表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

カウントダウン

殴られる直前の事は、今でも妙に覚えている。

夜の商店街、閉まったシャッターの前。

後ろから聞こえた足音と空気を切り裂くような風切り音。

ーーやられた。

そう思った瞬間、後頭部に衝撃が走った。

金属が頭蓋を叩く感触と、視界が白く弾ける感覚。

そこまでだった。



どのくらい経っただろうか。

目を開けると、そこは俺の知っている世界ではなかった。

天井も壁も床も、全部が淡いパステルカラー。

小さくて丸っこくて、ぬいぐるみのような家具が置かれている。


「……あ?」


思わず声が漏れる。

こんなファンシーな部屋には、人生において一度も縁がない。

起き上がろうとして違和感に気付く。


体が軽い?

いや、それ以前に……


「なんだよ、この服……」


視線を落とすと、フリフリのスカートにリボン、レース、淡い水色。


「ふざけてんのか?一体だれが俺にこんな……」


瞬間、目の前に突然四角い光の板が現れた。

テレビ?

いや、もっと薄い。

四角い光、画面の向こうには映っているのは、白いヒゲの老人だった。


『気付いたようだな』

「誰だテメェ」


反射的に声が荒くなる。


『私は神だ』

『こう名乗ると、大抵は話がはやい』

「いや、わかんねえよ」


老人はわずかに息を吐きながら続けた。


『君は死んだ』

『金属製のバットに殴られてな』

「……あぁ?」


その言葉で記憶がよみがえる。

同じ学校の生徒が街で絡まれていて。

止めに入って。

逆恨みされてーー背後から。


『思い出したか』

「あぁ……多分な」

『その割にはずいぶんと冷静だな』

「逆に現実感がねぇ。夢みてぇだ」


神はほんの少しだけ表情を和らげた。


『まぁ無理もない』

『人は死ぬとそういう反応をする事も多い』

「……」


 数泊、間をおいてからーー


『……人助けをして死ぬ、というのは』

『少し不憫だ、とは思う』

「神にもそういう感情はあるんだな、……まぁそりゃそうか神だもんな」

『ないわけではない』

『ただ、それで奇跡を起こせるほど、余裕はない』


神が一瞬目を逸らす。


『君を生き返らせることはできる』

『が、完全ではない』

「どういう意味だよ」

『君を完全に戻すためのエネルギーが足りない』

『実を言うとな、今もかなりギリギリの状態だ』


だから俺は今こんなフリフリの姿になっているのか……?

エネルギーが足りないとフリフリになるのか……?


「……もちょっと、わかりやすく言ってくれねぇかな」

『詳しい説明は後にしよう』


その言葉と同時に、視界の端に赤い数字が浮かぶ。


【配信開始まで 00:00:10】


「ん?」

『まずはエネルギーを集めるんだ』

『それしか君が生き続ける方法はない』


【配信開始まで 00:00:09】

【配信開始まで 00:00:08】

【配信開始まで 00:00:07】


「おい、待てよ、何しろって!?」

『人気者になりなさい』


【配信開始まで 00:00:00】


視界の端で数字が弾け、世界がひっくり返った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ