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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第164話:驚きの再会

 従魔大運動会を終えた翌日から、楓の従魔具店は大忙しとなった。

 これは従魔大運動会が行われる数日前の忙しさをも凌駕しており、楓たちは休憩を取る暇もなく店内を駆けまわっていた。


「オルダナさん! ほんっっっっとうに、ありがとうございました!!」


 オルダナに対して楓がお礼を口にした理由は、従魔大運動会の当日にあった。

 それは、オルダナが従魔大運動会を観戦しに行くことはせず、従魔具店を閉めていながら店に残り、既製品作りに勤しんでくれていたからだ。


「いいってことよ! ……まあ、こうなる未来が見えていたからっていう理由もあるしな!」

「本当に感謝しかございませええええん! 私は全く見えていませんでしたああああっ!」


 瞳に涙を浮かべながら、楓は必死になって既製品作りに取り組んでいる。

 だが、客の中にはオーダーメイドを希望する者もいた。

 しかし、楓がオーダーメイドを受ける条件を伝えると、全ての客が一度引き下がっていった。


(材料は持ち込みでって伝えると、みんないったんは考えます、って言ってくれるんだよね)


 楓は自分で材料の調達ができない。

 そして、調達を依頼するにしても珍しい材料を依頼することはなく、バルフェムの近くで確保できるものしか依頼しなかった。

 それは、楓のスキル〈従魔具職人EX〉が際限なく従魔具の提案をしてくるため、制限を設けなければ最高級の材料を要求してくるからだ。


(ティアナさんやヴィオンさんに依頼するにしても、そんな貴重な材料を依頼したら、どれだけ時間が掛かるか分からないもんね。それに、危険かもしれないし……)


 楓としてもオーダーメイドに制限を掛けることはしたくなかった。

 しかし、材料調達を依頼する場面もそうだが、最高級の材料で作った従魔具となれば、相応の金額が必要になってくる。

 場合によっては、予算をはるかにオーバーしてしまう従魔具が完成してしまうかもしれない。


(依頼主が用意できる材料で、最高の従魔具を作る。……これが、私にとっては最善の方法なんだよね)


 自分にも、周りにも、そして依頼主にも負担が一番少ない方法だと、楓は自分に言い聞かせながら既製品作りを行っていた。


 そして、本日の閉店後。


「……お、終わった~」

「……お、お疲れ様でした~」


 リディとミリーが背中合わせとなり、そのまま床に座り込んでしまった。


「ほんっっとうにごめんね、二人とも! 休憩、入れなかったよね?」


 座り込んだままの二人に対して、楓は両手を重ね合わせると、勢いよく頭を下げた。


「まあ、昨日の今日だしな! 仕方ないって、姉ちゃん!」

「私たちもこうなるだろうって分かっていましたし、大丈夫ですよ!」

「うぅぅ~! みんなが優し過ぎて、涙が出てくるよ~!」


 子供であるリディとミリーにまで気を遣われてしまい、楓は本当に泣いてしまった。


「お疲れ様だな、みんな」


 するとここで、営業中に楓たちの護衛をするため訪れていたヴィオンが声をかけた。


「ヴィオンさんもわざわざ足を運んでくれて、ありがとうございました」

「構わないさ。俺が好きでやっていることだからな」


 肩を竦めながら、ヴィオンはそう口にした。


「そうだ! あとで相談に乗ってもらいたいことがあるんです!」

「相談?」

「おいおい、嬢ちゃん。ヴィオンに相談もいいんだが、既製品の在庫に余裕があるわけじゃないんだ。俺とカエデは、まだまだ仕事が残ってるぞ?」


 呆れたようにオルダナがそう口にすると、楓はハッとした表情で振り返る。


「そうでした!」

「本当に大変なんだな。俺への相談はいつでも構わない。だから今は、カエデさんの仕事をして――」


 ――コンコンコン。


 ヴィオンがそう話しているところで、従魔具店の扉がノックされた。

 だが、表には既に『閉店』の札を下げている。


「……どなたでしょうか?」

「俺が開けよう。カエデさんたちは少しだけ下がっていてくれ」


 ヴィオンの言葉に、楓たちは無言でうなずきながらカウンターの方へ下がっていく。

 楓たちが下がったのを確認したヴィオンは、扉の前が見える窓の方へ移動し、外を見た。


「……ん? あの方は、もしや?」


 そう呟いたあと、ヴィオンはすぐに扉を開く。


「……やはり、あなたでしたか」

「急に申し訳ありません、ヴィオンさん」


 現れた男性は目深にフードを被っており、その表情を見ることはできない。

 しかし、聞き覚えのある声に楓は思わず口を開く。


「え? もしかして、レイス様!?」


 楓がそう声を上げると、男性はフードを外す。

 そこには紛れもなく、レイスが立っていた。

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