16話 転生
守護神の蓄財は凄まじい量に及び、王国内の荒れ果てた土地はそれを使って片っ端から正常化されていく。
領主の居なくなった土地は、ヤマト国から人員が送られて統治される事になり、それらは直轄領として扱われる。
そういうのがあちこちに出来たのだが、紛争が終わった今も増え続けているのだ。それは何故か・・
直轄領と他の領地の生活水準がかなり違うからなのだが、そのせいで直轄領の周辺から民が流れ込んで来て、流出した領が衰退していった結果、過酷な税の取立てをする羽目になり、打ち壊しで領主が殺されたり、領民にボイコットされて逃げ出す羽目になったりと散々な事になっているからであった。
そして現在、残っている領主は数名に過ぎず、数多くの領は全て直轄領となり、派遣された人員がそれぞれを治めている。
直轄領同士は流通が格段に違うので、残りの領主達の運命も怪しくなっている。
魔導トラックと名付けられた車両が何台も行き来し、各地の産物を各地へと運んでいく。
それに守護神が加わり、全ての領の生活水準と教育水準が上がっていく。
あの300を超えた自給率の恩恵もあり、全ての直轄領への輸送は現在も続いている。
状態を把握すればする程に、酷い政をやっていた領も多くあり、派遣された担当者を呆れさせる領も多かったという。
それゆえに民の反応は凄かったようで、本国の最低水準にするだけで、相当な感謝を受けて逆に戸惑う事も多かったらしい。
本国の周辺領も全て直轄地となっていて、今は衛星領として本国並みの自給率への引き上げが行われている。
彼による気象制御はその衛星領をも含んで施行され、住民達は信じられない速度で育つ穀物を見る事になる。
そしてそれらを刈り取る、見た事もない乗り物の扱い方を教わり、おっかなびっくりで作業をしている者達。
そして衛星領の自給率も100を超え、余剰分は不足の地域へと運ばれていく。
直轄領は全てが1つのサイフなので、全体的な税となる。それゆえに元の王国よりも効率が比較にならず、かなり安い税なのに受ける恩恵が多いと、その評判は上々だ。元の王都にも様々な物資が運ばれていて、傀儡の王は税の徴収代行を担っているに過ぎない。
それでも統治代行でもあるので、本国の方針に従って統治されている。
そして地下では旧王都に向けて、魔導パイプライン計画が進行していた。
その根幹とも言えるパイプラインから分岐して衛星領にも送られているが、それはエネルギー産業省が差配を司り、領都の生活向上に役立てられている。
魔導トラックへの供給や、魔導飛行船への供給といったマナスタンドも見受けられるようになる。
商会の中でも魔導トラックを所持する者も多くなり、それを利用している。
なんせ自前で供給となると、お抱え魔術師などが必要になるが、マナスタンドなら金を出せば充填してくれるのだ。
そして魔術師達の副業は、人工水晶の作成とそれへの補填となり、かつて需要の無かったそれが生産が間に合わないぐらいに売れているとか。
旧来の魔導馬車を使う商会も多く、それに使われるからである。
空になった水晶にいくらかの金を足せば、充填済みの水晶になる。
魔術師達は日々の研鑽の傍ら、そういう副業で暮らしている。
しかしそうなると消費マナは否応もなく増えていく訳で、最近では守護神は施設で横たわってる事が多いらしい。もっとも中身は居ない場合が多いのだが・・
(かなり酷似になりましたね。そろそろ渡してあげるべきですかね、くすくす)
夢で啓示を受けた彼は、精魂篭めてかつての子達を構築する。それは最近の彼の研究成果の集大成ともいえる精度で成され、それらにはそれぞれの魂が宿る。
「やっぱり元と同じにしたのね」
「だってフェンリルはこうじゃないと」
「あはは、まあそうよね」
「「ママー」」
「おはよう、2人とも」
「フェン兄、幸せだったけど、今度は私、他の事をしてみたいの。だからごめんね」
「私も勉強とかもっとやってみたいし、今回は無しで良いかな、結婚」
「フェンリル、2人の奥さんはもう良いのか?」
「今はこのほうが良いんです」
「フェン兄、甘えん坊だったしね、くすくす」
「うんうん、だからそのほうが良いかも」
「けど、たまには抱いてやれよ」
「そうね、たまには・・お願いね」
「欲しくなる時はお願いしに来るから」
「それで良いんだね、2人とも」
「「うんっ、フェン兄」」
しっかし、騙されたなぁ、クククッ・・魂保持してたとか言われた時は・・オレの成長を待っていたとかさ、研鑽に励んだ甲斐があったってもんだけど、黙っているのが酷いよなぁ・・でも、今は幸せだし・・ああ、このもふもふ、癒されるなぁ・・
「守護神にぃぃ」
「「カンパーイ」」
「我らが新たな仲間にぃ」
「「カンパーイ」」
「守護神の家族にぃ」
「「カンパーイ」」
建国祭が終わった後、また新たな祝い事を見つけた国民は、祭りの準備を推し進め、こうして大騒ぎをしているのだった。
お祭り好きなんですね、基本的に。




