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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第44話:従魔探しとまさかの……?

 フェザリカの森で最初に行ったことは、従魔具の材料集めだ。

 どうしてかというと材料集めが、楓が従魔探しに協力するための条件だからである。


「先に従魔を探してもいいですよ?」


 楓はそう口にしたが、ティアナは首を横に振る。


「ううん、ダメよ。私がお願いして、セリシャ様から提示された条件なんだもの」

「でも……」

「それに、従魔になってくれる魔獣なんて、そう簡単に見つかるとも思えないしね。時間を掛けて見つけられなくて、材料を集められませんでしたじゃあ、セリシャ様に合わせる顔がなくなっちゃうもの」


 そう口にしたティアナが笑顔を浮かべると、楓もこれ以上は何も言わないことにした。


「分かりました。それじゃあ、材料を集め終わったら、私なりの料理を作りますね!」

「やったー! ……って、私が食べる分じゃないんだよね」


 思わず歓喜の声を上げたティアナは、苦笑いを浮かべる。


「もちろん、ティアナさんの分も作りますよ」

「いいの!」

「はい。体を動かしたあとは、お腹が空いちゃいますもんね」


 楓の言葉にティアナは再び歓喜の声を上げ、従魔具の材料集めに気合いを入れる。


「よーし! それじゃあ今日も働くわよー!」

「あ、でもほどほどに――」


 ティアナは今回も風のように走って行き、楓は言葉を最後まで言い切ることができなかった。


「…………まあ、いっか」

「キュキュン?(どうしたの?)」


 困惑気味の声を漏らした楓を見て、ピースが彼女の顔を覗き込みながら鳴いた。


「なんでもないよ」

「キキ? キキャン、キュキュキャッキャキュ!(そう? それよりも、おいらにもご飯を作ってね!)」

「うふふ。分かってるよ」


 ピースの言葉に楓は微笑みながら答えた。

 とはいえ、今回は材料集めが終わってから料理を作る、という約束になっている。

 そのため、食材や調理器具はティアナの魔法鞄の中にあり、楓は手持ち無沙汰になってしまう。


「どうしようかなぁ……」


 そう呟きながら、楓は視線をピースに向ける。


「ねえ、ピース?」

「キュキュン?(どうしたの?)」

「ピースって、フェザリカの森に詳しい?」

「ギャギュン! キキッキュキキキャイ!(もちろん! おいらの縄張りだからね!)」


 まるでフェザリカの森の全てが縄張りかのような言い回しに、楓は苦笑しながら言葉を続ける。


「ティアナさんが戻ってくるまでの間、少し散歩をしない?」


 異世界の見知らぬ森だ。本当なら一人で散歩などできるはずもない。

 しかし楓にはピースがいる。

 フェザリカの森を縄張りと胸を張って言うくらいなのだから、案内を任せても問題ないだろうと楓は考えた。


「キュキュ!(いいよ!)」

「本当! ありがとう、ピース!」


 ピースも楓に頼られたからか、嬉しそうに返事をした。

 それからピースは楓の肩から下りると、地面を前方に駆けていく。


「キキキュキュキャキャッキキ!」

「あー。離れちゃったら、何を言っているのか分からなくなるんだよね」

「ギギー」


 明らかに落ち込んだ感じで鳴いたピースを見て、楓は苦笑しながら近づいていく。

 そして、屈んでピースを抱き上げると、もう一度自らの肩に乗せた。


「私の肩から、どこに進めばいいかを教えてくれるかな?」

「キュン!(うん!)」


 お互いに笑い合いながら、ピースの案内で楓はフェザリカの森を進んで行く。

 楓が森の散歩を提案したのには、理由がある。

 それは、いつまでも従魔具の材料集めをティアナにお願いするわけにはいかないと思っていた。

 いずれは自分で材料集めをしなければならない思っており、それを実践するにはこうして森歩きに慣れておく必要があると考えたのだ。


「キュキャキャン!(あっちだよ!)」

「あっちには何があるの?」

「キキキュキュキキャキャ!(きれいな湖があるんだ!)」

「そうなんだ! それは楽しみだなー!」


 ピースとの会話も楽しいもので、楓は話に夢中になりながら足を進めていった。

 そして、進んだ先にはピースが言ったように、きれいな湖が広がっていた。


「うわー! すごいよ、ピース! ここ、ものすごくきれいだね!」

「キュキキー? キュキュー(そうでしょー? えへへー)」


 楽しそうな楓を見て、ピースは嬉しそうに鳴く。

 それから楓は湖に足先を入れて、心地よさを感じながら息を吐く。


「はぁぁ~……気持ちいいなぁぁ~」


 快晴の空を見上げながら、楓はそう声を漏らした。

 その肩にはピースが乗っており、彼も久しぶりの縄張りだからか、とてもリラックスした感じで伸びをしている。


 ――ガサガサ。


「え?」

「ギッ!(あっ!)」


 だからだろう。ピースは警戒を怠ってしまった。

 楓たちが通ってきた道の方の茂みが大きく揺れ、ピースが肩から飛び降りて威嚇の声を上げる。


「ギギギギギギッ!」


 楓の心臓が早鐘を打つ。

 もしもピースよりも大きく、強い魔獣が現れたなら、彼を危険に晒すことになってしまう。

 自分の判断で散歩に出た。それが仇になってしまったことに、楓は心底から後悔する。


「に、逃げよう、ピース!」

「ギギャ!? ギギギャギャン!!」

「早く、こっち!」


 ピースに触れていないため、彼が何を伝えようとしているのかが分からない。

 だからこそ楓は、自らの判断で逃げることを選択した。

 楓が走り出した先は、大きく揺れた茂みの逆側へ向かうこと。

 それはつまり、ティアナと別れた場所からさらに離れるということだ。


(どうしよう! 私のせいで……私のせいで、ピースが危険な目に!)


 気が動転していた楓はそのことに気づくことなく、ピースが肩に飛び乗ってからも彼の呼び掛けに気づけず、必死に逃げることしかできなかった。

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