているので、まだ思い付きが良かったとも言える。
そんな訳で希望者の選別は熾烈を極め、仕方なく抽選になったと言われている。
そして首都で一番豪華なホテルの最上階で、10日間のイベントとして行われ、それは表向きには彼の接待のようなものという位置取りで、ファンの面々はその名目で自ら志願したという形になったのである。
「どうだった?」
「もう・・なんて言うかさ・・逞しくて・・包容力って言うのかな・・それでね・・あの瞳に見つめられたらもう・・ああ、もうダメ」
「じゃ、アンタはどうなの?」
「ううう、覚えてないの。確かに彼と一緒に・・なのに、気付いたらもう朝になってて・・でもねでもね、腰が立たなくてね、だからあるにはあったのよ」
「いいなぁ、またイベントやってくれないかなぁ」
「凄かったわぁ・・あんなの初めてよ。アタシ、遊郭勤めなんだけど、あんなお客さんならお金要らないから毎日来て欲しいわ」
「また、来年、無理かしら」
「どうだろうねぇ・・お願いしてみようしら」
「もうね、なんて言うか・・」
「はいはい、もう何回も聞いたわよ」
「彼のハーレムとか無いのかしら」
「魔界って何処にあるのかなぁ」
「この際さ、希望者全員、まとめてってのはどうかな」
「そんなに彼、いけるかしら」
「別に疲れたらしなくてもいいし。ほら、抱かれているだけでも幸せでしょ」
「そうね、次はそれでお願いしてみようかしら」
「あれ、妹君は?」
「おかしいわね、さっきまで居たのに」
ミカは自分の提案が火に油を注いだ事を知り、慌てて退散したのだった。
「・・という訳なんだけど、どうかな」
「うっく、いくら何でも・・何人なんだ」
「えとね、ファンクラブの中の抱かれ隊が4500人ぐらいかな」
「うっ・・そ、それは、さずがに無理があるような」
「だからね、混浴でいこうと思うのよ。あの体育館みたいなでっかい施設があるじゃない。あそこを貸切にしてさ」
「ヤマトの湯か」
「おっかしいよね、まるで銭湯みたいな名前にして、あははっ」
「まあ、健康ランドみたいなものだしな」
「1日貸切でさ、皆と戯れて欲しいのよ。ほら、今、新しい人たちも多くなってさ、色々と大変じゃない。下の事はうっかりと話せないけど、そういうのもストレスになるみたいでさ、だから発散って言うのかな、それをして欲しいのよ」
「魔皇子のファンクラブってどんな事をしてるんだ」
「そりゃあ、色々よ。例えば下とのやりとりとかもやってるし」
「あれはそういう奴らがやってんのか」
「うん、大抵のファンクラブのメンバーの仕事だわね。それだけ近い人達って事になるから、秘密も保て易いの。だからたまにはね」
そしてうっかりとミカの話に乗った彼は、全ての変装にもファンクラブがある事を改めて知らされ、それら全てとの交流をやる羽目になり、しばらくの間は大変にハードな日々を送る事になったとか。
「うおおお、派手な誘爆だぜ」
「たったあんだけの粉でこれかよ、とんでもねぇな」
「いけそうだな」
「これってよ、地面に撒いててもいけるんじゃね?」
「うっ・・」
「あっ・・」
果たして魔導ロケットの使い道は・・




