表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/165

第87話:楓の真実

 ◆◇◆◇


「――……! カエデさん!」

「……セリシャ、様?」


 目を覚ました楓が見たものは、心配そうにこちらを見下ろしていたセリシャの表情だった。

 自分が従魔具作成中に倒れてしまったのだとすぐに理解した楓は、まず両手が動くかを確認する。


(……うん、動く。体もそこまできつくはなさそう)


 そう思った楓は、普段通りに上半身を起こす。


「大丈夫なの、カエデさん?」

「はい。ご心配をお掛けしました」


 楓の背中に優しく手を回したセリシャの問い掛けに、楓は苦笑しながら答えた。


(……今回の夢は、優しい夢だったな)


 祖母との出会いが忘れられず、楓はどこか夢見心地のまま、そんなことを考えてしまう。

 その表情が心配で、セリシャは再び問い掛ける。


「……本当に大丈夫なの? お医者様のところに行きましょうか?」

「え? あ、大丈夫ですよ! ほら、こんなに元気なんですから!」


 自分が倒れていたこと、そしてセリシャが心配してくれていたことを思い出した楓は、慌てて力こぶを作りながら笑顔でそう口にした。


「……あ! それよりも、従魔具は? まさか、失敗しちゃいました!?」


 そして、従魔具作成中に倒れたことまで思い出すと、従魔具がどうなったのか、そのことが心配になり声を上げた。


「……はぁ。カエデさんは、どこまでいってもカエデさんなのね」

「え? どういうことですか?」

「なんでもないわ。……聞きたいことは色々あるけれど、まずは従魔具を確認なさい」


 苦笑しながらそう答えたセリシャは、ソファに寝かされていた楓に手を差し出す。

 その手を楓が握るとグイッと引っ張られ、そのまま立ち上がる。

 従魔具はセリシャの事務机に置かれており、楓はそちらへゆっくりと歩き出す。


「……すごい。完成していたんですね!」


 楓の視界に映った完成したレクシアの従魔具を見て、彼女は歓喜の声を上げた。


「でも、この形でよかった? レクシアの動きの妨げにならないかしら?」


 するとセリシャは完成した従魔具を見ながら、そう苦言を呈した。


「大丈夫です! ちょっとした仕掛けがあるので!」

「あら、自信満々なのね。カエデさんがそう言うのなら、大丈夫なんでしょうね」


 従魔具職人として楓を信頼しているセリシャは、力強い言葉に納得して頷いた。

 ここまでは笑みを浮かべながらの会話だったが、直後にはセリシャの顔が真剣なものに変わる。


「……ねえ、カエデさん?」

「なんですか?」

「あなた、何者なの?」


 セリシャの問い掛けに、楓の心臓が早鐘を打ち始める。

 質問の意図が何を差しているのか、それが不安でたまらないのだ。


「……えっと、私は私ですよ? 楓です」

「そうね。だけれど、スキルレベルがEXの、規格外の人間でもあるわよね?」

「それは……はい」


 不安そうに頷いた楓を見て、セリシャは苦笑を浮かべる。


「カエデさん、不安にならないでほしいわ」

「……」

「別にあなたのことを責めているわけではないの。ただ、スキル以外にも規格外なことが多すぎて、普通の人間ではないのかも、そう思ってしまったから、気になってしまったのよ」

「……はい」


 セリシャの言葉を受けて、それはそうだと楓も思う。

 むしろ、今日まで何も聞かずにいてくれたことが、奇跡でもあり、不安になるのではなく、感謝するべきだとも思うのだ。

 ただ、真実を伝えたところでセリシャがどう思うのか、今までのように接してくれるのか、それが心配でならなかった。


(……私って、自分勝手だなぁ)


 そして、自分のことしか考えていないと、自覚してしまう。

 不安なのはセリシャも同じだ。なんせ誰とも知れない人物を近くに置いてくれているのだから。

 それが規格外の人間であれば、なおさらだろう。

 何か秘密があるのではないか、実は犯罪者なのではないか、自分であればそう思ってしまうと、楓は内心で大きく息を吐く。

 そこまで考えが至ると、自分のことばかりではなく、セリシャのことも考えて、今ここで真実を伝えるべきではないかと考え始めた。


「……分かりました、お伝えします」


 このタイミングを逃せば、次の機会はいつになるのか分からない。

 であれば、今ここで伝えるべきだと意を決した。


「まずは、この紙を見ていただけますか?」


 最初に楓が取り出したのは、バルフェムに入る時に門番へ見せた、レイスが渡してくれた一枚の紙だった。

 それを見たセリシャは目を見開き、紙と楓の顔の間で視線を何度も往復させる。


「……はぁ。なるほどね。カエデさんは、王家に関係のある人物だということね?」

「あー、いや。関係はないんですけど、連れてこられたと言いますか……」

「王家に、連れてこられた?」


 そう口にしたセリシャは、頭の中で今までのことを思い返し、整理していく。

 そして、ある可能性に行きついたのか、無言のまま目を見開き、その視線を楓に向ける。そして――


「……異世界からの、勇者召喚?」

「私は巻き込まれた身なんですけど、そうみたいです」


 セリシャの言葉を肯定した楓は、苦笑いしながら頭を掻いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ