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異世界ツアー2 ~異世界の未来とその趨勢~  作者: 黒田明人
2章 王国内紛という名の独立戦争
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10話 四面楚歌

 

 

今、王国は大変な事になっていた。

それはとてもブルマン領に対する余裕などあるはずもなく、かつてのように3国に狙われていたからである。

当時は彼がそれを潰したが、肝心の彼が今回は味方では無い場所に居る。

100年以上前の記録を読んだ王は、自らの浅慮を独り悔いていた。

思えば宰相には煽られた記憶しか出て来ず、もしかしたら彼は・・

疑心のままに思い起こせば、主席宮廷魔術師失脚の頃から変わっていた事を知る。

今更、何を言っても仕方が無いと思いつつも、それでも宰相を問い詰める・・いや、問い詰めようとした。

しかし、出来なかった。彼が居なかったら。

彼の姿はそれきり消え、二度と王の前に姿を現さなかった。

宰相を失った王は他に頼る者もなく、仕方なく将軍に・・


「ガリク将軍よ」

「ははっ」

「おぬしは勝てると思うのか」

「当たり前です」

「ならばおぬし全軍を預ける。勝てば侯爵じゃ」

「ははっ、必ずや、彼奴の素っ首、掻き切って持ち帰ってみせましょう」

「相手は3国だ、あれは後回しにせよ」

「そ、それでは、挟撃の恐れもあり、あれを先に叩くべきかと」

「あれらは出て来ぬ。だから心配せずに向かってくる国々を成敗致せ」

「は、ははっ」


(誰かある・・ははっ・・使者を送れ・・えと、何処の国にでしょうか・・ブルマンにだ・・ですが、まだ勢いもありますれば・・認めると伝えぃ・・何と・・今はそのような争いをしてて居る場合ではない。国が攻められておるのだ。この火急な折に内紛などしておる場合ではない。良いか、認めてやるから蹴散らせと伝えるのじゃぞ・・しかし、それは余りにも・・ワシの命令が聞けぬと申すか・・い、いえ、承りましてござります・・ならば行け・・は、ははっ)


「なんて言うか、上から目線だよな」    

「宣戦布告しておいて、そんな事をしている場合じゃないってか」

「こいつ、国がヤバくなって頭壊れてねぇ?」

「宰相が居ないからだろ」

「ありゃもうとっくに東に帰ってるぜ」

「いつ成り代わったんだ」

「あの魔法失敗で廃人騒動の時に殺してあっさりだ」

「指紋や声紋、瞳孔で区別出来ない奴らは悲惨だねぇ」

「更に魔紋もあるしな」

「魔紋ぐらいは使ってんじゃねぇのか、本場だし」

「いや、全然だな」

「けど、あれは便利だよな」

「ああ、魔紋の変化で相手の喜怒哀楽まで分かるってんだからよ」

「もうあれだけでやってるだろ、最近」

「ああ、この作戦本部の出入りも、魔紋パターン登録者しか入れないしな」

「じゃああの警備は飾りかよ」

「見せる事もないだろ」


(波を魔紋として扱っているのですか・・何とも凄い人達ですね・・彼らは科学と魔法の混合文明の先駆者、なのかも知れませんね・・となると、昇る人達が多くやりそうな気もしますけど、果たしてどうなるでしょうね)


「で、どうするよ」

「無視だな」

「ああ、来なかったって事で」

「使者はどうする」

「使者は死者ってか」

「おいおい、それは可哀想だろ。うちで引き取るよ」

「お前のところのほうが可哀想だろ。止めてやれよ、人体実験は」

「どいつもこいつも・・うちで引き取る、以上」

「奴隷にするんだな」

「ちょうど農作業の下働きが欲しくてな、ちょいと細いが何とか働けるだろ」

「農作業?お前、そんな副業やってんのか」

「まあな、だから良いだろ」

「まあ、良いけどよ」


哀れ使者として来たそいつは、隷属魔法を使われて絶対服従の身となり、趣味の者達の巣窟の闇に消えて、二度と戻らなかった。彼の運命やいかに・・


「あの使者どうなったんだ」

「あいつ、中々の働き者でよ、役に立ってるぜ」

「けどよ、お前、農作業とかやってねぇだろ」

「下働きと言っただろ」

「何をやらせてんだ」

「種を撒いているんだ」

「誰にだよ」

「今な、異種族間での妊娠の研究をやっててな、オークは可能性がありそうでな、今頑張ってもらってんだ」

「哀れな話もあったもんだ」

「いや、オークって旨いだろ、繁殖出来たら良いと思ってよ」

「オレは今日からオークは食わん」

「くっくっくっ、オレも止めとこう」


オーク農場の秘密は次回。

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