わたくしは悪?ヒロインが正義?それは……
「コーデリア、君との婚約は破棄させていただくよ。サラに低レベルな嫌がらせをするような女は私には相応しくない。相応しいのはサラだ。」
「アレックスさま……///
」
馬鹿な男。自らの欲求のみを優先させて国のことなど二の次三の次。
そもそも、わたくしとこの男、アレックス・フィル・マリンズは互いの利益の為の婚約。個の一存で決められないものですのに。
海の国のマーリンズ王国の跡継ぎである彼は、王妹の娘という立場のわたくしはなるべくして婚約者となった。
わたくしとしても異はなく、国を繁栄させるためならば道具となるのも、喜んで受け入れよう。
そう考えていたのですが、彼、アレックスは違ったようです。
貴族も平民も関係のない、実力のみの学園にトップで入学した彼女、サラにあっという間に鞍替えをいたしました。
『わたくしがその…サラ様?に嫌がらせをしたんですの?』
「よくもそこまでしらを切れるね。彼女の魔法で一部分を撮ってある。録音もしてあるし、なんならここで公開してあげよう。」
アレックスに促されたサラは目の前に浮かび上がるスクリーンに魔法で撮ったという映像を重ねる。
『…放課後のようですか、いつのものでしょうか?』
「えっと、一昨日の放課後で確かに貴方だったよ?ちゃんと見たし、ここに映像もある。こんな特徴的な髪型は貴方しかしてないよね?」
『一昨日、ですか。おかしいですわね、その日は王妃様から直々にお誘いくださったお茶会のため、前日からいなかったのですが。それと髪型、ですか。貴女は周りの方々を見ておられませんのね。』
「え…?」
キョロキョロと周りを見渡せば目を見開き、サラは固まる。周りは細部こそ違えど、大まかな所は似ている髪型だからだ。
この学校は女性も男性も髪型は何種類かしか選べない。服装は自由ですから、髪型くらいは仕方ないですし、指定髪型もかわいい、装飾も派手過ぎなければOKですのであまり気にしてないようです。
逆にサラだけですわ、転校生だからと言うだけでツインテールなのは。
『それに、先ほど帰ってきてきましたの。アレックス様には国王、並びに王妃様からの書状をお預かりしてますのよ?ご覧になられませ。』
奪うようにひったくると、アレックスは読みながら顔を赤くさせたり青くさせたり、白くさせたりと大忙し。
『それと国王夫妻からの言付けですわ。「庶民の娘に現を抜かした挙げ句、王族としての勤めを放棄する愚か者はいらぬ」、だそうですわ。』
幸いアレックス様よりも優秀な第二王子であるライル様がいらっしゃいますから。
『それでは、アレックス様、サラ様。庶民となり、二人の愛とやらを貫き通してくださいませ。』
背筋を伸ばし、割れた人垣の間を通り抜けコーデリア・ウィア・マリンズは堂々とその場から退場する。
元第一王子は書状を握り締め顔色を無くし、呆然と立ち尽くす。
サラは怒りによって真っ赤に顔を染め、こんなはずじゃない!シナリオが!と喚き散らす。
周りの人間は嘲笑、侮蔑、様々な感情で笑い、その場から帰って行く。
残されたのは、真っ白な王子と真っ赤なヒロイン。
悪か正義か。それは勝った者が決めるモノ。