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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第85話:レクシアの従魔具作成①

(ティアナさんの隣に立って戦えるようになりたいか。でも、レクシアさんも十分強いんだよね?)


 魔法が使える魔獣自体が少ないと、以前に聞いたことがあった楓。

 そのことを知らず、自らの従魔であるピースが弱いと勘違いして迷惑を掛けたことがあったのを思い出す。


「……ねえ、ピース。レクシアさんって、強いんだよね?」

「キギャ! キュキュギケ!(強いよ! おいらの次にね!)」

「うふふ。そうなのね」


 自信満々に、胸を張りながら答えたピースを見て、楓は笑みを浮かべる。

 そして、再び思考は従魔具へ向く。


(火属性の材料たち。頭の中には作り方が浮かんではいるけど……これが本当に最善の形なのかな?)


 現時点で浮かんでいる従魔具は、四肢にはめる足輪である。

 その足輪に火属性を強化する能力が付与されており、レクシアの火魔法を強化することが可能となっている。

 その強化幅は材料の質もあり、現状の三倍から四倍と目されていた。


(材料を最大限に活かすなら、きっとこの作り方になるんだろうな。でも、レクシアさんが望んでいるのは、単に強くなるだけじゃないんだ)


 あくまでもレクシアの望みは、ティアナの隣に立って戦えるような従魔具、これなのだ。

 火魔法の威力が上がれば、確かに強く離れるだろう。

 しかし、火魔法が強すぎたあまり、ティアナの動きを邪魔してしまわないか、それが気になっていた。

 それをレクシアが望むだろうかと考えると、絶対に違うと楓は確信を持っていた。


「……もっと、別の形の従魔具を」


 思考が思わず口に出た楓。

 直後、楓の頭の中に浮かんでいた作り方に変化が起きる。


「…………え? これ、別の作り方が、提案されたの?」


 楓のスキル〈従魔具職人EX〉が、全く別の従魔具の作り方を提案してきたのだ。


「……うん。これなら、レクシアさんの望んだとおりの従魔具が作れるかも!」


 火魔法の威力を上げるだけではなく、ティアナの隣に立って戦えるような従魔具。

 その形が見えた楓は、力強い声を上げた。


「どうやら、最適な形が見えたようね」


 楓の弾んだ声を聞いたセリシャがそう口にする。

 すると楓は力強く頷いた。


「作ります!」


 最初に楓が手にしたのは、赤樹発火木と火竜の鱗だ。

 二つを融合させたあと、布のように薄く引き伸ばしていく。

 その長さは三メートル近くあり、もしも足輪にするのであれば、ここまでの長さは必要ない。

 楓の頭の中には、間違いなく別の形のものが浮かんでいるのだろう。


(レクシアさんのために作る従魔具。希望を取り入れるのは当然だけど、その中でビジュアルも大事よね。だって、レクシアさんは女性だもの!)


 単なる足輪でも作れるだろう。

 しかし、それでもなお従魔のオシャレにも手を抜きたくはなかった。


(戦うのに邪魔をしてはダメ。その縛りの中でレクシアさんの希望を取り入れて、なおかつオシャレに決めなきゃ!)


 同じ女性として、楓は使命感のようなものに燃えていた。


「よし、できた! 次はこれね!」


 続いて手に取ったのは、深火口爆岩と火竜の爪、そして牙である。

 どちらも巨大で、そのまま使うことは難しい。当然だが、加工は必須だ。

 しかしここでセリシャから声が掛かる。


「深火口爆岩には注意が必要よ。扱い方を間違えると、爆発するからね」

「ば、爆発!?」


 予想外の注意に、楓は思わず声を上げた。

 セリシャの言葉通り、深火口爆岩は魔力を注ぎ過ぎると発火する岩石で、その規模は楓がいる部屋であれば壁から天井から、丸焦げにするくらいの威力を持っている。

 当然、その中心に人間がいればひとたまりもない。


「……ど、どこか別のところで作業をした方がいいですか?」

「何を言っているの。ここでなら、万が一が起きても私が守ってあげられるわ。だから、自信を持って作業を進めなさい」


 セリシャの注意は、守れるが注意してね、というものだった。

 その注意は楓としてはありがたく、一度深呼吸をしてから、セリシャに小さく会釈をし、改めて気合いを入れ直す。


「すー……はー…………うん。よし!」


 深火口爆岩、火竜の爪、牙。この三つを融合させることで、何が出来上がるのか。

 それを知っているのは楓だけであり、セリシャも期待を膨らませている。

 セリシャが楓を守ると口にしたのも、出来上がったものを誰よりも早く見たいから、という打算も含まれていた。


(慎重に……慎重に……魔力量を間違えちゃダメだよ、犬山楓)


 自身に言い聞かせるように、心の中で名前を呼ぶ。

 深火口爆岩への魔力を慎重に注ぎながら、同時進行で火竜の爪と牙にも注ぎ込む。

 これは一つずつやってしまうと、最初に注いだ魔力が時間経過と共に抜けてしまい、無駄に終わってしまうからだ。

 一つに注ぐだけでも大量の魔力を消費する。

 それを三つ。しかも同時進行のため精神的疲労も溜まってきてしまう。


(全く。今日までに何度もカエデさんの従魔具作りを目にしてきたけど、何度見ても驚かされてしまうわ)


 魔力量、魔力操作、そして複数属性。

 これらを全て兼ね備えているのは、単純に〈従魔具職人EX〉だからなのか。それとも楓が規格外の存在なのか。

 異世界から召喚されたのだとは知らないセリシャからすれば、いったいどこから楓のような存在が生まれたのか、不思議でならないことだろう。


(だけれど……心配だわ)


 セリシャがそう思っているのには、理由がある。

 これだけの規模の作業をこなしているにもかかわらず、従魔具作成でいまだ手をつけていない、最も魔力を消費する材料が残されているからだ。


(火竜の魔石……カエデさんはきっと、これも使うのでしょう? 大丈夫、よね?)


 不安を顔に出さないようにしているセリシャだが、楓を見つめる瞳の奥には、心配の色が濃く表れていたのだった。

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