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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第71話:ヴィオンの依頼

「先ほどの男性冒険者はヴィオン。ティアナさんと同じ、Sランク冒険者よ」

「エ、Sランク冒険者だったんですか!?」

「そうよー」


 セリシャの部屋に入って早々、楓は驚きの事実を聞かされることになった。


「ちょっと、ティアナさん! そうよー、って簡単に言わないでくださいよ! すごい人なんですよね、Sランク冒険者って!」

「そうよー」

「だから!」

「落ち着きなさい、カエデさん」


 ティアナの反応に声を荒らげ始めた楓だったが、そこをセリシャが宥める。


「彼は、自身の従魔にオーダーメイドの従魔具を作ってほしいとお願いしに来たのよ」

「だから、従魔って言っていたんですね」

「まあ、あいつはカエデが従魔具職人だって気づいていなかったけどねー」


 ヴィオンがセリシャを訪ねてきた理由は分かった。

 しかし楓には、一つだけ分からないことがある。


「ねえ、ティアナさん。どうしてヴィオンさんに対して、そんなに冷たい態度なんですか?」

「えー? そうかなー?」

「ティアナさんとヴィオンは、幼馴染みなのよ」

「ちょっと、セリシャ様!?」


 適当に答えるつもりだったティアナだが、セリシャからヴィオンとの関係を暴露され、大慌てで声を上げた。


「幼馴染み! ……え、それって、面白そう!」

「面白くなんてないわよ! あいつ、私よりも先にSランクに上がりやがって、ムカつくー!」

「うふふ。可愛い嫉妬でしょ?」

「嫉妬じゃないですー!」


 ティアナの態度を見るに、彼女がヴィオンに嫉妬しているのは本当なのだと楓は思い、思わず苦笑してしまう。

 そして、ティアナの幼馴染みであれば、やはり悪い人ではないのだと楓は思うことにした。


「セリシャ様。ヴィオンさんからの依頼、どうしたんですか?」

「いったん保留にしたわ。カエデさんにも相談しないといけないからね」

「カエデ、受けなくてもいいわよ? あいつがSランクになれたのは、従魔のおかげなんだもの!」

「それも嫉妬なのよね、ティアナさん?」

「だから違うってば! セリシャ様!」


 普段はカッコいいティアナが、ここでは可愛らしい姿を見せており、楓は思わず微笑んでしまう。


「な、なんでカエデは笑っているのよ!」

「え? いやー、なんだか青春だなー、みたいな?」

「なんだかよく分かんないけど、そんなんじゃないからね!」


 可愛らしいティアナを目に焼き付けた楓は、一度咳ばらいを挟み、本題に入る。


「コホン! ……セリシャ様。ヴィオンさんからの依頼、受けさせてくれませんか?」

「えぇー? 受けちゃうのー?」

「いいの、カエデさん?」


 ティアナは面倒くさそうにしており、セリシャは楓を心配しながら確認を取る。


「大丈夫です。それに、このタイミングってことは……ヴィオンさん、王家からの依頼を受けるんじゃないかって思ったんです」


 ティアナにも指名依頼が届いていた王家からの依頼。

 おそらくだが、ヴィオンにも依頼が届いており、それを受けたのではないかと楓は考えた。


「ティアナさんは聞いていないんですか?」

「……受けるんだって」

「やっぱり。だから、少しでも依頼の成功率を上げるために、従魔具を求めているんじゃないんですか?」

「……うん」

「それなら、やっぱり受けるべきですよね? ヴィオンさんのためにも」

「……………………うん」


 内心では楓に依頼を受けてほしいと、ティアナも思っていた。

 しかし、楓が大変な思いをするのではないかと考えると、簡単に受けてほしいとは言えなかった。


「……受けてくれるの?」

「もちろんです! うふふ。やっぱりティアナさん、可愛いですね」

「からかわないでよ! 顔見知りに死なれたら、夢見が悪いでしょう! だからよ!」

「顔見知りじゃなくて、幼馴染みだからでしょう?」

「セーリーシャーさーまー?」


 ティアナとセリシャは最初から最後まで、こんな感じでからかいあっていた。

 とはいえ、ヴィオンの依頼を受けるのであれば、楓はやらなければならないことがある。


「それじゃあ、ヴィオンさんの依頼を受けるのは確定として、従魔と話をしないといけませんよね? どうしましょうか?」

「今までは私や商業ギルドの職員、それに領主様だったからね。信頼できる人だからカエデさんの正体を知られても問題なかったけれど、今回は……」


 そこまで話をした楓とセリシャは、その視線をティアナへ向ける。

 するとティアナは、頬を軽く掻きながら口を開く。


「……ヴィオンなら、信頼できると思うわ」

「よかった! ティアナさんがそう言ってくれたなら、問題ありませんね!」

「そうね。それじゃあ、ティアナさん。ヴィオンさんを呼んできてちょうだい」

「な、なんで私が呼んでこなきゃいけないのよ!」


 セリシャにヴィオンを呼んでくるよう言われ、ティアナは大慌てで声を上げた。


「ヴィオンに謝らなければならないのではなくって?」

「確かに! 結構言っちゃってましたよね、ティアナさん?」

「カエデまで! ……~~っ! もう、分かったわよ! 呼んで来たらいいんでしょ!」


 自分でも酷い態度を取ってしまったと思っていたのか、ティアナは文句を言いながらも立ち上がり、ヴィオンを呼ぶため部屋を出て行った。

 そんなティアナを見送った楓とセリシャは、顔を見合わせると小さく笑い合うのだった。

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