第9話:稼ぎ方と商業ギルド
(……いや、でもそれってつまり、隙間産業ってことじゃない?)
今はほとんどの人が従魔に装備を着けさせていない。
しかし、そうすることが当たり前になれば、きっと多くの収入を得ることができると楓は考えた。
「……だ、大丈夫? ごめんね、先に言っておけばよかったね?」
ずっと思案顔を浮かべていたからか、ティアナが心配そうに声を掛けてきた。
「いいえ、大丈夫です! むしろ、燃えています!」
しかし楓は全く別のことを考えていたので、やる気満々な表情でそう答えた。
「よーし! それじゃあ従魔具を……」
「……ど、どうしたの?」
「…………私、どこに行けばいいんでしょうか?」
コテンと首を傾げた楓を見て、ティアナがガクッと肩を落とす。
そして、苦笑しながら教えてくれる。
「商業ギルドに行けば、何かしら仕事を紹介してくれるかもね」
「商業ギルドですね!」
「一緒に行きましょうか?」
「大丈夫! ……じゃないかもしれません」
最初こそ大丈夫と力強くいってみた楓だが、すぐに周囲を見渡し、どこに行けばいいのかさっぱりだと気がつく。
「でしょうね。いいよ、冒険者ギルドも近くにあるし、一緒に行ってあげる」
「お世話になります~」
「いいのよ。美味しいお料理のお礼ってことでね」
最後はウインクしながらそう言ってくれたので、楓はティアナの言葉に甘えることにした。
(レイス様やミリアさんもそうだけど、私はみんなに助けられてるな。私は私にできることで、頑張らないと!)
気合いを入れ直した楓は、そう思いながらティアナと共に歩き出す。
バルフェムは本当に、従魔が当たり前のように歩いている。
中には洋服のようなものを身に着けている従魔もいるが、ただ着せているといった感じで、従魔に合わせたものになっていないように見える。
(あれが従魔具なのかな? もしそうなんだったら、私はあんなオシャレでもなんでもないような従魔具は作りたくないな)
そんなことを考えていると、あっという間に商業ギルドに到着した。
「ここが、商業ギルドなんですね!」
「そうね。そして、その隣が冒険者ギルドよ」
「お隣さんだったんですね!」
ティアナに大きな迷惑を掛けたわけじゃないと分かり、楓は内心でホッとする。
「案内までしてくださって、ありがとうございました!」
「大丈夫よ。そうそう、これにサインしてくれるかしら? これがないと、私の依頼完了にならないからさ」
そう口にしながら手渡された書類に、楓はサインを記入していく。
(あれ? そういえば、私ってなんでこの世界の文字を書けるんだろう?)
書き終わってからそんな疑問が浮かんできたが、ティアナはサインを確認して大きく頷く。
「ありがとう。それじゃあ、また機会があったらよろしくね!」
「はい! ありがとうございました!」
笑みを浮かべながら冒険者ギルドの方へ歩いていくティアナに、楓は頭を下げ、そして手を振り見送った。
「……よし! ここからはまた一人だ! 頑張れ、私!」
ティアナの姿が冒険者ギルドに消えていったのを確認した楓は気合いを入れ直し、一人で商業ギルドの中に入っていく。
「……人の数、すごっ!?」
商業ギルドは二階建て。
一階の広さは大人が一〇〇人は余裕で入れるくらいには広い。
それくらい広いフロアに、人がひしめきあっている。
窓口もあるにはあるが、あまりの人の多さにどこに何があるのか分からない。
どうしたものかと、楓は入り口横の壁際で考えていた。
「……とりあえず、人が少なくなるのを待つしかないかぁ」
一人でボーッとするのには慣れている。
職場でも、プライベートでも、一人の時間を作ることには長けていた。
人間観察を楽しみながら時間を潰していると、徐々に人の波がはけていく。
天井からぶら下がっていた案内板も見えるようになり、相談窓口を発見した楓はそちらへ移動する。
「いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」
楓が窓口の前にやってくると、すぐに受付嬢が声を掛けてくれた。
「仕事を探しているんです」
「お仕事の斡旋ですね! ちなみに、スキルを伺ってもよろしいでしょうか?」
スキルの確認となり、楓は「きたぞ!」と気合いを入れる。
なんせ〈従魔具職人〉はこの世界だと外れスキルだ。
相手にどのような反応をされても、毅然とした態度を取れるようにしなければならない。
「私のスキルは、〈従魔具職人〉です」
「〈従魔具職人〉ですね。スキルレベルもお願いいたします」
「……え? ス、スキルレベル、ですか?」
ここにきて、完全に予想外な返しをされてしまい、困惑する楓。
「はい、スキルレベルです」
「……その、分からない場合はどうしたら?」
「……スキルレベルが分からないんですか?」
王城で使った魔導スクロールには、スキル〈従魔具職人〉の確認はできたが、記載されていたのはそれだけだ。
スキルレベルなど、どこにも記載されていなかったと記憶している。
「……すみません」
「うーん……かしこまりました。少々お待ちいただけますか?」
そう口にした受付嬢は、一度バックヤードに移動してしまう。
(……もしかして、やっちゃった? 私、何か見落としてた?)
窓口の前で待ちながら、楓は冷や汗をかきながら受付嬢が戻ってくるのを待っていた。




