9話 飛竜部隊
かつてダーク系になりかけていた彼は、上の取り成しで平常運転に戻った。
しかし、ダークに染まっていた時期は、まるで黒歴史のように残っている訳で・・
つまり何が言いたいかと言うと・・
「うおー、かっけぇ」
「守護神、よくお似合いです」
「渋いっす」
馴染みの彼らに乗せられるままに、ダーク系の衣装を取り揃え、そのせいでハントに出る時の服装として定着し、今から思えば凄く恥ずかしい格好になっていた訳で。
守護神の風体は簡単だ。銀髪に緑の瞳というかつて役者をやっていた格好だ。
その美少年がダークの格好をするという事に、その手の趣味持ちは熱狂したとか。
つまり、ショタ系も混ざってダーク風守護神を拵えていった訳で、今更普通の格好がしたいとは中々言えない状況にある訳で・・
とは言え、瞳の色を戻したら、そのまま魔皇子扱いされると。
それでも彼は、魔皇子姿で狩りに行くべきだったと後悔していた。
すっかりその手の趣味の者達の理想の格好にされてしまい、恥ずかしさを消すにはもはや、ノリノリで芝居をやるしか道は無かったからだ。
彼は決意した、厨二病な台詞と芝居をやる事を・・後ろのミカの含み笑いを無視して。
「くっくっくっ、相手はワイバーンか」
「そうです、守護神様」
「今、片付けて来てやる、待ってな」
「キャー、カッコイー」
「いいわぁ、最高よー」
ミカの許容は限界に近かったが、それでも必死で堪えてはいたが、肩が震えていた。
吹かないように俯いて口を押さえ、それはもう必死で堪えていたのである。
そんなミカを見ないようにして、彼は必死の芝居でその場をやり過ごし、ワイバーンハントに向かっていく。
ミカは何とかそれを見送り、家に駆け込んでベッドに突っ伏して、当分の間は戻って来れなかった。
はぁぁ、酷い目に遭ったな。もうこの格好になる事も無いと思ったのに。今度からは偽当主の格好で出るべきかな・・
偽当主はその姿が少し年を経た感じの、まるで親子か兄弟のような格好で、それはそれでファンの居る事に彼は気付いていなかった。
もっとも、彼らは馴染みの趣味の者達として相対していのであり、ファンクラブというものはそもそも、本人の知らないところで結成される場合が多いからだ。
今、領地には、守護神ファンクラブと、当主ファンクラブ、その他にも彼の変装の数だけファンクラブがあると言っても過言ではなく、その中には魔皇子のファンクラブももちろんあり、こっそり写メでやりとりされていたりする。
ちなみに、ガラケーやスマホの類はあちらからの輸入品であり、基地局もメーカーとの商談で入手したものである。
その電源は魔導発電機で起こしたものであり、燃料がマナなので無公害発電となっている。
領主の館、通称城の上空には静止飛行船が常駐していて、基地局はここにある。
後は砦の屋上にもアンテナがあり、それで領地全域を賄っているのである。
もちろん、入電とか言っているのはその電波での通信であり、普通にもしもしとやってたりする。
つまりあれらの言動は、全てが気分が出るからという理由でやっているのであり、実際に見ると皆ケータイとかを耳に当てて、何かしらの会話をやっていたりする様は、とても作戦本部とは思えない様相だったりする。
「でよ、あいつがさぁ・・来週のさぁ・・」
「おい、ここではそういう会話は禁止た」
「そうだったな・・東の様相の詳細だが、7番目の倉庫の機密を探る任務があると聞いたが」
「あいつ、何言ってんだ」
「ああ、来週な、東地区のバンドが7番倉庫でコンサートをやるって話だろ」
「戦争はどうなったぁぁぁ」
「くっくっくっ、戦争おたくが遂に切れたか」
「折角の晴れ舞台なのに、尻切れトンボになっちまったからだろ」
「ま、オレ達は秘匿兵器でサッパリしたけどな」
「ああ、愛する武器達の晴れ舞台、しっかりと撮ったしな」
「今度、試写会やろうぜ」
「おうっ、見せてやるぜ、あいつの勇姿をよ」
「戦争を寄こせぇぇぇぇ」
「どうにも修羅場だな」
「あれ、ワイバーンは?」
「ああ、飛竜部隊とかって言っててな、引き返さないと殲滅すると言って、先頭の飛竜の首を落としてやったらさ、あっさりと帰って行ったよ」
「何と言うかさすがと言うか」
「もしかして、守護神単独で王国に勝てたり?」
「おい、それは禁句だ。本当にそうなったら、オレ達の出番はどうなると思う」
「うっ・・」
「大丈夫、そんな事はしないから」
「出来ないと言わない所が恐ろしい」
「お、中々巧いな、字余りだけど」
「川柳じゃねぇぇぇ」
いつ戦争が終わったんでしょう。




