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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第60話:先輩従魔具職人

 木造の、落ち着く雰囲気が漂う店構え。

 通りから僅かに外れた場所に位置しており、行列ができているというわけでもない。

 それでもセリシャが商業ギルドと直接契約を結んでいるということは、それだけ力があるということだろう。


(そんなすごい人を紹介してもらえるんだから、しっかりと学ばないとね!)


 気合いを入れ直した楓を見たセリシャは、小さく微笑みながら前を歩き、扉に手を掛ける。


「いいかしら?」

「はい!」


 元気よく返事をした楓に頷き、セリシャは従魔具店の扉を開いた。


 ――カランコロンカラン。


 扉の内側に取り付けられていた呼び鈴が鳴る。


「――はいよー」


 するとカウンターの奥の方から野太い男性の声が聞こえてきた。

 楓がドキドキしながら待っていると、長身でガタイの良い、茶髪の男性が姿を現した。


「なんだ? セリシャ様じゃないか。どうしたんだ?」


 男性はセリシャを見るとすぐに怪訝そうな声で声を掛けてきた。


「おはよう、オルダナ。今日は、新しく商業ギルドと直接契約を結んでもらった、新人の従魔具職人を紹介しようと思ってね」

「新人の従魔具職人だぁ?」


 髭をたくわえ、強面のオルダナがその視線をセリシャから、その背後に立っていた楓へ向ける。


「は、初めまして! 私、新人従魔具職人の楓と申します! セリシャ様のご紹介で、本日はオルダナ様の従魔具店にお邪魔させていただきました!」


 楓が緊張しながらも、はっきりとした口調で自己紹介を口にした。


「……なんで連れてきたんだ?」

「カエデさんはスキルに溺れない心を持っているわ。だから、彼女に従魔具職人としての心構えを教えてあげてほしいのよ」

「俺じゃなくてもいいだろう?」

「オルダナでないとダメよ」


 何やら面倒くさそうにしているオルダナを見て楓はなんだか申し訳ない気持ちになってしまう。

 だが、楓としてもここで引いていては自分の成長はないと思っていた。


「あ、あの! 私は、オルダナ様に教えてほしいです!」

「なんで俺に教えてもらいたいんだ? 従魔具職人なら、他にも大勢いるだろうが?」

「セリシャ様の紹介だからです!」


 オルダナが視線を落とし、頭を掻きながらそう口にしたが、楓は真っ直ぐに彼を見つめながら想いを伝えていく。


「私はセリシャ様がいなければ、従魔具職人として活動することはできませんでした。その中で色々と教えてもらいながら、少しずつ従魔具を作れるようになってきました。でも、作っていく中で、作るだけじゃダメなんだって分かったんです」

「……」


 楓が想いを口にしていく中で、オルダナは無言のまま彼女を見つめ、その言葉に耳を傾けている。


「そんなセリシャ様が、オルダナ様なら私に足りないものを教えてくれると言ってくれました。それなら、私はセリシャ様が信頼を置いているオルダナ様から、私に足りないものを教えてほしいんです!」

「足りないものって言われてもなぁ。スキルがすごければ、それでいいだろう? 違うか?」


 するとオルダナから、スキルに頼れという言葉が飛び出した。

 まさか、という思いの楓だったが、そこはグッと言葉を呑み込み、さらに想いを口にしていく。


「作るだけなら、それでいいんだと思います。だけど、そのあとは違います。従魔具を渡した相手へのアフターフォローや、メンテナンスでも注意するべき点があるんじゃないかって、思ったんです」

「だが、それこそスキルでどうとでもなるだろう?」

「従魔具に対してなら。ですが、私は従魔たちの主とも真摯に向き合いたいんです」


 突き放すようなオルダナに対して、一切引く気のない楓。

 オルダナも落としていた視線を、気づけば楓に向けて睨み合うかのような視線をぶつけ合っていた。だが――


「…………くく。がはははは!」

「……へ?」


 突如として豪快に笑いだしたオルダナに、楓は困惑の声を漏らす。


「さすがだ! いやー、セリシャ様が連れてきた奴だからどんなもんかと思ったが、相当肝の据わった奴じゃないか!」

「そうでしょう? カエデさんなら、スキルに溺れるようなことはないって信じていたもの」

「……あ、あのー? 私だけ状況が理解できていないみたいなんですが、どうなっているんでしょうかー?」


 何故か楽しそうなオルダナとセリシャに対して、楓は恐る恐ると言った感じで手を上げてから口を開いた。


「すまんな、嬢ちゃん! すこーしばかり、試させてもらった!」

「……へ? た、試す?」

「スキルに溺れるような奴なら門前払いだし、教えを乞うために表面だけを繕う奴もたまにいるんだ。だから、ちょっとだけカマをかけさせてもらった!」

「……そ、そうなんですか?」


 強面のオルダナに睨まれた時は心臓が早鐘を打っていたが、今となっては彼の表情は子供のような笑みを浮かべていた。


「合格だ、嬢ちゃん! 俺に教えられることがあれば、なんでも聞いてくれ!」

「ほ、本当ですか!」

「おうよ! だが、スキルに溺れちまわないよう、そこだけは気をつけるんだぜ?」

「はい! ありがとうございます、オルダナ様!」


 楓が嬉しそうにそう口にすると、オルダナは急に渋面を浮かべる。


「……ど、どうしたんですか?」

「その、オルダナ様ってのは止めろ。なんだか、むず痒い」

「えっと、それなら……師匠?」

「師匠はやり過ぎだろう!?」

「うーん……だったら、オルダナさん?」

「……まあ、そんなもんか」


 こうして楓は、頼もしい従魔具職人の先輩であるオルダナに教えを乞うことになった。

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