ふすまをへだてて半同棲
短編の電波がきてしまいました。
よろしくお願いいたします。
なんか、結婚することになったんだよね
神宮菜摘は思った。
明正和次元の日本国のとある田舎町にある神宮家は、
築何十年と言う単位で建っている一般的な一戸建てである。
「ここは、こじんまりとして落ち着く。」
菜摘の婚約者、オーレウス帝国、オダーウエ聖騎士団、新騎士団長、メイーセント・キリヌア・チリアエシがのんびりと畳でねっころがりながら言った。
紫の短い髪に緑の瞳の美青年はどうみても一般的な日本家屋にそぐわない存在である。
「メイ、つかれてるの?染みハニー食べる?」
菜摘はお菓子の時空保存パックの口を開けて差し出した。
「悪いな♪」
メイーセントがお菓子を袋からだして食べはじめた。
そもそも、二人はどのように知り合ったのであろうか?
今から数年前のことだが、メイーセントは
固まっていた。
自宅のクローゼットの引き戸を開けたらなぜか見覚えない部屋があり、中年の女性が緑色の籠を持って固まっていた。
『だ、誰?』
娘の部屋から、ベランダにでて洗濯物を干そうとしていた、神宮美菜恵は聞いた。
『メイーセント・キリヌア・チリアエシ。』
メイーセントも間抜けにそう言った。
それが神宮家とのファーストコンタクトだった。
そのあと、そのまま扉を閉めメイーセントは思った。
オレの服はどこにいったんだ?と
彼はその日、当時副団長を勤めてた、オダーウエ聖騎士団の勤務を遅刻して当時の団長皇女ハブータエ・アイゾーラ・オーレウスに焼きを入れられた。
それ以来、かの、クローゼットは恐らく異世界につながっている。
菜摘とは、焼きを入れられた日にうっかりいつもの癖でクローゼットを開けてしまい、こたつでゴロゴロ端末をいじくっていた所がはじめての出逢いだった。
『…怪我してるよ。』
菜摘は冷静に額の傷を指摘した。
『ああ、驚かないのか?』
メイーセントは言った。
『お母さんが異世界人に会ったってヨクワカンナイコト言ってたから。』
菜摘は言った。
『オレが怖くないのか?』
メイーセントは言った。
普通、未知なるものに恐怖を覚えるのが人であろう。
『ビックリした、傷、大丈夫?』
菜摘はやっぱり冷静に言った。
まあ、菜摘なりにどうしようとは思ったのだが。
結局、菜摘に傷の手当てをしてもらい。
その、準備過程で集まった。
神宮家の面々、父親、成久、母親、美菜恵、弟、翼の三人も集まり…。
その日より、異世界交流は続いている。
「お姫様、いつ頃結婚するの?」
菜摘が言った。
例の団長皇女ハブータエがアイルパーン竜騎国のアースリース国王陛下と結婚することになったのだ。
まあ、完璧な政略結婚である。
「わからない、アースリース国王陛下は宰相令嬢を後添いに望まれてるらしい。」
メイーセントは染みハニーを食べながら言った。
「ふーん、あんまり、国益考えてないんだね。」
菜摘は端末を操作しながら言った。
そもそも、この二人が結婚することになったのもその縁談が原因である。
ハブータエが結婚にともない、オダーウエ聖騎士団の団長職が空いた。
何事もなく、勤めていたメイーセントにその職が来るのは当然と言えよう。
チリアエシ家は皇家に連なる名門の一族なので身分的には問題はないのである。
団長職は別にいいが…なぜ、縁談が…。
メイーセントは思った。
「そりゃ、団長が独身じゃ困るんじゃないかい?戦闘になって死んじゃったら、跡取りに困るわけだし。」
悪友で、ギルダシーア騎士団のポラダ・オライン・ウーノア副団長が魚のソテーを食べながら言った。
社員食堂?で見かけたので相談を持ちかけたのだ。
ポラダは既婚者である。
愛妻弁当ではないらしい。
「だが、会ったこともない令嬢などと結婚したくない。」
メイーセントは言った。
案外乙女チックである。
「じゃ、顔見知りで適当な女性にプロポーズすれば?三食昼寝パーティー付きですってさ。」
ポラダが言った。
なるほど、条件を呈示して嫁に来てもらうのだな。
思い浮かぶのはかの女性しかいない
とメイーセントは思った。
その日の夜、メイーセントは早々に行動を起こした。
「あー、メイ、どうしたの~?」
菜摘が端末を見ながら言った。
冬はこたつで、今は座卓?の上にはなにか書類がおいてある。
「今度、オダーウエ聖騎士団の団長職を拝命することになった。」
メイーセントが言った。
「そうなんだ、良かったね。」
菜摘が適当に言った。
「適当な女性と結婚しなければならない。」
メイーセントは馬鹿正直に言った。
「うん、そうなんだ、おめでとう。」
菜摘は書類チェックしながら言った。
メイーセントは床にかた膝を付き菜摘の手をとった。
「な、なに?メイ?」
突然の出来事に菜摘はたじろいだ。
いつでも、冷静な菜摘には珍しい事である。
「菜摘姫、オレと生涯共にしてほしい、結婚してくれ。」
メイーセントがあまやかに言った。
完璧なプロポーズである。
「…あのさ、メイ、私が適当な女性って言うことだよね、なんか、いい加減で嫌だ。」
菜摘がいつも以上に冷めた目でみた。
「もちろん、三食昼寝パーティー付きだぞ!」
メイーセントは動揺した。
プロポーズなど、はじめてなのでかってがわからないのだ。
「私、仕事大好きだし…今、どこで、万屋出そうか頭悩ましてるんだよね、いっそ、メイの世界に出そうかな?って思ってるほどさ。」
菜摘は言った。
そうなのである、菜摘はパーウェーナ世界で
大成功している万屋明正屋のような、
異世界万屋を経営予定で本社、異世界万屋コーポレーションで研修したり、
万屋明正屋で研修したりしていたのである。
この度、小売業経営者資格取得となったので
場所を探しているのだ。
「結婚してくれるなら、場所を提供するぞ。」
メイーセントはプライドを捨てた。
実はメイーセントは菜摘に恋愛感情を抱いていたのだが、今度のことで爆発したのだ。
「……それなら、いいよ。」
菜摘は言った。
そういえば、自分もメイーセントしか適当な若い男性はいないと気がついたのだ。
お互い様である。
かくして、婚約者同士となったのであるが。
「いつごろ、万屋用地は見に来るんだ?」
メイーセントが起き上がって菜摘をみた。
「うん、いつでも、いいってソウトントンが言ってたよ、あっちの世界管理人が寂しがり屋でにぎやかなの大歓迎なんだってさ。」
菜摘が珍しく端末から目を離して言った。
ソウトントンが大丈夫、すなわち次元間はひとまずつながった言うことである。
たとえ、この押し入れのふすまとクローゼットの引き戸の天然次元門が離れても、いつでも帰れる保障ができたのである。
「そうか、では候補地を手配しておこう。」
メイーセントはそういいながら菜摘の頬にキスをした。
名家の領地は広いらしい。
「まあ、嫁入りは万屋が出来てからでいいよね。」
菜摘が言った。
はっきり言って万屋さえできれば菜摘はいいのである。
「来月のパーティーには婚約者として出てくれ。」
メイーセントが言った。
まだまだ、結婚は遠いようである。
当分、ふすまをへだてて、半同棲は続くようだ。
さて、どうなることやら。
本当に結婚するのであろうか?
読んでいただきありがとうございました。