14話 国名決定
独立国になったのは良いが、新しい国という事で国名を何にするかと、かなり揉めていた。
「ブルマン国で良いだろ」
「それだと新参者ってイメージがある。王国を併呑したんだし、ここは神聖帝国シンラとかさ」
「どっかで聞いた名前だぞ、このゲーム脳が」
「それならヤマトはどうだ」
「アニメおたくは黙ってろ」
「そうじゃねぇよ、あの国って昔はヤマトの朝廷だったろ」
「国のまほろばのほうか」
「そうそう、そっちのほうさ。誰が潜水艦の話をするかよ」
「んじゃあさ、神聖帝国ヤマトで良いだろ」
「んで、守護神のあの魔法は彗星で、帝国だと言いたいのか?」
「い、いや、そんなつもりは」
「普通にただのヤマトで良いような・・」
「何か付けようぜ。南のシルアス自治区とか、西のサイエン帝国とか、東のスリエン王国体とかさ」
「メロード王国か・・ヤマト王国は?」
「民主主義に王は要らないだろ」
「帝国は良いよな」
「神国ヤマト」
「おっ、それ良いかも」
「守護神のおわす国、神国ヤマトか、そうだな」
「却下」
「え・・あ・・守護神」
「オレは静かに暮らしたいの。そんな宣伝みたいなのは禁止な」
「じゃあ、どうすれば」
「普通にヤマトで良いだろ」
「ではそのように」
まさに鶴の一声で『ヤマト』に決まったのだった。
「国名決まったってよ」
「ならこれから忙しくなるぞ・・おーい、決まったらしいぞ」
「図書館の書籍に全て注釈だ」
「領内の表示を全て変更だ」
「領内の資料を全て変更だ」
「関係書類の領名に全て注釈だ」
「街の案内板を全て交換するぞ・・看板工房はどうなっている」
「現在、国名待ちになっています」
「国名を通達後、完成した案内板の差し替えと看板の交換工事急げ」
「土木ギルドに通達しろ・・建設省にも伝えろ」
「魔導重機の出庫と管理を、関係各所に委託しろ」
「首都保安局に連絡して、交通整理を依頼しろ」
「情報サイトの更新と、各種案内サイトの表示も全て変更しろ」
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「企画局に通達しろ・・祭りの用意だ、企画書の提出をさせろ」
「領内全ての食料品関係業に通達、祝いの料理の製作と配布。金は守護神が見てくれるってよ」
「うおおおおお・・酒だ、酒蔵に伝達して全て出せと伝えろ・・」
「こら、ドサクサに紛れて変な命令出すな」
「いーじゃねぇかよ、祭りなんだしよ」
「自腹でやるなら好きにしろ」
「うぐぐぐぅぅ」
「おらおら、とっとと仕事にかかれ。時間が無いんだぞ」
今まで戦闘に不向きだった為、後方支援に徹していた者達の、遂に晴れ舞台がやってきた。彼らは初めての、そしてその晴れがましい仕事に熱中する事になる。
その頃、各部隊は王国全土を掌握すべく、作戦行動を行っていた。
終われば祭りを合言葉に、皆は生き生きとして活動を開始する。
焦って自滅した彼の領周辺の領主達や、その外側で散々にやられた領主達、それ以外の領主は僅かであったが、それらは今回の一連の動きを傍観しつつ、彼の領はどうして豊かなのかを考えていた。
普通なら周囲か攻められればひとたまりもないはずなのに、あの領は全てを跳ね除けた。
それを守護神のせいにするのは簡単だが、あれが出て来たのは他国の侵略の時だけ。
それ以前にあの領は孤立しても困らない底力があった。
それをどうやって作り出したのか、生き残った彼らはずっと考えていた。
他の領とこの領の何が違うのか。
ブルマン領は山岳地帯に程近い、起伏の多い貧しい土地だった。
それに対して他の領はまだ豊かなほうだったはずだ。
それなのに現在の豊かさは正反対となっている。その訳は・・
かつて彼が成した100年分の税金前払い。
王国は年々、はっきり言うなら今世の王になってから年々、税金の量が増えており、耕作面積が急に増えたりしない他の領は、増える税金に困窮していたのだった。
ところがブルマン領にはそれがやれない。
いかに王の命令でも、かつての王の出した受け取り証が相手にある以上、それを反故にすれば王国が100%悪いという事になる。
そうなれば大義名分を相手に与える事になり、それが嫌なら前払い分を返却してから改めて徴収しなくてはならなかったのである。
さすがに後から取れるにしても、一度全額を返すなどやれない事。また、やれたにしてもこの100年間、金利が無いなどとはまたあり得ない話。
経費を使ってその計算をして、金利分を増額して返却して、新たに初年度からの税金を、過去の資料から全て計算してとか、到底やれる事ではない。
だからこそ期限まで動けなかったとも言える。
そして、税の増額と更なる100年の前払いは、かつての王の行いを踏襲したものであったのだが、時代の流れを読めなかった愚かな所業に過ぎなかった。彼の狙いの真意は、その100年間での経済発展であり、既にそれが成された以上、もはや王国に依存する必要は無くなっていた。
しかし彼は王国からの要請を跳ね除けるだけの力を蓄えながらも、陳情に何度も訪れた。
それは彼の策謀の一環であり、まさか既に独立しても問題の無い領とは思えなかった王宮は、彼の低姿勢で判断した。
そして後の独立宣言を、切羽詰った先の暴挙だと勘違いしたのだ。
彼の作戦勝ちである。しかしこの前払いは受けた頃の王の責任とも言えるが、当時の王は彼の事を信頼しており、だからこその受け入れに他ならなかった。
彼と信頼関係を築いた者と、それを受け継いだ者との意識の差が今の現状になっているのであろう。
そしてその者、アガノス・セルリアーノ・ヴァン・セントルイス・メロード20世が表舞台に立つ事は二度と無く、ここにメロード王朝は滅んだと言って良いだろう。
元副官は王に抜擢になりはしたが、所詮は傀儡と自覚していた。
そして王宮に赴き、王の座に座ろうとするが、王侯貴族が彼を押し留める。下級貴族如きと。
まだそんな事を言っているのかと、外の様子を知らない様子の者達に呆れ返る。
彼らの行動は自殺行為であった。
「逆らう者は撃て」
「「はっ」」
「おのれ、何者じゃ、ここはグギャ」
「くそ、どうなっておるかっ」
「宣戦布告をして、それが攻めてきたらその有様か。オレ達はヤマト国の兵だ」
「やま・・と?何だそれは」
「ほい、侮辱罪で死刑」
「ぐぁぁぁぁ」
(お前、パラライザーで死刑は無いだろ・・地下送りだから実質的には死刑だろ・・まあそうだけどな・・あれに送られたら終わりさ。だから誰も犯罪はやらない・・まあ、あれは死刑よりも嫌だよな・・ああ、スッパリと殺されたほうがましさ・・そういやな、あの魔法の事だけど、表の意識は服従だけど、心の奥底はそれを見ているような感じなんだとよ・・マジかよ。なら自分がやっている事を理解しているのかよ・・それ聞いてよ、絶対に犯罪はやれねぇと思ったぜ・・当たり前だろ。魔物と同じ暮らしとか、理解してとか死んだほうがましだ・・一緒に寝たりするらしいしよ・・うぇぇぇぇ・・自分の子が生まれたりするらしいしよ・・も、もう止めてくれ)
心の奥底の話など誰も知りえない話のはずが、その手の話は皆に広まっている。
それも犯罪の抑止力と、意図的に流しているからであった。
かくしてそれらの発散は魔物狩りに向かう事となり、民の平均レベルは否応にも上がっていくのである。
それがあちらの世界との違いだが、法的拘束力など無くても犯罪発生率などは上がらないのはやはり、命の軽い世界ならではの暗黒の部分があるからでもあろう。
地下刑になったら死ぬより恐ろしいと、それを皆が知っているからこそ、領内の安全は保たれていると言っても過言ではないのだ。
彼らの中には殺人の経験の無い者も多い。
確かに外部の盗賊討伐の経験者も居るが、それでもそれを嫌がる者も存在している。
なので彼らは相手を気絶させる武器を携帯しているのであるが、副産物として殺した事にして地下送りをする事になる。
つまり自らの手を汚さなくても戦闘がやれる今のシステムを賞賛している者も多く、それゆえに地下送りの命令者が全て被っているとも言えるのだ。
更に言うなら【ビーム砲】も【魔導銃】もマナが無くては使えない。
それを供給している者が実質的な致命者とも言える訳で、そういう屁理屈みたいな話も少しは彼らの負担を軽くしている。
それは生まれが違う者達も居る訳で、その世界での倫理観を未だに捨てられない者達の為にと、意図的に流布されているのであった。
「今月はもう756人か、さすがに多いな」
「つい先日も、264人送られてきました」
「ああ、処置をして送り込んでおく」
「お願いしますね、守護神」
全員が孫みたいな感覚ですかね。




