13話 禅定
それはカラスにもたらされた1つの命令から始まった。幹部の1人がこう言ったのだ。
「なあ、とぼけられないように、王様、拉致しちまおうぜ」
命名を受けたカラス・・情報特務大隊は、速やかに命令を実行に移す。
散らばっていた者達はそれぞれに、手持ちの転移水晶で集合していく。
そして城内に潜伏していた仲間の手引きで、容易く武装解除していく。
彼らは全員、魔導銃を手にしており、使う魔法は気絶魔法【パラライザー】である。
「ちょいと来てもらうぜ」
「な、なんだ、貴様らは、誰か、居ないのかっ」
「全員お寝んねさ、おら、おとなしくしろ」
「貴様ら、何処の手の者だ」
「お前さ、宣戦布告しといてそりゃねぇだろ」
「ブルマン・・だと・・しかし、停戦の・・使者が」
「あのなぁ、自分から宣戦布告しといて、そんな話が通ると本気で思ってんのかよ」
「無礼者、ワシに触れるな」
「だーかーらさ、宣戦布告ってのはさ、戦争なのよ。負けたほうは拘束されるのは当たり前。理解出来てる?おっさん」
「おっさ・・」
「まあいいや、おとなしくしないのならここで」
「待て・・それを・・止めろ・・分かった、分かったから」
「拘束しろ」
「はっ」
「残りの者は王都を速やかに掌握後、保持。後の部隊に引き継ぐ」
「了解であります」
国王拘束の報を受けて、ブルマン領航空部隊の飛行船に次々と兵員が乗り込んでいく。
彼らもまた今回も出番の無かった者達であり、最後の機会とばかりに意気込んでいたのである。
なんせ趣味の者達なのでその兵員は無駄に多く、大抵の者は副業を持っている。
そして普段は副業のほうをメインにしていたのであるが、いよいよメインの仕事と張り切っていたものの、全く出番が無くて腐っていた彼らであったのだ。
特に最後の花道のような機会を守護神に奪われ、気落ちしていた者達にもたらされた絶好の機会。
それぞれの服装はまちまちなれど、部隊毎の特色を持って乗り込んでいたのである。
「そっちは相変わらず海自かよ」
「そういうお前らも陸自だしよ」
「やっぱり海保の制服が一番だぜ」
「いやいや、空自だろ、やっぱり」
彼らはあちらの制服を守護神に頼んで輸入してもらい、それぞれの部隊の制服にしていたのである。
なので好みによってバラバラになってはいるが、部隊毎の特色にもなっていた。
そんな彼らは王国全土に散らばり、これから全土の掌握に向かう。
首都は急にガラガラとなり、居るのは獣人ばかりなりといった有様になっていた。
15番格納庫の者達は、武装解除された後にその獣人達の命令を聞く事になり、暴れた者達は愛で隊や守り隊が密かに間引いていく。
間引かれた者達は地下の住人となるのであるが、そんな事は他の者達は知る由も無い。
そして説明を受けてそれぞれは領民となるか王都に戻るかを決める事になり、大多数が帰属を望んだと・・
そして王様に禅定を迫る事になる。
「これ、本物だったり?」
「ええ、なので禅定を」
「オレ、そんなのしたくないし」
「ならどうしますか」
「王様さ、これからも王国、治めたいよね」
「貴様がブルマンの」
「そう、第七代当主、エリック=ブルマンね」
「王国を掠め取る気か」
「話理解出来てる?オレは続けたいかと聞いてんの」
「そのような事、当たり前であろう」
「ならさ、今回、3国の侵略軍の討伐、どんな報酬になるのかな」
「そのような事、今決める事か」
「あんたさ、ずーっとそれ、やって来たでしょ。それこそ、王になった時からずっと問題の先送りばかり。だからこんな現状になってんのに全く気付いてもない。今ここで決めるんだよ、報酬を」
「なれば、王侯貴族の地位を授けよう」
「あんた、バカ?それともバカの振りをしてんの?」
「無礼者っ」
「こちらは他国なの。分かる?別の国なのよ。その国のトップがさ、別の国の配下になるのが報酬?ざけんなよ、てめぇ」
「ひっ・・」
「もういい、こいつ要らないから、地下の住人にしちゃって」
「はっ」
「あの副官、優秀そうだし、代わりに治めてもらえばいいさ」
「では、そのように致します・・連れて行け」
「ははっ」
かくして王は隷属魔法を行使され、禅定の書類にサインさせられた後、首都の地下に消えた。
代わって抜擢されたのは例の副官。彼はこれから敗残兵を率い、この国の兵として王都に赴く事になる。
街の外で武装と食料を持たされた彼らは、そのまま王都に戻って解散後、再編成されて王国の統治に携わる事になる。
領からは目付け役として情報特務から部隊が残留し、道筋を誤らないように見定める事になる。
それらの筋書きを見せられた彼は、逡巡の後に・・
「本物ですか、これは」
「ああ、アンタに全権を委任するって書いてるだろ」
「しかし・・こんな・・」
「こちらからも目付けは付けるけど、基本的にはアンタが王様だ。良政を敷けとは言わんが、民をあんまり苛めないようにな」
「努力します」
「人材が育つまで、うちの奴らが助けてくれるだろう。まあ、部隊の掌握も国の掌握も似たようなものさ、ただその規模が違うだけでな」
「は、はい」
「ま、困ったら何か言ってくれれば、金なり力なりと貸せるし」
「その時はお願いします」
「うんうん、じゃあ、頑張ってね」
「分かりました」
かくして王国が独立国の傘下になったような、不思議な関係が出来上がったのである。
王様の出番は終わりです。




